Webサイト運営に関連する法律まとめ
2017/06/12   IT法務, 民法・商法, IT

はじめに

近年では、インターネット上で自社商品・サービスに関して情報を発信することが当たり前になっています。法務担当の方は、業務を行うにあたって、Webサイトの法的な問題点について検討する機会もあるかと思います。今回は、Webサイトを運営するに当たって問題となりうる代表的な法律について、概要をまとめていきます。

個人情報保護法

●個人情報保護法とは
個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)は、個人情報の取得、取扱、提供の場面での規律を定めることで、情報の保護や効果的な活用を目指すものです。個人情報保護への意識が高まる近年では、Webサイト運営に限られず、理解が必要不可欠な法律といえます。
●規律内容について
個人情報の取扱いについて定めています。法2条では、個人情報、個人データ、保有個人データを定義し、以降の条文でそれぞれの規律について定めています。個人情報は個人データを包含し、個人データは保有個人データを包含する関係にあります。
●個人情報保護法への対応
個人情報保護法上の義務を履行していくにあたり、多くの企業はプライバシーポリシーを作成しています。本来、プライバシーポリシーの作成義務は法律上はありません。しかし、個人情報保護への意識が高まる今日では、あらかじめ顧客に個人情報と取扱いについての自社の指針を示し、予測可能性と安心感を与えることが大切です。また、プライバシーポリシーには、法律上の公表義務等の履行という意味もあります。
個人情報の保護に関する法律(全面施行版、PDF)
個人情報保護法ガイドライン通則編(PDF)

特定電子メール法

●特定電子メール法とは
正式名称は「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」といいます。一斉に多数の人に電子メールを送るとメールの送受信上で支障が生じうることから、これを防止し、良好な情報通信環境を保つことを目的としています(法1条)。
●規制対象となる「特定電子メール」とは(法2条2号、ガイドライン1頁)
「特定電子メール」は①営利を目的とする者が②広告又は宣伝を行う手段として送信する電子メールをいいます(法2条1号)。
●オプトイン手続き規制
・オプトイン手続きとは
特定電子メール法の代表的な規律としてオプトイン手続規制があります。オプトインとは、受信者となる人が事前に送信者に対してメール送信に対する同意を与える手続きのことを指します。
・特定電子メール送信には原則として同意を得る
法は、特定電子メールを送信できる相手として、特定電子メールの送信を受けることついての同意を通知した者を挙げています(法3条1項1号、ガイドライン3頁)。なお、電子メールアドレスを通知したもの(2号、ガイドライン14頁)、取引関係にある者(3号、ガイドライン17頁)、自己の電子メールアドレスを公表している団体・営業を営む個人(4号、ガイドライン18頁)への特定電子メール送信には、例外的にオプトイン手続きは不要です。
●その他の規制
また、オプトイン手続きの際には同意を証する記録の保存を行うことを義務付けています(法3条2項、ガイドライン10頁)。その他にも、同意は得たが受信者が受信を望まなくなった場合の措置(オプトアウト規制、法3条3項、ガイドライン20頁)、特定電子メールの表示に関わる規制(法4条、ガイドライン24頁)等が定められています。
特定電子メールの送信の適正化等に関する法律
特定電子メールの送信等に関するガイドライン(消費者庁、PDF)

特定商取引法

●特定商取引法とは
特定商取引に関する法律(特定商取引法)は、取引の公正を確保して、購入者の利益を守って経済の健全な発展を目指すものです(法1条参照)。
●どのような場合に適用を受けるのか
適用対象は「特定商取引」です。「特定商取引」には様々な形態の取引が含まれます(法1条参照)。そして、ネットショップやネット上の商品販売は「通信販売」として、「特定商取引」に含まれます(法1条参照)。したがって、ネットショップの運営やネット上での商品販売を行う場合には、特定商取引法の規制を確認する必要があります。
●規制内容
通信販売についての規律は法第三節「通信販売」(法11条~15条の2)に定めています。具体的には、①広告の表示(法11条)②誇大広告等の禁止(法12条)③未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止(法12条の3、12条の4)④前払い式通信販売の承諾等と通知(法13条)⑤契約解除の伴う債務不履行の禁止(法14条)⑥顧客の意に反して契約の申し込みをさせようとする行為の禁止(法14条)⑦契約の申し込みの撤回または契約の解除(法15条の2)です。
特定商取引に関する法律
特定商取引法ガイド-通信販売(消費者庁)
特定商取引法ガイド-インターネットで通信販売を行う場合のルール(消費者庁)

著作権法

●著作権とは
著作権とは、著作物に対する人格を保護する権利(著作人格権)、著作物に対する財産的な権利を指します。Webサイトは文章、画像、映像、音楽等の多様な素材により成り立っていますが、それぞれについて著作権が発生します。著作権は、登録の必要なく発生する権利で、発生後50年間保護されます。
●著作権法への対応
Webを制作するにあたっては、著作権を侵害しないように気をつけましょう。例えば、他のサイトの文章を引用したい場合には、法32条(引用)、法48条(出所の明示)の用件をみたす必要があります。 その他、著作権を侵害しないように著作物を利用する方法として「著作物が自由に使える場合」(文化庁)を確認しておくとよいでしょう。
著作権法
著作物が自由に使える場合(文化庁)

商標法

●商標法とは
商標とは、自己の生産・販売・取扱い等であることを示すために、商品につける営業者独特の標識で、いわばトレードマークのようなものです。商標法は商標権に対する権利保護に関する規律を設けている法律です。
●商標権侵害のリスク
商標権侵害を行ってしまった場合、使用の差し止めを受けたり、損害の賠償請求を受けたりするリスクがあります。また、企業信用の低下も無視できません。
●侵害を避けるための対応
自社のWebサイトが他人の商標権を侵害していないか、商標調査を行いましょう。商標調査は「特許情報プラットフォーム」(工業所有権情報・研修館)で行えます。ただし、専門性が求められる事柄でもありますでの、外部に委託することも考えましょう。
商標法
クリエイターが知っておくべき商標権とは

意匠法

主として工業デザインを保護する権利が意匠権です。特許庁に出願・登録されることで20年間はデザインの占有が保護されます。意匠権保護のための規律を設けているのが意匠法です。近年ではWebデザインも意匠権の保護範囲に含まれつつあることから、Webサイト運営の際には他者の意匠権を侵害していないか確認しておきましょう。
意匠法
Webデザインの権利をどうやって守るか

不正競争防止法

●不正競争防止法とは
不正競争防止法とは大手企業の知名度や信頼性に便乗するような紛らわしい宣伝行為やWebサイトの模倣を規制する法律です。
●どのような場合に適用されるか
インターネット上の宣伝行為に限られず、すべての事業に適用されます。意匠権、商標権、著作権の侵害が無い場合でも、不正競争防止法によれば差し止め等の対抗措置がとれる可能性があります。
●規制内容について
法2条において禁止行為を定めています。例えば、広く知られた商品表示に良く似た表示、類似表示を使用した商品を作り、売るなどして、市場において混同を生じさせる行為(周知表示に対する混同惹起行為、法2条1項1号)、他人の著名な商品表示を自己の商品表示として使用する行為(著名表示冒用行為、法2条1項2号)等です。例えば、大手サイトと見間違うようなWebサイトを開設したような場合は規制の対象になりえます。
不正競争防止法
不正競争防止法(経済産業省)
「ビジネスQ&A自社そっくりのホームページをやめさせることはできますか?」
不正競争防止法の概要(弁護士法人クラフトマン)

景品表示法

●景品表示法とは
消費者保護の観点から、商品・サービスの内容について誤解を生じさせるような表示を規制する法律です。食品の産地偽装事件等でよく問題となった法律です。
●規制対象とされる商品・サービス
インターネット上の取引だけに限られません。もっとも、インターネット上の取引では、文章や画像などの限られた情報をもとに取引がなされるので、商品・役務についての表示が重要な意味をもつといえます。
●規制内容
法は商品又は役務を供給する取引について、不当な表示行為を禁止しています(法5条)。そのため、商品やサービスについて①実物よりよく見せていないか(優良誤認表示、法5条1号)、②顧客に有利な条件であるかのように提示していないか(有利誤認表示、法5条2号)、③その他誤認を生じさせる恐れのかる表示でないか(法5条3号)を確認しておきましょう。
不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法、PDFファイル)
インターネット上の広告表示(消費者庁)

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