株主総会の招集手続違反まとめ

はじめに

12月14日に三菱自動車の臨時株主総会が開かれました。
そこで今回は、株主総会手続きの招集方法などに違反があった場合についてみてみます。

基準日

基準日とは議決権の行使または配当を受けるべき者等株主としての権利を行使すべき者を定めるための一定の日のことです(会社法124条1項)。基準日に株主名簿に記載されている株主が株主としての権利行使が可能となります。基準日を定める場合には、株式会社は、株主が行使することができる権利(基準日から3か月以内に行使するものに限る)の内容を定めなければなりません。多くの会社では、事業年度の終了日を株主権行使の基準日としていることから、事業年度終了後3か月以内に開催しなければならないこととなります。株主総会の開催手続きは?(出典 エヌ・ジェイ出版販売株式会社)
仮に基準日から3か月を経過して株主総会が開催される場合には、改めて議決権行使の基準日を定めるために、当該基準日の2週間前までに、当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告する必要があります(会社法第124条第3項本文)。定時株主総会の開催時期について(出典 法務省)

株主総会の召集方法・招集権者・招集通知

定時・臨時いずれの株主総会も、定められた招集手続によって開催されます。
招集権者は、取締役会設置会社においては、取締役会です。
それに対し、取締役会を置かない会社においては、取締役が招集を決定します。
株主総会招集の際に決定する事項は、(1)開催の日時・場所、(2)目的である事項、(3)書面による議決権行使ができるときは、その旨、(4)電子メールなどの電磁的方法による議決権行使ができるときは、その旨、(5)その他法務省令で定める事項です。
株主総会の召集方法・招集権者・招集通知 (出典 株式会社の作り方)

招集通知の発送

公開会社においては招集通知は、株主総会の日の2週間前までに発しなければなりません。
非公開会社である場合、取締役会設置会社は、株主総会の1週間前までです(ただし、書面投票制度又は電子投票制度を採用した場合は2週間前です)。
取締役会非設置会社では原則、株主総会の日の1週間前までです(定款において総会の1週間前よりも短い期間を定めることもできます)。
株主総会の招集手続について、公開会社かどうかによる違い、取締役会設置会社かどうかによる違い、株主数による違いについて(出典 弁護士法人 淀屋橋・山上合同)

招集通知の内容

株式会社は、事業年度ごとに、計算書類・事業報告とその附属明細書を作成します。計算書類とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、及び、個別注記表を指します。これらの計算書類・事業報告等は、会社によって作成され、監査を受けた後に、取締役会の承認が受けた上で(会社法436条3項)、定時株主総会に提出されます。決議事項 ~計算書類等の提出及び業績開示の承認1(出典 Legalus)

招集通知漏れ、招集通知期間の不足、招集手続きの違反がある場合

招集通知漏れ、招集通知期間の不足、招集手続きの違反、があるなど、
招集手続の法令違反として株主総会決議取り消しの訴えの対象になることがあります(招集の手続または決議の方法が法令もしくは定款に違反し、または著しく不公正なとき (831 条 1 項 1 号))。もっとも、株主総会の招集手続きまたは決議の方法が法令、定款に違反する場合でも、違反が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさない場合であれば、取消事由がある場合でも、裁判所の判断で、訴えを棄却(退けること)することができます。裁判所による裁量棄却と呼ばれます(832条2項)。
取消事由となる事例として以下のようなものがあります。
招集通知漏れ
招集通知が発せられなかった場合や、記載に誤りがあった場合には、総会招集手続きに瑕疵があったものとして総会決議取消事由に該当するとされています(会631条)。
なお、招集通知の発送漏れが多数に及ぶ場合は、決議の手続きに重大な違法があり、そのために決議があったとは評価できない場合にあたります。
具体的には、招集通知を欠いた株式の数が、全体の4割近くに上る場合、株主総会決議の不存在事由になるとした最高裁判例があります(最判昭和33年10月3日)。(出典 判例INDEX)
招集通知期間の不足の例
招集の通知が、すべての株主に対して法定の招集期間に2日足りない会日より12日前になされたものであるとき 最判昭和46年3月18日(出典 判例INDEX)
招集手続の違反
福島県南会津郡を所在地とする株式会社が、定款に別段の定めがないにもかかわらず、その株主総会を東京都新宿区に招集した手続 最判平成5年9月9日(出典 判例INDEX)
議案の要領の不足の例
議案の要領の記載が必要な事項が挙げられています(会社法施行規則63条7項)のでこれに違反した場合などです。
営業の重要な一部を譲渡する旨の決議がされた株主総会の招集通知に右営業の譲渡の要領を記載しなかった違法がある場合 最判平成7年3月9日(出典 判例INDEX)
目的事項に「取締役解任の議題につきその氏名が特定されていない通知がされた場合。取締役の解任(出典 鳥飼総合法律事務所)
目的事項に「取締役選任の件」とのみ記載し、選任される取締役の員数を明らかにしない通知がされた場合。最判平成10年11月26日(株主総会決議取消請求事件)判旨(出典 自分でできる会社設立)  
取締役会設置会社における取締役会の招集に関する決定(298 条 4 項)を欠く招集
取締役会の決議を経ることなく、代表取締役が株主総会を招集した場合には、招集手続に違反があるとして、決議取消事由になります。最判昭和46年3月18日(出典 裁判所)
取締役会の決議を経ることなく、代表取締役以外の取締役によつて株主総会が招集された場合は、決議の手続きに重大な違法があるとして決議不存在事由となっています。最判昭和45年8月20日(出典 裁判所)

株主総会議事録作成

株主総会での議事の経過や結果を明瞭に記録する役割を担っており、法令も、この作成義務を認めています。
株主総会議事録の記載事項(出典 Legalus)
株主総会議事録 サンプル(出典 税理士中江博行事務所 )

最後に

招集通知漏れ、招集通知期間の不足、招集手続き違反、議案の要領の不足、取締役会決議のない招集は、適正に招集通知を得た株主からも株主総会決議の取消の訴えを提起される可能性があります。従って、事務処理上のミスも含め、招集に際してはチェック体制を整えておくべきといえるでしょう。

企業法務ナビよりお知らせ
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[著者情報] ntakahashi

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■淵邊 善彦(ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士)

1987年東京大学法学部卒業。
89年弁護士登録。
95年ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業。
00年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画。
08年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)。
16年より18年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授。
19年ベンチャーラボ法律事務所開設。
主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『AI・IoT時代の企業法務 』(共著)、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。


■柴野 相雄(TMI総合法律事務所 パートナー弁護士)

02年弁護士登録。
10年ワシントン大学ロースクール(知的財産法コース)卒業(LL.M.)、同年サンフランシスコのモルガン・ルイス&バッキアス法律事務所勤務。
16年慶應義塾大学法科大学院非常勤教員就任(知的財産法務WP)、19年ISO/PC 317(Consumer protection: privacy by design for consumer goods and services)国内審議委員就任。
主にIT、インターネット、広告、メディア、エンタテインメントビジネスに関する法分野の裁判、仲裁および法律相談を多く扱う。

『IoT・AIビジネスに関するデータ保護と独禁法上の留意点』(Business Law Journal、18年4~6月号)、『[座談会]AIの活用と今後の労務管理上の課題』(労務事情、18年1月合併号)など著書多数。


■白石 和泰(TMI総合法律事務所 パートナー弁護士)

98年司法書士試験合格。
03年弁護士登録。
13年ワシントン大学ロースクール卒業(LL.M.)。
13~14年Dorsey & Whitney LLPおよびBracewell LLPで研修。
14~15年外務省経済局政策課専門員。
第二東京弁護士会情報公開・個人情報保護委員会委員、情報ネットワーク法学会会員。全銀協オープンAPI推進研究会元メンバー。無人航空従事者試験(ドローン検定)1級。

『AI・ロボットの法律実務Q&A』(勁草書房、19年2月)、『個人情報管理ハンドブック〔第4版〕』(商事法務、18年3月)、「Japan chapter of Getting The Deal Through」(Cybersecurity)(18年1月号)など編著書多数。


■阿部 豊隆(TMI総合法律事務所 パートナー弁理士・カリフォルニア州弁護士)

96年弁理士登録。
国内及び海外における特許出願、ライセンスや特許売買等のトランザクションや侵害訴訟、包括的な知財戦略支援等に従事。電気情報や機械制御等の技術を主に扱う。
97年より創英国際特許法律事務所勤務、04年ワシントンDC地区のオリフ法律事務所に駐在。
翌年、創英の米国オフィスをシリコンバレーに開設。07年米マイクロソフト本社知的財産部に入社。
11年アジア地区特許ディレクター兼日本マイクロソフトの知的財産部長に就任。14年TMI総合法律事務所入所。出版、講演多数。

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2005年東京大学法学部第一類卒業
2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
2017年米国ニューヨーク州弁護士登録

日本における知的財産法、営業秘密保護、個人情報保護法のほか、
EUにおける知的財産制度・競争法、EUデータ保護規則をはじめとする
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吉川 達夫
ニューヨーク州弁護士/外資系企業 VP, General Counsel

外資系法務本部長、駒澤大学法科大学院、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師
元Apple Japan法務本部長、元伊藤忠商事法務部、元Temple Law School日本校客員教授。上智大学法学部、Georgetown Univ. Law Center卒

編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

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畑中鐵丸
弁護士(東京弁護士会所属)
ニューヨーク州弁護士
税理士、弁理士

1991年 東京大学法学部在学中、国家公務員試験I種・司法試験に各合格
1992年 東京大学法学部卒業後、新日本製鐵株式会社入社
1996年 弁護士登録
1996年~1998年 国内中堅法律事務所において、企業法務・商事紛争のほか、一般民事・家事・刑事事件、特殊事件(企業再建・著作権・芸能エンターテインメント関連事案・労働事件・民事介入暴力事件等)等の国内法務案件を幅広く取り扱う
1998年 渡米し、ペンシルヴァニア大学ロースクール(米国フィラデルフィア市)にて、企業法、投資規制法、企業コンプライアンスプログラム、財務会計論等を学ぶ
1999年 同大学法学修士課程(LL.M.)卒業 同年米国ニューヨーク州司法試験 合格
1999年~2000年 Kirkland & Ellis 法律事務所(米国シカゴ市)に勤務し、企業法務、M&A、国際合弁、ライセンス契約、コンプライアンス法務等を担当
2001年 中島・宮本・畑中法律事務所(現名称:中島・宮本・溝口法律事務所)にパートナー弁護士(共同経営者)として参画
2006年 弁護士法人畑中鐵丸法律事務所を設立

「こんな法務じゃ会社がつぶれる」(第一法規、2010)、「こんな法務じゃ会社があぶない」(第一法規、2016)「企業法務バイブル[第2版]」(弘文堂、2013)等著書多数
企業法務バイブル、企業法務大百科の著者で著名な畑中鐵丸弁護士に、企業法務の仕事の体系・全体像の解説と、具体的な仕事の進め方や、スマート化・スピード化のためのテクニックを解説いただきます。セミナー(2時間)の後、懇親会(1時間)を行います。
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光和総合法律事務所 弁護士

東京大学法学部卒業後、NTTコミュニケーションズ入社。
同社在職中に、法科大学院の夜間コースに通学、2007年に弁護士登録。
2010~2012年の2年間、任期付公務員として総務省総合通信基盤局にて勤務。
電波法に基づく新制度について、法改正の他、税務面の調査等も担当し、国税庁との協議等に携わる。
任期満了後、光和総合法律事務所にパートナーとして復職、ビジネス・行政の視点も踏まえた幅広いリーガル・サポートを提供している。

近著に『ベーシック企業法務事典』(編著)、『税務コンプライアンスのための企業法務戦略』(共著)、『データ戦力と法律』(編著)他多数。

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
契約スキームの選択や契約書上の表現だけでも、税額に大きな影響を与えることがあります。こうしたポイントは、税務・法務の両方の観点がないとなかなかチェックできません。しかし、「税務は専門外なので分からない」、「税務を勉強しようにも膨大過ぎてとても時間が取れない」といった理由で、税務を敬遠している法務担当者の方も、多いと思います。

法務担当者としては、税務の詳細を理解する必要まではなく、「こういう場合は気をつけた方がいいな」、「自信がないので専門家に相談しよう」という発想にたどり着けば十分及第点ではないでしょうか。

本セミナーは、こうしたレベルに近付くことを目標に、最低限の税務の知識・考え方を理解した上で、契約と税務の接点となるポイントを具体的な事例を使いながら押さえていきます。税務の知識ゼロからでも、無理なく参加いただけるように、途中に質疑応答の時間を多く取りながら、進めていきます。
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