ODM契約の注意点
2017/01/09   契約法務, 民法・商法, その他

事案の概要

日鉄住金物産はミャンマーでデニムパンツの加工業務を拡充するとの報道がありました。同社はこれまでのOEM供給からODMへの転換を図り、繊維事業においてODM比率を引き上げる計画とのことです。
そこで今回はOEM契約とODM契約を締結する際の注意点についてみていきたいと思います。

OEM

OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、納入先商標による製品の受託製造をいいます。つまりOEM契約とはメーカーが納入先である依頼主の注文により、依頼主のブランドの製品を製造すること、またはある企業がメーカーに対して自社ブランド製品の製造を委託する契約のことです。
開発・製造元と販売元が異なり、製品自体は販売元のブランドとなります。OEM生産の場合は、委託者が製品の詳細設計から製作や組み立て図面にいたるまで製品の仕様は依頼主が決め、完成した製品の管理権や所有権は依頼主に帰属します。依頼主はOEM生産受諾メーカーと製造委託契約(OEM契約)を締結し、仕様書、図面、原料、資材の供給および製造上の機密保持などに関して取り決めます。
OEM契約の注意点に関しましては法務NAVIまとめ OEM契約の注意点をご覧ください。

ODM

ODM(Original Design Manufacturing)とは、委託者のブランドで製品を設計・生産することをいいます。
ODM契約は、製造する製品の設計から製品開発までを受託者が受託する契約です。受託者のなかには、マーケティングまで行い、さらに物流や販売まで複数のブランドの製品を一貫して提供する企業もあります。これは、OEMの形態が進化した結果でもあります。さらに、受託者が製品を企画、設計、技術情報を依頼者であるメーカーへオファーする場合もあります。そのオファーに対してメーカーから修正要求があった場合も、基本的には受託者の製品企画と基本設計で製造まで全てを請け負うのが特徴です。
OEM契約からODM契約契約に転換するメリットや注意点などについてはこちらが参考になるかと思います。OEMの事業価値を高めるには?OEM/ODMの事業価値を高めるための中小製造業の戦略について(出典 株式会社 技術経営フロンティア)

ODM契約の注意点

ODM契約の主な注意点は下記のとおりです。
①製作の委託      委託者、受託者の委託内容を定めます。受託者が製品の設計・製品開発・製造を行う旨が記載されます。売買の内容なども定めておく必要があります。
②仕様の変更      仕様の変更がある際には協議をするなどを定める必要があります。
③支払い方法      報酬支払方法についての定めです。どの段階でどのように支払うのかなどを定める必要があります。
④業務報告       契約の性質が委任ですので善管注意義務があり、その一環として報告義務を定める場合が多く見られます。
⑤知的財産権の帰属   ODMはブランド力が前提になりますので、製作物の特許、意匠、商標について帰属を明らかにしておく必要があります。
⑥再委託・権利譲渡の禁止 委託者は受託者の能力と技術を信頼して、自社製品の製造を委託するわけので、第三者に再委託されることを禁止する必要があります。
⑦最低発注保証     委託を受けた製品の個数が著しく少ないような場合、受託者は損害を発生させる可能性があるため、契約を履行するにあたって投資した額を回収するに十分な程度の発注保証を設ける必要があります。
⑧納入方法       製品の納入方法について、特に外国企業との取引の場合には輸入の方法などについて定めておく必要があります。
⑨検品義務       製品を受領した後、製品の受入検査を行い、仕様確認書通りの製品が製造されているかどうかの確認を行う必要があります。
⑩危険負担       双方に帰責事由がない場合、どの段階までは受託者が損害を負担し、どの段階から委託者が損害を負担するか定める必要があります。
⑪アフターケア     委託者が製品を売却した後に製品トラブルが発生した際にどちらが修理などを行うか定める必要があります。
⑫瑕疵担保責任     検品で発見できなかった瑕疵についての規定です。責任を限定する条項なども定められます。
⑬製造物責任      委託者が製品を売却した後に製品トラブルが発生し、売却先に損害を与えた場合の規定を定める必要があります。
⑭秘密保持       企業秘密を保護するための規定です。従業員に対する遵守義務なども規定し、第三者への漏えいを防ぎます。
⑮損害賠償・契約解除  一般的な解除規定や損害賠償責任です。
⑯有効期間       契約年数や更新について規定します。

コメント

最近はOEM契約からODM契約へ転換を図る企業が増えているようですので、その場合にはODM契約に必要な定め、例えば委託内容に製造する製品の設計を追加することなど、ODM契約で新たになった条項についての検討・注意が必要となります。

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