アニメーション制作事例に適用 ~下請法に関する運用基準改正まとめ~

1 はじめに

 公正取引委員会は、2016年12月14日に下請代金支払遅延等防止法(下請法)に関する運用基準を改正し、アニメーション制作に関する事例が新たに追加されました。それを受け、一般社団法人 日本アニメーター・演出協会は、同年12月19日に下請法の運用基準が改正されたことについて、声明を発表しました。ここでは、アニメーション制作会社の企業法務担当者が留意しておくべき、ポイントをまとめました。

2 下請法について

下請法とは、低額な賃金、過酷な労働条件などを押し付けられることの多かった下請業者の立場を改善するために設けられた法律で、正式名称は「下請代金支払遅延防止法」です。そして、2016年末に50年振りに下請法の一部を見直す通達がなされました。また、それと同時に中小事業者の取引条件の改善を図る観点から下請法に関する運用基準を改正されました。これによって、親事業者による違反行為の未然防止や事業者(親事業者と下請業者)からの違反行為に係る情報が提供されやすくなり、下請法の一層の運用強化に繋がるといえます。

下請法 50年ぶりに一部見直し(法務ニュース)

193回国会における安倍内閣総理大臣の施政方針演説

3 主な変更点

(1)誤認しやすい取引の類型を新設
 事業者が下請法の対象となる取引でないと誤認しやすい取引の例が新たに追加されました。具体的には、以下の2つの事例です。

・建設業者が施主から作成を請け負う建築設計図面の作成を建築設計業者に委託する場合
・アニメーション制作業者が製作委員会から制作を請け負うアニメーションの原画の作成を個人のアニメーターに委託する場合

 上記の2つは、プログラム(exアプリケーションソフト、制御プログラム、ゲームソフト)、影像又は音響により構成されるもの(exアニメーション、テレビ番組)、文字・図形等の結合などにより構成されるもの(exデザイン、設計図、雑誌広告)の作成委託をするもので、情報成果物作成委託といいます。この取引類型には次のような3パターンがあります。

 ①事業者(=親事業者)が業として行う提供の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者(=下請事業者)に委託すること

 ②事業者(=親事業者)が業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者(=下請事業者)に委託すること

 ③事業者(=親事業者)がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者(=下請事業者)に委託すること

 なお、③については少しわかりにくいのですが、イメージとしては、親事業者が情報成果物の作成を実際に行っているにもかかわらず、当該作成を下請けに出した場合を意味します。例えば、親事業者にホームページ制作の作成能力があっても、実際に作成業務を実施していなければ、上記③には該当しないことになります。

下請法の適用範囲(情報成果物作成委託・役務提供委託)

(2)新たな行為の追加
 今回の基準改定で、以下の違反行為事例が追加されました。

①受領拒否
 親事業者は、継続的に放送されるアニメーションの原画の作成を下請事業者であるアニメーション制作業者に委託しているところ、視聴率の低下に伴い放送が打ち切られたことを理由に、下請事業者が作成した原画を受領しなかった事例です。

②買いたたき事例
 親事業者が、アニメーションの原画の作成を下請事業者である個人のアニメーターに委託しているところ、親事業者の要望を反映させることにより作成費用が当初の見積りよりも割高となることを理由に下請事業者から下請代金の引上げを求められたにもかかわらず、そのような費用増を考慮することなく、当初の見積価格により通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定めた事例です。

③不当な給付内容の変更及び不当なやり直し
 親事業者は、アニメーションの動画の作成を下請事業者であるアニメーション制作業者に委託しているところ、親事業者が内容確認の上、完成品を受領したにもかかわらず、プロデューサーの意向により動画の品質を引き上げるための作業を行わせ、それに伴い生じた追加の費用を負担させなかった事例です。

改正のポイント(公正取引委員会:PDFファイル)

アニメーション制作業界における下請適正取引等の推進のためのガイドライン(公正取引委員会:PDFファイル)

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[著者情報] moriyama

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2003年京都大学法学部、2016年ワシントン大学ロースクール(LLM)卒。2017年ワシントン州司法試験合格。2011年1月~2012年6月預金保険機構、2016年8月~2017年7月米国シアトルのShatz Law Group勤務。
趣味は、ロングトレイルを中心にランニング全般。
[近時の著作]
「自動運転自動車による交通事故の法的責任~米国における議論を踏まえた日本法の枠組みとその評価[上]・[下]」(国際商事法務44巻10号1449頁・11号1609頁) (2016)
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