独占禁止法コンプライアンスまとめ

はじめに

 現在、多くの業界に事業者団体が存在し、情報の交換や事業者団体の会員に対して教育をするなど、経済社会に大きな貢献をしています。しかし、公正取引委員会が、「直近10年間に公正取引委員会が事業者団体に対して排除措置命令又は警告を行った事件は29件(中略)と依然として数多く存在するとともに,事業者による価格カルテル事件において,事業者団体の会合の場が利用されるなどの事例もみられるところである」と発表するように、独占禁止法違反の例は少なくありません。
 そこで、事業者団体やそこに属する企業が、自主的に独占禁止法に関するコンプライアンスに取り組むことが必要となってきます。

独占禁止法とは?

◎独占禁止法の目的

 独占禁止法の正式名称は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」ですが、ここでは単に独占禁止法と呼びます。
 現在の経済社会では、事業者が自らの扱う商品やサービスを、その市場の中で提供しています。そして、市場が適正に機能していれば、事業者は創意工夫することで同市場内の他の事業者と競争を行い、消費者はニーズに従って事業者から商品やサービスを買うことができます。独占禁止法は、私的独占や不当な取引制限、不公正な取引方法を制限することで、市場を適切に機能させて公正かつ自由な競争を促進し、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進すること」(独占禁止法1条)を目的として定められました。
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
独占禁止法の概要
 
 

◎独占禁止法の規制内容

 主な規制内容は以下のものが挙げられます。
独占禁止法の規制
 
・私的独占
 私的独占は、独占禁止法3条前段で制限しています。
 私的独占には2種類あり、1つ目は「排除型私的独占」といって、事業者が単独又は他の事業者と共同して、不当な低価格販売などの手段を用いて、競争相手を市場から排除したり、新規参入者を妨害して市場を独占しようとする行為です。例えば、競争者と競合する販売地域又は顧客だけに安い価格で商品販売をする行為や、他の事業者の事業活動を妨害する行為が、排除行為となる可能性があります。
 2つ目は「支配型私的独占」といい、事業者が単独又は他の事業者と共同して株式取得などにより、他の事業者の事業活動に制約を与えて、市場を支配しようとする行為です。例えば、市場で強い価格決定力を持つ企業が、自社の商品の再販売価格を指示して、その小売価格を統一することで、他の会社も同じ価格設定をさせることで、市場での価格を支配することが挙げられます。
排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針
 
・不当な取引制限
 不当な取引制限として、「カルテル」と「入札談合」が独占禁止法3条後段で規制されています。
 「カルテル」とは、複数社が話し合ったりして連絡を取り合い、本来、各企業がそれぞれ決めるべき商品の価格や生産数量などを共同で取り決めることをいいます。カルテルによって、競争がなくなり、高い価格が設定されると、消費者は価格によって商品を選ぶことができなくなるばかりか、本来ならば安く買えたはずの商品を高く買わなければならなくなります。
 「入札談合」とは、公共工事や物品の公共調達の入札の際、複数社が事前に相談して、その中から受注する会社や受注価格を決めることをいいます。入札談合が行われると、価格競争をしなくても望んだ価格での落札ができてしまうため、結果として高い価格で落札されることになります。本来、企業努力による価格競争があれば、より安く発注できた可能性があり、「入札談合」は、不当な取引制限のひとつとして禁止されています。
こんなことが起こると暮らしがあぶない!~企業の違反行為~ カルテル
こんなことが起こると暮らしがあぶない!~企業の違反行為~ 入札談合
 
・不公正な取引方法
 公正な競争を阻害するおそれのある行為のうち、公正取引委員会が定めるものが独占禁止法19条で制限されています。
 不公正な取引方法として、全ての業種に適用される「一般指定」と、特定の事業者・業界を対象とする「特殊指定」の2つがあります。一般指定で挙げられた不公正な取引方法には、取引拒絶、排他条件付取引、拘束条件付取引、再販売価格維持行為、ぎまん的顧客誘引、不当廉売などがあります。また、特殊指定は、現在、大規模小売業者が行う不公正な取引方法、特定荷主の行う不公正な取引方法及び新聞業の3つについて指定されています。
 不公正な取引方法として、公正取引委員会から排除措置命令を受けた例としては、企業が商品を高く売るために、競争関係にある他のメーカーと共同して、安売りする販売店には商品を供給しないとした事案等があります。
不公正な取引方法 一般指定
物流特殊指定(特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法)について
これまでにどんな事件があったの?~私たちの身近に起こった事件ファイル~ タクシー事業者による共同の取引拒絶
 
・企業結合の規制
 株式保有や合併等の企業結合により、それまで独立して競争していた会社同士に結合関係が生じて、市場を支配したり、他の企業を排除したりするなど、市場の競争を実質的に制限する場合は、独占禁止法9条以下で規制されます。
 企業結合が行われても、市場で企業間の競争が行われていれば、消費者は結合があった会社以外の会社の商品を選べるので、その企業結合は問題ありません。国内外を問わず、一定の企業結合を実施しようとする会社は、競争制限的か否かをあらかじめ審査するために公正取引員会への届出が義務付けられています。
企業結合について
こんなコトが起こると暮らしがあぶない~企業の違反行為~ 競争制限的な企業結合

企業は何をすればいいの?

 企業の事業行為が独占禁止法に違反しないようにするには、独占禁止法コンプライアンス・プログラムの内容が全社的に共有され、その内容が統一的に運用されるために文書化されていることや、必要なときに容易に参照することができるようにしておくことが求められます。 
 さらに、公正取引委員会は、企業の経営トップが独占禁止法コンプライアンスに対するコミットメントを表明してイニシアティブを発揮すること、自社の実情に応じた独占禁止法上のリスクの特定をし、それに応じた対応策を用意すること、独占禁止法コンプライアンスを行う部門の設置等を、企業に求めています。具体的には、独占禁止法コンプライアンス・マニュアルを定めること、社内研修の実施、社員が独占禁止法違反行為に関与した場合の懲戒ルールを定めてそれを文書に明記すること等が挙げられます。
(PDFファイル)企業における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況について
(PDFファイル)事業者団体における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況について
我が国企業における外国競争法コンプライアンスに関する取組状況について~グローバル・ルールとしての取組を目指して~
(PDFファイル)独占禁止法遵守マニュアル作成の手引きの例
独禁法ーコンプライアンス・プログラム:御器谷法律事務所

関連業務タグ:
関連法律タグ:,
 
[著者情報] matsuhashi

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

法務NAVIまとめ コンプライアンス 下請法 独占禁止法
第99回MSサロン(名古屋会場)
2018年06月20日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「秘密保持契約 ~ その作成・交渉の実務及び英文となった場合の留意点」です。
申込・詳細はコチラ
法務NAVIまとめ コンプライアンス 下請法 独占禁止法
第98回MSサロン(大阪会場)
2018年06月13日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
大阪府大阪市北区
講師情報
河端 直 根本 俊太郎
■河端 直
経歴
2013年(平成25年)11月
司法研修所入所(67期)
2014年(平成26年)12月
大阪弁護士会に弁護士登録 なにわ共同法律事務所入所

著書
野村剛司編「法人破産申立て実践マニュアル」(青林書院)(共著)
スポーツ問題研究会編「Q&Aスポーツの法律問題」(民事法研究会)(共著)

■根本 俊太郎
経歴
2004年(平成16年)4月
株式会社朝日新聞社入社(記者職)
2016年(平成28年)11月
司法研修所入所(70期)
2017年(平成29年)12月
大阪弁護士会に弁護士登録 なにわ共同法律事務所入所
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「民法改正への対応」です。
申込・詳細はコチラ
法務NAVIまとめ コンプライアンス 下請法 独占禁止法
【名古屋】システム開発におけるトラブル発生時の対応《ITビジネス法務勉強会:第2回》
2018年07月12日(木)
15:00 ~ 17:00
3,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
田代 洋介
略歴:
愛知県名古屋市出身
2010年 静岡大学人文学部法学科卒業
2013年 南山大学法科大学院法務研究科修了
2014年 弁護士登録(67期 愛知県弁護士会)
川上・原法律事務所入所
2017年 オリンピア法律事務所 アソシエイト
ITに関する法律を学び、ビジネスに活かしていただくためのITビジネス法務セミナーです。第2回目のテーマはシステム開発におけるトラブル発生時の対応です。
申込・詳細はコチラ
法務NAVIまとめ コンプライアンス 下請法 独占禁止法
【名古屋】準拠法条項/裁判・仲裁条項《法務担当者のための英文契約セミナー:第2回》
2018年05月30日(水)
15:00 ~ 17:00
8,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田 圭介
略歴:
愛知県春日井市出身
愛知県立旭丘高校卒業
2004年 京都大学法学部卒業
2005年 弁護士登録(58期 第二東京弁護士会)
クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業入所
2008年 フランス系ラグジュアリーブランド日本支社(出向)
2010年 アメリカ、Duke University School of Law(法学部)LLM卒業
2010年 クリフォードチャンス香港オフィス(出向)
2011年 日系の大手財閥系総合商社のイギリス子会社の法務部(出向)
2013年 ニューヨーク州弁護士登録
2015年 IBS法律事務所開設(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー
英文契約をこれから担当・現在担当している法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第2回目のセミナー内容は準拠法条項/裁判・仲裁条項です。
申込・詳細はコチラ
法務NAVIまとめ コンプライアンス 下請法 独占禁止法
【名古屋】国際取引契約(英文契約)審査の基礎《法務担当者のための各分野の重要法務セミナー:第2回》
2018年05月29日(火)
15:00 ~ 17:00
8,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
各弁護士が日常の実務経験の中でご質問を受けることの多いトピックについてのセミナーです。今回のセミナー内容は国際取引契約(英文契約)審査の基礎です。
申込・詳細はコチラ
法務NAVIまとめ コンプライアンス 下請法 独占禁止法
【名古屋】債権保全・回収《初めての法務部から不祥事対応まで 基礎セミナー:第3回》
2018年06月06日(水)
14:00 ~ 17:00
10,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
川上 敦子 石井 大輔
■川上 敦子
略歴:
大阪教育大学附属高等学校卒業
1980年 京都大学法学部卒業
1982年 弁護士登録(34期 愛知県弁護士会)
青山法律事務所入所
1988年 川上法律事務所パートナー
2010年 川上・原法律事務所に名称変更
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー

■石井 大輔
略歴:
静岡県三島市出身
静岡県立沼津東高校普通科卒業
2011年 同志社大学法学部法律学科早期卒業
2014年 名古屋大学法科大学院未修コース修了
2015年 弁護士登録(68期愛知県弁護士会)
川上・原法律事務所入所
2017年 オリンピア法律事務所 アソシエイト
新規配属法務担当者の方・実務対応はしているものの不安がある法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第3回目のテーマは債権保全・回収です。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

【法務NAVIまとめ】契約書に不備があった場合の対処について... はじめに  企業が当事者になる契約の場合、契約書を作成するのが一般的です。もっとも、信頼取引という立場から契約書を作成しなかったり、契約書自体は作成したものの記載事項に不備があるという事態は少なからず存在します。  そこで、このような事態が生じた場合の対処方法についてまとめたいと思います。 契約...
親子上場についてのまとめ 1 はじめに  企業は、子会社と共に上場するという親子上場という形態を取ることがあります。以下では親子上場についてのメリット・デメリット等についての情報をまとめてみました。 2 親子上場とは  親子上場とは、親会社と子会社が共に上場していることを指します。  日本は親子上場している会社が多...
【法務NAVIまとめ】新しいタイプの商標を出願するにあたって... 新しいタイプの商標とは 2015年4月1日から、商標法の改正により、これまで商標として登録し保護することができなかった商標についても登録が可能となっており多くの出願がなされている。 参考:新商標登録の第一歩 ~あの絵この音そんな色~ 新しいタイプの商標は5種類である。 ①動き商標 文字や図形...