【特集】 第4回 社債の発行

第1 はじめに

 こんにちは。企業法務ナビの企画編集部です。最終回になる今回は「社債の発行」についてをテーマにしてお送りしようと思います。
 社債とは、会社が行う割当によって発生する、会社に対する金銭債権(会社法2条23号)のこと、つまり、企業が資金調達のために発行する債券のことです。社債には、①普通社債、②劣後債、③永久債、④新株予約権付社債がありますが、投資家に定期的に利払いされるという点に変わりありません。では、社債の発行について見ていきましょう。

第2 社債発行による資金調達のメリット・デメリット

 まず、社債発行による資金調達のメリット・デメリットについて見ていきましょう。
 主なメリットとしては、金融機関から融資を受ける場合より資金調達がしやすいという点、また、株式と違い、社債発行をしても経営に干渉されないという点が挙げられます。
 主なデメリットとしては、株式と違い、借金であるので社債権者に弁済する必要がある点、また、事務手続きが増えることによるコストが増えるという点が挙げられます。
 メリット・デメリットに関しては以下のページが詳しく解説しています。

社債 -企業、投資家ともにメリット大で発行が急増(PRESIDENT ONLINE)

社債発行を行うメリットとデメリット(SAMURAI証券株式会社)

第3 社債の発行手続きについて

 社債を発行する場合の流れは以下のようになっています。

(1)社債発行の決定

    ↓

(2)募集事項の決定

    ↓        

(3)募集社債の申込み

    ↓

(4)募集社債の割当て

    ↓

(5)募集社員の払い込み

(1)まずは、社債を発行することを決定します。

(2)募集事項の決定は、取締役、取締役会で決定します(348条1項、362条4項5号)。

 決定すべき募集事項は、

①募集社債の総額

②各社債の金額

③利率

④払い込まれた金額の返済の方法と期限

⑤利息の支払い方法と期限

⑥社債券(社債の内容が書いてある紙)を発行する場合はその旨

⑦社債権者が記名式(社債原簿に社債を引き受けた者の住所と名前・名称を記載する方法)から無記名式(前記住所等を記載しない方法)へ、もしくは無記名式から記名式へ変更する請求をすることができない場合はその旨

⑧社債管理者(社債を引き受けた社債券者の利益を保護する立場から、債権の弁済を受領し、債権の回収を容易にするなど社債の管理をする者のこと)が制限なく裁判ができるかどうか

⑨払込金額

⑩払込期日等

が、あげられます。

(3)社債の申込みについては、投資家など社債の引受申し込みをしようとする者に対し、以上の決定事項を通知し(677条1項)、それを受けて、申込みをする者は氏名・住所・引き受ける社債の数と金額等を記載した書面を会社に提出します(同2項)。

(4)投資家から申込みが集まったら、会社はその中から実際に誰にいくら引き受けてもらうか決定します(678条1項)。

(5)そして、社債の募集が完了したときは、引き受けた者は払込期日(676条10号)に(4)で決めた社債の金額を払い込むことになります。

 詳しくは以下のウェブページを参考にするといいでしょう。

シリーズ<5>社債の活用①(株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人)

第4 株式発行と社債の違い

 社債が株式発行と違う点については、社債はどの会社でも発行できる点や、社債には返済義務がある点など複数挙げられます。
 相違点について詳しいウェブページを紹介しておきます。

シリーズ<5>社債の活用①(株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人)

第5 少人数私募債について

少人数私募債とは

 社債には公募債と私募債の2種類があります(金融商品取引法2条3項)が、少人数私募債は、この私募債のうち、50人未満の投資家に対して募集を行うものになります(同条同項)。このように、少人数私募債は、金融商品取引法の概念として整理されていますが、一般的には金融商品取引法の開示規制と会社法の社債管理者設置義務を回避するように設計された社債のことを指します。

※金融商品取引法の開示規制とは、有価証券の募集に該当した場合は、発行時と発行後に一定の情報開示をしなければならない(金融商品取引法4条1項、24条1項等)ことをいいます。

※会社法の社債管理者設置義務とは、前述したように、社債権者の利益保護という観点から、社債を発行した会社は会社法で社債管理者を設置しなければならない(会社法702条本文)ことをいいます。ただし、社債総額を社債1口の最低金額で割った数が50を下回る場合には社債管理者を設置する必要はありません(会社法702条但書、会社法施行規則169条)。つまり、少人数私募債の場合は設置する必要はありません。

少人数私募債のメリット

 少人数私募債は社債なので、株式と異なり、利払いによる資金調達コストは税務上損金に算入されるというメリットがあります。つまり、利払いによって得た金額については法人税を支払わなくて済みます。
 また、自治体によっては、少人数私募債の助成制度を実施しているところもあるようです。

計画性の求められる少人数私募債

 少人数私募債は社債に該当するので、募集事項を決定する必要があります(会社法676条)が、募集の対象がメインバンク等になるので十分な資金計画や事業計画を提示する必要があります。
 また、私募債によって得た金額を私募債を引き受けた者へ返済する期間は3年から5年程度と想定され、設備投資で利用される場合などでは資金回収のスパンが長くなるため、原資が回収できない可能性もあることを気に留めておく必要があるでしょう。
 私募債について、ここまで述べてきたことが詳しくまとめられたウェブページを紹介しておきます。

シリーズ<6> 社債の活用②-少人数私募債①(株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人)

第6 おわりに

 以上、見てきたように、社債には株式発行と違ったメリットが多数あり、資金調達の手段として広く使われています。先日も、日本経済新聞(2017/10/18)の電子版によると、東京電力ホールディングスグループが、機関投資家向けに総額1000億円の普通社債を発行すると発表しました。
 このように、社債発行が資金調達の方法として選ばれることは多いと思われますが、法務部としては、上記の「社債の発行手続きについて」を参考にしつつ、手続に漏れがないか確認しましょう。
 また、少人数私募債を発行する場合についても、金融商品取引法の開示規制と社債管理者設置義務を回避するように設計されているか、また、内容まで踏み込んで計画性が妥当かについてもチェックすることが望ましいと考えられます。
 参考のために、少人数私募債発行のサンプルが載っているウェブページを紹介しておきます。

少人数私募債発行サンプル(鶴見建設経営コンサルティング)

東京電力ホールディングスグループの社債発行の件については以下のニュースを参照してください。

東電、総額1000億円の社債発行 (日本経済新聞)

 ここまで全4回にわたり、「企業による資金調達」というテーマで記事をお送りしてきましたが、いかがであったでしょうか。
 今回の特集が、法務担当者の一助になればと思います。 最後まで、お付き合い下さり有難うございました。

(文責:okumura)

関連業務タグ:
 
[著者情報] moriyama

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

法務NAVIまとめ 商事法務 会社法 民法・商法 金融商品取引法
第99回MSサロン(名古屋会場)
2018年06月20日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「秘密保持契約 ~ その作成・交渉の実務及び英文となった場合の留意点」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務NAVIまとめ 商事法務 会社法 民法・商法 金融商品取引法
第100回MSサロン(東京会場)
2018年07月06日(金)
19:00 ~ 21:00
2,000円
東京都新宿区
講師情報
岡 伸夫
1992年 京都大学法学部卒業
1994年 大阪弁護士会 登録 梅ケ枝中央法律事務所 
2000年 ハーバードロースクール 修士課程(LL.M)卒業
Masuda Funai Eifert & Mitchell 法律事務所(シカゴ)
2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー    
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設

弁護士会活動(2018年2月現在)
日本弁護士連合会 ひまわりキャリアサポート 委員
第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員 

企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士

主な著書
「アメリカのP&A取引と連邦預金保険公社の保護 債権管理 No.96」金融財政事情研究会
「米国インターネット法 最新の判例と法律に見る論点」ジェトロ 共著
「Q&A 災害をめぐる法律と税務」新日本法規 共著
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「GDPR施行後の取引実務」です。
申込・詳細はコチラ
法務NAVIまとめ 商事法務 会社法 民法・商法 金融商品取引法
【名古屋】人事・労務管理《初めての法務部から不祥事対応まで 基礎セミナー:第4回》
2018年06月20日(水)
14:00 ~ 17:00
10,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
竹内 千賀子 杉谷 聡
■竹内 千賀子
略歴:
愛知県一宮市出身
愛知県立一宮高校卒業
1998年 名古屋大学法学部法律学科卒業
1998年 一宮市役所入職(2001年3月まで)
2006年 弁護士登録(59期 東京弁護士会)
奧野総合法律事務所入所
2009年 日本証券業協会法務部(出向) 
2013年 せいりん総合法律事務所 パートナー(独立)
愛知県弁護士会に登録換え
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー

■杉谷 聡
略歴:
愛知県一宮市出身
愛知県立一宮高等学校卒業
2016年 一橋大学法学部卒業
2017年 弁護士登録(70期 愛知県弁護士会)
オリンピア法律事務所入所
新規配属法務担当者の方・実務対応はしているものの不安がある法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第4回目のテーマは人事・労務管理です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務NAVIまとめ 商事法務 会社法 民法・商法 金融商品取引法
【名古屋】広告関連法の基礎《法務担当者のための各分野の重要法務セミナー:第5回》
2018年06月22日(金)
15:00 ~ 17:00
2,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
田代 洋介
略歴:
愛知県名古屋市出身
2010年 静岡大学人文学部法学科卒業
2013年 南山大学法科大学院法務研究科修了
2014年 弁護士登録(67期 愛知県弁護士会)
川上・原法律事務所入所
2017年 オリンピア法律事務所 アソシエイト
各弁護士が日常の実務経験の中でご質問を受けることの多いトピックについてのセミナーです。今回のセミナー内容は広告関連法の基礎です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務NAVIまとめ 商事法務 会社法 民法・商法 金融商品取引法
【名古屋】サービス契約《法務担当者のための英文契約セミナー:第4回》
2018年06月27日(水)
15:00 ~ 17:00
8,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
英文契約をこれから担当・現在担当している法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第4回目のセミナー内容はサービス契約です。
申込・詳細はコチラ
法務NAVIまとめ 商事法務 会社法 民法・商法 金融商品取引法
『企業法務イングリッシュ・コミュニケーション』~企業法務パーソンのための実践英語コミュ力アップ講座!~
2018年07月03日(火)
13:30 ~ 16:00
15,000円(税込)
東京都新宿区
講師情報
登島 和弘
サイネオス・ヘルス合同会社
アジア太平洋地域法務責任者
*7月1日付にてインヴェンティヴ・ヘルス・ジャパン合同会社より社名変更予定

1961年神戸市生まれ
中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、日本AT&T㈱(米系)契約課長、松下冷機株式会社法務室主事、
セジデム株式会社(仏系)コーポレートサービス部統括部長・法務部長兼任等、を歴任し、現職。
*企業名は当時のまま。
※日本企業・外資系企業双方で通算30年以上の企業法務・国際法務の経験を有する現役の企業法務責任者です。
当社は、東京にて、企業法務パーソン(企業法務担当者・インハウスローヤー等)のためのビジネススクールを運営しています。
企業法務にまつわる「知識」を学ぶ研修・講座は世の中に数多くありますが、当社が運営するリーガルビジネススクール(LBS)は、
法務担当者としての「思考方法」や「仕事術」を学ぶことに焦点を当てています。

今回は、『企業法務イングリッシュ・コミュニケーション』講座を開催いたします。

日本企業・外資系企業を問わず、英語によるコミュニケーションが不可欠な時代。
しかし、残念ながら、企業法務パーソンのみなさんが実際のビジネスシーンで望まれる
適切な英語によるコミュニケーションの取り方にフォーカスした講座はあまりお目にかかりません。

この講座では、現役の外資系企業法務責任者が、ビジネスと企業法務の両方の目線から、
次の日から現場で使える英語による適切な企業法務コミュニケーション術を余すところなくお伝えします。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

【法務NAVIまとめ】企業統治元年 CGCとSCについてのまとめ... 1.企業統治指針概要(コーポレート・ガバナンス) コーポレートガバナンス・コードについて(東京証券取引所)  有識者会議が提出した今年3月の原案を元に、6月に東京証券取引所が導入したもの。株主や他のステークホルダーと企業との適切な関係を構築する観点から、5つの基本原則、及びそれを補助する68にも上...
非正規・賃金格差は身分の差 1.正規雇用と非正規雇用との賃金差  正規雇用と非正規雇用との間の格差が現在、日本で問題となっている。特に、賃金差、すなわち年収の格差が、正規雇用者と被正規雇用者との間で生活水準や人生設計に大きな差をもたらす原因のため、顕著な問題となっている。 正規雇用と非正規雇用の年収 年収ガイド ...
ブラック企業にならないためにまとめ... 1 はじめに  「ブラック企業」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。近年流行している言葉で、2013年にはユーキャン新語・流行語大賞のトップテンにもノミネートされました。  皆さんは、ブラック企業と聞いてどのような会社を想像するでしょうか。残業代を全く支払わない会社?異常なほどの長時...