架空の口コミで賠償命令、信用毀損行為について
2019/04/16   コンプライアンス, 不正競争防止法

はじめに

 住宅リフォーム大手「オンテックス」(大阪市)が口コミサイトでランキングを操作して自社を1位にしていたとして同業者が賠償を求めていた訴訟で大阪地裁は11日、8万円の賠償を命じる判決をだしていたことがわかりました。口コミサイトを開設したのもオンテックスとのことです。今回は不正競争防止法の信用毀損行為について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、問題となった住宅リフォーム口コミサイトは2012年3月に開設され、全国の住宅リフォーム会社23社を利用者の口コミとともに紹介していたとされます。当サイトではオンテックスが口コミ数100件以上でランキングも1位となっており、原告側の同業社は10位以内にも入っていなかったとのことです。サイト上でオンテックスは自社が開設者であることは表示していなかったとされます。原告側はオンテックスを相手取り、営業上の損害など約260万円の損害賠償を求めていました。

不正競争防止法上の規制

 不正競争防止法2条1項では1号から16号まで「不正競争」行為を列挙しております。他人の氏名や商号、商標などを冒用して需要者に誤認させる行為や営業秘密の不正利用行為などが典型例です。そして14号では「広告」「取引に用いる書類」「通信」に「原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量…質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示」をすることを不正競争行為として挙げております。また15号では「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」も不正競争行為とされており、一般に信用毀損行為と呼ばれております。

信用毀損行為の具体例

 信用毀損の具体例としては、競争他社の製品について事実ではない内容の広告で誹謗中傷したり、取引先に文書を送る行為が典型例と言われております。特許侵害等で係争中である場合に、同業他社が特許侵害を行っているといった内容の広告や文書を取引先などに送付する場合も、結局特許侵害が認めらなかったり特許無効とされた場合には信用毀損に該当する可能性があるとされます。そして注意が必要なのが比較広告です。自社製品と他社製品を比較した広告などを作成して配布・公表する場合、そこに虚偽の内容が含まれていれば信用毀損行為となります。またこれらの行為は別途景表法の優良誤認表示に該当する可能性もあると言えます。

違反した場合

 これら不正競争行為が行われた場合、それによって営業上の利益を侵害されるおそれがある場合には差止請求をすることができます(3条1項)。また損害賠償請求を行うこともでき(4条)、2条1項14号の品質、内容についての優良誤認行為には5年以下の懲役、500万円以下の罰金またはこれらの併科となります(21条2項)。また法人についても3億円以下の罰金が科される可能性があります(22条1項3号)。

コメント

 本件で大阪地裁は、当口コミサイトでの高評価の口コミについて、一般からは投稿できない開設の準備段階で書き込まれており、オンテックスが架空の口コミを相当数行い1位にしていたと推認されるとし、オンテックスが優良だと誤認させる表示に当たるとしました。また原告側には営業上の損害は生じていないとして裁判費用8万円だけの賠償を命じました。架空の口コミとランキングにより原告企業のほうが劣っているかのような表示に当たり信用毀損にも該当し得ると思われますが、大阪地裁は14号の優良誤認にのみ該当すると判断したものと考えられます。このようにネット上の口コミサイト等に企業が自演で書き込みを行うといった行為は不正競争防止法違反に該当する可能性があります。いわゆるステルスマーケティング等といったネット上での評価の水増し行為は多く行われていると言われておりますが、今一度自社の広告方法に問題はないか見直しておくことが重要と言えるでしょう。

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