株式会社ユーシンが下請代金支払遅延等防止法違反
2016/11/22   コンプライアンス, 下請法, メーカー

1 事案の概要

 大手自動車メーカーの部品製造を行っている株式会社ユーシンは、下請代金支払遅延等防止法に違反する行為を行ったことを理由に公正取引委員会から勧告を受けたと発表しました。
 株式会社ユーシンが2016年6月までの1年間に製造・販売する自動車部品の製造を委託した下請事業者の一部から、発注前の合意に基づいて下請代金の額から一定金額を差し引きまたは支払わせていた行為が、下請代金支払遅延等防止法第4条第1項3号(下請代金の減額の禁止)に違反しました。
 株式会社ユーシンは下請け業者への返金を10月24日までに済ませており、「勧告内容を役員及び全従業員に周知徹底するとともに、下請法遵守に関する社内研修を実施するなどコンプライアンスの徹底と再発防止」に努めると発表しました。
ユーシン公式発表(PDF)

2 下請代金支払遅延等防止法とは

 「下請代金支払遅延等防止法」は、下請事業者の利益を保護し、取引の適正化を推進するために制定された法律で、公正取引委員会と中小企業庁とが連携し、運用しています。
 下請代金支払遅延等防止法は、親事業者が下請事業者に物品の製造、修理、情報成果物(ソフトウェアなど)の作成又は役務(運送、情報処理、ビルメンテナンスなど)の提供を委託したときに適用されます。
 なお、親事業者・下請事業者とは、お互いの資本金額によって決まります。(下請代金支払遅延等防止法第2条7項・8項)(詳しくは以下のリンクの中小企業庁のホームページをご参照ください)
下請代金支払遅延等防止法
中小企業庁
平成28年度下請取引適正化推進講習会テキスト(公正取引委員会・中小企業庁)(PDF)

3 親事業者の義務

 下請取引にあたって、親事業者は、以下のような4つの義務を負います。
①書面の交付義務(3条)
 発注にあたって、下請事業者に対し、取引内容に関する具体的記載事項を全て記載した書面を交付しなければいけません。そして、記載すべき内容は、「下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則」1条1項に定められています。
②下請代金の支払期日を定める義務(2条の2)
 下請事業者との合意の上で、下請代金の支払期日を事前に定めなければなりません。この期日は、納品日から60日以内で、かつできるだけ短い期間内でなければなりません。
③書類の作成・保存義務(5条)
 下請取引が完了したとき、取引記録を作成し、2年間保存しなければなりません。
④遅延利息の支払い義務(4条の2)
 支払期日までに下請代金を支払わなかった場合には、納付日から60日を経過した日から実際に支払われた日まで、年14.6%の割合による遅延利息を支払わなければなりません。

4 親事業者の禁止行為

 下請代金支払遅延等防止法に規定される親事業者の禁止行為は多岐に渡ります。(下請代金支払遅延等防止法第4条1項)
 例えば、代表的なものとして①支払い遅延、②代金減額、③買いたたきがあります。
 なお、中小企業庁の平成27年度取締状況では、①支払い遅延と②代金減額の2つで禁止行為違反の全体の約81パーセントになります。
平成27年度運用実績(PDF)

5 違反した場合の罰則

 下請代金支払遅延等防止法に違反した場合には公正取引委員会より勧告または警告等の行政指導が行われ、企業名を含めてその概要が公表されます。
 また、違反の内容によっては50万円以下の罰金が課されます。(下請代金支払遅延等防止法10条)

6 企業としての対策

 企業側の対策としては、経営者や従業員が下請代金支払遅延等防止法違反を未然に防止する取組が重要となります。
 下請代金支払遅延等防止法違反を未然に防止する取組としては、自社の業務特性に応じたコンプライアンス・プログラムを作って社内体制の整備を行うことが必要となります。
 具体的には、以下の①~④のステップを行うことが大切です。
 まず、①経営者が下請代金支払遅延等防止法の遵守が必要であることを把握し、社内への周知徹底を図ります。
 次に、②下請代金支払遅延等防止法の遵守に係る取組状況を把握し、自社で対策可能な社内体制の整備を行います。
 そして、③社内の下請代金支払遅延等防止法の遵守の状況をチェックし、問題があれば再発防止に努めます。
 さらに、④下請代金支払遅延等防止法の遵守に向けての課題を整理し、改善策を立案します。
下請取引早わかりガイド

7 コメント

 下請代金支払遅延等防止法に違反すると、公正取引委員会から行政指導を受け、企業名を公表されることになります。企業名を公表されると企業は信頼を失い顧客も失うかもしれません。
 したがって、経営者は下請代金支払遅延等防止法について正確に把握し、社内の整備をして禁止行為を行わないように対策をするべきです。

8 参考サイト

 下請代金支払遅延等防止法の一部改正については以下のサイトをご参考にしてください。
https://www.corporate-legal.jp/%E6%B3%95%E5%8B%99%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/8462

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