改正消費者契約法のまとめ

1.はじめに

 消費者契約法は、民法改正とともに改正されます(2020年)。しかし、その前に消費者契約法は一度改正がなされます(2019年6月15日施行)。そこで、改正される背景と内容を概括したいと思います。

消費者契約法の一部を改正する法律(消費者庁HP)

2.消費者契約法が改正される背景

 消費者契約法は、消費者と事業者の交渉力等の格差に鑑み、消費者契約に関する被害事例等も踏まえ、消費者の利益を図るため、事業者の行為により消費者が困惑した場合について契約の申込みまたはその承諾の意思表示を取り消すことできる類型を追加する等の措置を講ずることとするために民法改正の前に一度改正されることとなりました。

3.改正内容

(1)現行消費者契約法3条1項
 当該規定は、改正によって、解釈に疑義が生じない明確なもので平易なものになるように配慮すること、個々の消費者の知識及び経験を考慮した上で必要な情報提供をすることという内容に変更することとなりました。

(2)現行消費者契約法4条2項
 当該規定は、改正によって、「消費者の利益となる事実を故意に告げなかったことにより、」という部分を「故意又は重大な過失によって」という文言になります。これは、不利益事実の不告知に関して、故意の認定が困難との指摘がされていて見直し課題とされていたことから、「重大な過失」という要件が追加されました。

(3)現行消費者契約法4条3項
 当該規定は、事業者が消費者契約締結について勧誘する際にした行為により困惑し、消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をした場合は取り消すことができる条項です。この規定は、改正によって、新たに3号から8号が新設されることとなりました。以下、どのような規定かを見ていきます。

ア、3号 不安をあおる告知
 「進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要な事項」「容姿、体型その他の身体の特徴又は状況に関する重要な事項」については、社会生活上の経験が乏しいことから、不安をあおり、正当な理由がある場合でないのに、当該願望を実現させるために必要である旨を告げること。

イ、4号 人間関係の濫用
 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること。

ウ、5号 判断力の低下の不当な利用
 当該消費者が、加齢又は心身の故障によりその判断力が著しく低下していることから、生計、健康その他の事項に関しその現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、正当な理由がある場合でないのに、当該消費者契約を締結しなければその現在の生活の維持 が困難となる旨を告げること。

エ、6号 霊感等による知見を用いた告知
 当該消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。

オ、7号・8号 契約締結前に債務の内容を実施等
 7号は、消費者が消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に消費者契約により負うこととなる義務内容の全部又は一部を実施した結果、実施前の原状回復を著しく困難にすること。

 8号は、7号のほか、当該消費者が消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該事業者が当該消費者契約の締結を目指した事業活動を実施した場合において、正当な理由がある場合でないのに、当該事業活動が当該消費者のために特に実施したものである旨及び当該事業活動の実施により生じた損失の補償を請求する旨を告げること。

以上が新たに新設されることとなりました。

(4)現行消費者契約法8条1項各号
 当該規定は、事業者の損害賠償責任を免除する条項ですが、「免除し」という文言に加えて、改正によって、各号について「当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する」という文言が追加されることとなりました。

(5)現行消費者契約法8条の2
 当該規定は、改正によって、無効とする条項(消費者の解除権を放棄させる条項)に、事業者に消費者の解除権の有無を決定する権限を付与する条項という文言が追加されました。

(6)新設される消費者契約法8条の3
 当該規定は、新たに新設された規定です。その内容は、事業者に対し、消費者が後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を受けたことのみを理由とする解除権を付与する消費者契約(消費者が事業者に対し物品、権利 、役務その他の消費者契約の目的となるものを提供することとされているものを除く。)の条項は、無効とするという内容です。

これらの条項が規定された背景については、以下にリンクを貼っておきます。

消費者契約法の一部を改正する法律の主な内容(消費者庁HP)

4.おわりに

 以上が2019年に施行される消費者契約法の内容になります。そして、2020年に民法改正がされるとともに消費者契約法も改正されます。短期間に2度の改正がされますので注意が必要になります。
 消費者庁のHPにある消費者契約法の逐条解説に民法改正がされるとともに改正される消費者契約法の内容が書かれていますので、このリンクも貼っておきます。

逐条解説(消費者庁HP)

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[著者情報] yoshimura

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編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

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■上田潤一
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/パートナー弁護士

01年東京大学法学部卒業
04年弁護士登録
12年米国Vanderbilt University卒業(LL.M.)
13年ニューヨーク州弁護士登録、英国University College London卒業(LL.M.)
労働法、社会保険・労働保険・年金に関連する法律、会社法、個人情報保護法等の法分野に関する業務を中心に、労働案件、一般企業法務の案件、紛争案件等を取り扱っている。
著作に『仕事でよく使う・すぐに応用できるビジネス契約書作成ガイド』(共著)(清文社、2017)、『実務Q&Aシリーズ 懲戒処分・解雇』(共著)(労務行政、2017)等がある。

■荻野聡之
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/アソシエイト弁護士

03年東京大学法学部卒業
06年東京大学法科大学院卒業(法務博士(専門職))
08年弁護士登録
労働法、危機管理、事業再生等の法分野に関する業務を中心に取り扱っている。
著作に『企業のための労働実務ガイド1 Q&Aと書式 解雇・退職』(共著)(商事法務、2013)、『労使双方の視点で考える 27のケースから学ぶ労働事件解決の実務』(共著)(日本法令、2015)、『M&Aにおける労働法務DDのポイント』(共著)(商事法務、2017年)等がある。

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淵邊 善彦
ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士

1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。

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