ドロップシッピング詐欺の実態に迫る。
2012/03/05 法務相談一般, 民法・商法, その他

ドロップシッピング詐欺の実態に迫る。
警視庁生活経済課は3日、東京都台東区のインターネット関連会社「サイト」の元社長、吉田実容疑者(41)をドロップシッピングにまつわる詐欺容疑で逮捕した。
同社は2008年6月からの2年間で約4億1000万円を集めたとみられ、被害者は430人を超えるという。警視庁は2010年5月より、同社を特定商取引法違反(不実の告知)容疑で家宅捜索していた。ドロップシッピング業者の逮捕は全国でも初めてのことである。
ドロップシッピング詐欺の手口
① 「簡単に収入が入る」という誘い文句で、ネット広告やパンフレットで契約者を募集。
② サイトの開設・商品の仕入れ・発送・その他広告宣伝等の販売サポートなどは業者が担当するので、契約者は、販売商品の決定(業者が用意した商品の中から)・サイトを経由して来る問合せや注文への返信・商品が売れた場合の商品卸代金の業者への支払いを担当すればよいなどと説明。在庫を持たずに出来る簡単な副業であるとのイメージを植え付ける。
③ 販売価格は契約者が自分で決められる上に、「卸値との差額がそのまま利益になる」と説明。その流れで、「2~3カ月で元は取れる」などと利益を保証するかのような勧誘を行う。
④ 契約者にホームページ制作などの初期費用85万~300万円を投資させ、同社が調達した商品をネット上で販売させる。
⑤ 実際には、卸値が市場価格よりも高いケースが続出。さらに、業者が代行するとしていた広告宣伝といった販売サポートも行われず。
⑥ 結果として、1件の売買契約も成立しない契約者が続出する中で、業者は契約者が支払った初期費用で確実に儲けを出す。
ドロップシッピングのトラブル事例
(1) 利益を保証するかのような勧誘。
(2) ウェブサイト作成に高額な費用を要求されたが、結局、利益は全く出ず。その後、解約を申し出るものの、サイト作成費用の返還には応じてもらえず。
(3) 広告・販売できると期待していた商品が実際には広告・販売出来ないケースも頻発。
(4) 完成したウェブサイトが値段の割に簡素。サイトの加工・修正が出来ないため、価格の変更が出来ない。サイトのアクセス数もわからない。
(5) メールマガジンの送付や検索エンジン対策など、業者が本当に約束していたサポートを行っているか確認出来ず、事前に説明されたような広告・集客の効果が感じられない。
(6) 利益が上がらないと文句を言っても、自分でメールマガジンを発行したり、有料の広告を使うようアドバイスするだけで、具体的な対応はせず。
雑感
在庫を抱えない手軽さが受け、サラリーマンの副業・主婦のお小遣い稼ぎとして2005年ごろから広まったドロップシッピング。消費者庁への相談事例は、過去5年で6倍強に増加していると言われている。
しかし、本来、ドロップシッピングは、「商品の仕入れ・発送部分」と、「集客・折衝部分」とを役割分担した立派な販売方法の一つである。問題になるのは、各所にひそむリスク、行うべき作業量についての事前の説明が為されないケースとなる。
そもそも、ドロップシッピングは、広告をクリックする人や商品購入希望者を増やさなければ利益は得られない。本当に、ドロップシッピング業者が、誰かに問合せや注文への返信・商品だけを任せたいのなら、卸値との差額を利益分として渡すより、アルバイトを一人雇った方が遥かに安く済むことだろう。
検索エンジン対策を外注する代わりに契約者に検索エンジン対策をやってもらえること、サイト作成費用に若干の利益の上乗せが期待できること、ここら辺がドロップシッピング業者が契約者を募る主な理由となり、検索エンジン対策等で集客に成功した契約者だけが利益を得られる。
やはり、お金を生むには競争が不可欠なのである。ドロップシッピングを検討される方は、ビジネスの仕組みについて十分に業者より説明を受け、契約するかどうかを慎重に検討して欲しい。
関連コンテンツ
新着情報

- 解説動画
奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分

- ニュース
- コロナ社にカヤバ社、下請業社への金型無償保管で公取委が勧告/23年以降15件目2025.4.28
- NEW
- 金型保管をめぐる下請法違反の事例が相次いでいます。 暖房機器などの製造・販売を行う「株式...
- 弁護士
- 松田 康隆弁護士
- ロジットパートナーズ法律会計事務所
- 〒141-0031
東京都品川区西五反田1-26-2五反田サンハイツビル2階

- 解説動画
斎藤 誠(三井住友信託銀行株式会社 ガバナンスコンサルティング部 部長(法務管掌))
斉藤 航(株式会社ブイキューブ バーチャル株主総会プロダクトマーケティングマネージャー)
- 【オンライン】電子提供制度下の株主総会振返りとバーチャル株主総会の挑戦 ~インタラクティブなバーチャル株主総会とは~
- 終了
- 視聴時間1時間8分
- セミナー
森田 芳玄 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所 パートナー/東京弁護士会所属)
- 【オンライン】IPOを見据えた内部調査・第三者委員会活用のポイント
- NEW
- 2025/05/21
- 12:00~12:45

- まとめ
- 中国「データ越境移転促進・規範化規定」解説2024.4.23
- 中国の現行法令上, 香港・マカオ・台湾を除く中国本土内(「境内」)から境外への個人情報等の移転...

- 業務効率化
- 鈴与の契約書管理 公式資料ダウンロード

- 業務効率化
- クラウドリーガル公式資料ダウンロード
- 弁護士
- 片山 優弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階