親会社や子会社が不祥事を起こした場合に取るべき対応

1 はじめに

 コンプライアンス体制の構築や強化が叫ばれて久しい昨今、企業の不祥事が頻繁にメディアに取り上げられています。そうした中、親会社や子会社が不祥事を起こした場合、自社は不祥事を起こした当事者ではないため、つい責任回避的になってしまったりなど、適切な対応が取れないことが考えられます。そこで今回は、親会社や子会社が不祥事を起こした場合に取るべき対応を検討していきたいと思います。

2 親会社が不祥事を起こした場合の子会社の対応

 (1) 不祥事発生直後
  多くの場合、各種報道で自社の属する企業のグループに大変なことが起きたと知ることになります。親会社の方は報道機関への対応に忙殺されており、自社への対応は難しいと考えておいた方が良いでしょう。そこで、自社としては親会社のホームページ等を定期的にチェックし、情報を入手していくのが現実的かと思われます。

 (2) 調査対象になった場合
 不祥事を起こした企業は、調査チームなどを立ち上げ、事実関係の調査等をすることになります。その一環として、子会社である自社に調査を行うことがあります。また、不祥事を起こした企業のグループ会社であるという理由で、外部から類似案件の調査対象になることもあります。いずれの場合であっても、基本的には親会社や外部の調査チームの指示に従い、適切な対応を取ることが求められます。調査手法としては、質問票への回答、資料徴求、ヒアリング等が一般的です。また、現金の実査、棚卸資産や固定資産の実地棚卸、契約書ファイルの通査など、特定の手続を求められることもあります。相手から求められた事柄については、誠実に対応することが必要です。外部の監督規制機関が存在する場合、後日証跡の提出を求められる場合もあるので、それに応じられるよう、調査を再現できるようにしておくことも重要です。

 (3) 調査終了後
 調査の終盤になると、親会社の方にも余裕が出てくるため、再発防止策を指示されることがあります。調査報告書も開示されるため、不祥事の事実関係、発生原因、再発防止策を確認して、自社で同じような不祥事の発生可能性がないか検討すると良いでしょう。また、調査報告書で「コンプライアンス研修の実施によって再発防止に努める」とされることも多いですが、研修の対象範囲に自社が入っているかどうかは必ず確認しておきましょう。対象に入っていなくとも、不祥事の発生可能性があると考えられる場合は、参加することで、自社での同じような不祥事の発生可能性を少しでも下げることが可能になるでしょう。
 利害関係者とのコミュニケーションは、この頃になるのが一般的です。親会社に連絡を取り、開示可能な情報を収集して、関係先に説明を行います。顧客から問い合わせがあったり、営業担当者が顧客を訪問した時などで、不祥事について話す機会が発生しますが、話して良いこととそうでないことは、事前に把握しておくことが必要です。不正確な情報を伝えるべきではないので、親会社と連絡が取れていない間は、開示されていない事柄には回答できないことを伝えつつ、責任逃れをしているとの印象にならないよう、誠意をもって対応する必要があります。
 自社の事業継続を不安視する従業員も多いと考えられます。確定的な情報の無い状況は従業員を不安にさせ、そのような状態が続けば、従業員の退職が増加することが考えられます。その場合、事業にも影響が出る可能性があるので、社内で従業員に説明する機会を設けると良いでしょう。新卒定期採用の内定者については情報発信を怠りがちであり、内定辞退を誘発しかねないため、内定者向けの説明会などにおいて現状を伝えるようにすると良いでしょう。

《参考文献・サイト等》
●法律の小窓ー親会社と子会社の法的関係

●中山崇(2018)「親会社が不祥事を発生させた場合の子会社対応ー発覚から事後処理までにやるべきこと」
『ビジネス法務』 P84~P88  中央経済社

●アンダーソン・毛利・友常法律事務所ー近時の子会社不祥事案から学ぶ内部統制制度の構築と再発防止策

3 子会社が不祥事を起こした場合の親会社の対応

 (1) 親会社の立場について
 親会社が一定の規模以上である場合は、内部統制システムの構築が義務付けられています(会社法362条4項6号、同条5項) 。親会社は子会社の株主であるため、親会社の取締役には、会社の重要な資産として子会社を管理し、子会社が親会社に損害を与えないようにする善管注意義務(会社法330条、民法644条)ないし忠実義務(会社法355条)があります。また、監査役に子会社調査権が認められています。しかしながら、内部統制システム構築のために特別の権限が認められているわけではありません。そこで、親会社としては、子会社に対し株主としての支配力を通じて適切な管理をすることが求められています。親会社の立場である場合は、親会社が不祥事を起こした時の子会社の対応とは異なり、子会社が不祥事を起こさないよう、事前に対策を講じておくことが必要であるという点が特徴的です。
 (2) 親会社の対応
 子会社は親会社と比べて内部統制が脆弱であるということが多く、不祥事は発生しやすいと言えます。不祥事が起きた場合の対応も、2で述べた対応から大きく変える必要はありません。親会社の立場である場合に最も重要なのは、2(3)で説明した再発防止策の検討です。子会社でどの程度コンプライアンス態勢が整えられているか把握し、程度によっては教育を施すなどで、今後同種の不祥事が発生しないよう、子会社を管理する必要があります。

《参考文献・サイト等》
●浦上総合法律事務所ー子会社管理と親会社取締役の責任

●上場会社役員ガバナンスフォーラムー【不祥事】子会社で不祥事が発覚した

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[著者情報] arai

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2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
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