酒の安売り 罰則も

・はじめに

平成28年10月25日、国税庁と財務省は、量販店等による酒の過度な安売りを規制する「公正な取引の基準」をまとめたことを発表しました。仕入原価と販売管理費の合計額を下回る値段で安売りを続ける販売業者に対しては、酒類販売の免許取消し等の処分が下される可能性が出てきました。同年5月には、酒類の過剰な安売りを規制する酒税法等の改正案が成立しており、今回その具体的内容を明らかにしたと言えます。

・規制の経緯

当初は、酒税の安定した賦課徴収を図るために既存の小売業者が保護されていました。しかし、規制緩和の流れに基づき、2001年1月に距離基準(ある酒店から一定の距離内には新たな酒店を開店できませんでした。)が廃止され、2003年9月には人口基準(酒店は一定人口ごとに一定の店舗数と決まっていました。)が順次廃止されました。このような自由競争の促進により、大型量販店が客寄せのためビール等を採算度外視で安売りするという不当廉売が行われ、比較的小規模の酒店等の経営が圧迫されている現状があります。それに対処するため、上記で述べたとおり、今年の5月27日に酒類の安売りを規制する改正酒税法が参議院本会議で可決、成立しました。これまでの国税庁による既存の取引指針や公正取引委員会による摘発では、十分にその機能が発揮されていたとはいえず、今回の酒税法改正に踏み切る形となった言えます。
議案情報(参議院)

・規制の対象

規制の対象は、仕入原価と販売管理費を合わせた額を下回る安売りを行い、周囲の業者に相当程度影響を及ぼすと判断された業者となります。販売管理費とは、販売費及び一般管理費のことであり、一般管理費とは企業の営業活動全般や一般管理業務をすることにより発生する費用のことを指します。 
参考サイト 販管費(iFinance)
単に大型量販店が酒類を大量に仕入れコストを抑え、低価格で販売する手法自体には問題は無く、その販売方法により、周囲の業者に影響を及ぼす可能性がある場合に規制の対象となり得ます。そして国税庁は、情報提供に基づき調査し、基準に違反している業者には改善命令や業者名の公表、免許取消し等をすることが出来るようになります。今回規制対象を明確化した改正酒税法は、年明けに取引基準等を確定し、来年の平成29年6月に施行される予定です。
改正酒税法条文(PDF) 今回関係しているのは八十六条の三の「公正な取引の基準」となります。

・おわりに

今回の酒税法の改正とその基準の明確化は、 罰則が新設されることで業者が萎縮し、健全な価格競争を妨げることにもつながると考えられます。また、基準となる販売管理費はかなり広い概念であり、その額を正確に計算できるのかという疑問も否定できません。しかし、政府が酒類の販売に対し、これまでの規制緩和の方針を少し変化させ始めたと言えます。国による規制強化・緩和は事業者にも大きな影響を与えます。例えば、株式会社が特別養護老人ホームの運営(現在は地方公共団体・社会福祉法人しか運営できません。)をできるようにする動きがあり、介護事業者としてはその流れを想定し対応しなければなりません。このように政府による様々な規制強化・緩和の動きがあり、企業の法務担当者として自らの事業に関連する規制の動向には機敏に対応していくべきでしょう。

関連法律タグ:
 
[著者情報] uchiyama

詳細情報はありません。

このニュースに関連するセミナー

法務ニュース コンプライアンス 行政対応 民法・商法
第83回MSサロン(大阪会場)
2017年06月15日(木)
19:00 ~ 21:00
2,000円
大阪府大阪市北区
講師情報
浜田雄久弁護士 河端直弁護士
弁護士 浜田雄久
1995(平成7)年4月 大阪弁護士会に弁護士登録、なにわ共同法律事務所入所
2004(平成16)年8月 アメリカ合衆国Duke University School of Lawに留学(翌年法学修士号取得)
2005(平成17)年8月 シンガポール共和国 Rajah & Tann 法律事務所において研修開始
2006(平成18)年3月 ニューヨーク州弁護士登録
2006(平成18)年8月 なにわ共同法律事務所復帰

弁護士 河端直
2014(平成26)年12月
大阪弁護士会に弁護士登録 
なにわ共同法律事務所入所
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、 「契約書チェックポイント(業務委託系契約)」です。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース コンプライアンス 行政対応 民法・商法
第82回MSサロン(東京会場)
2017年05月24日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
東京都新宿区
講師情報
伊藤 雅浩
1996年名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻修了
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)等にて,SAP R/3その他ERPパッケージソフトの導入,基幹系情報システムの企画,開発のプロジェクトマネジメントに従事。
2007年一橋大学法科大学院卒業
2008年弁護士登録,弁護士法人内田・鮫島法律事務所入所
2013年弁護士法人内田・鮫島法律事務所パートナーに就任
主にソフトウェア,ネット,システム開発に関する契約,紛争処理に従事している。
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、 「施行直前!知っておくべき改正個人情報保護法」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務ニュース コンプライアンス 行政対応 民法・商法
【国際法務入門】組織再編 会社分割
2017年06月21日(水)
19:00 ~ 22:00
25,000円(税込) ※平成29年2月15日開催のLBS体験講座に参加された方は10,000円減算した金額とさせていただきます。 なお、単回申込みを複数回される場合は、上記減算は初回分のみ適用となりますのでご了承ください。
東京都新宿区
講師情報
登島 和弘
インヴェンティヴ・ヘルス・ジャパン合同会社 アジア太平洋地域法務責任者
1961年神戸市生まれ
中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、
日本AT&T㈱(米系)契約課長、松下冷機株式会社法務室主事、
セジデム株式会社(仏系)コーポレートサービス部統括部長・法務部長兼任等、
を歴任し、現職。
*企業名は当時のまま。
※日本企業・外資系企業両方での国際法務経験が有り、両者の観点から国際法務
について指導を行います。
国際法務入門者向けの契約法務習得セミナーになります。
当日は、下記の流れで、こちらで用意したビジネスシチュエーションを題材に、
国際法務経験豊富な講師との双方向でのコミュニケーションを行い、
ときに、少人数のグループでのディスカッションを織り交ぜながら、
参加者が思考しアウトプットするプログラムとなっております。

売買契約・共同開発契約の審査や作成に必要な「知識」を習得するのはもちろんのこと、
一方的に話を聞くセミナーとは異なり、各契約を検討する上での「思考法・仕事術」などの
実践的な能力を習得出来るのが特徴です。

【講師からケースの説明】→【グループディスカッション】→【各グループの発表】→【講師レビュー】

★「体験講座」(2月15日開催)の参加者の声★
・書籍等では実務に近い情報が無い為、講座で具体的なケースを想定し仕事の進め方を理解出来てる内容がとてもよかったです。
・少人数で法務業務を担当している為、自分自身の経験、知識、感覚で仕事をしてしまう事が多く、
法務業務をする上で大事な思考のフレームワークを学べて良かったです。
・講義内容はもちろんですが、他社の法務担当の意見を聞く事が出来て、とても参考になりました。

★今回のテーマ★
「組織再編 会社分割」
・債務超過の状態にある、米国の職業紹介会社の日本法人が、事業許可の更新のために充足すべき資産要件について、いかなる方法でこれを充たすかを、組織再編の手法を用いて検討します。
・上記事案をベースに、組織再編を進めるための、法務部門の関連ファンクション(社長室・経理財務部・人事部・広報部等)との協力体制の築き方・動き方について検討します。
※ こちらで事前課題を用意し、受講前にケース理解を深めていただきます。
※ 本講座は「リーガルビジネススクール 国際法務担当者育成コース(全六回)」の第四回講座を兼ねております。そのため、そちらの申込者と一緒に本講座を受講いただく形となります。
申込・詳細はコチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

日清製粉グループ、オセアニアへ進出... 事案の概要 日清製粉グループ本社は、子会社の日清製粉と共に、オーストラリアの食品大手グッドマン・フィールダーから、ニュージーランドの製粉子会社チャンピオン製粉を買収する。日系の製粉会社としてオセアニア市場に進出するのは初めてである。 日清製粉が2012年12月中に現地で設立する新会社が事業を引き...
世界のたばこ大手4社 豪州で敗訴 パッケージ規制訴訟... 概要 オーストラリア連邦最高裁は15日、国内で販売されるたばこのパッケージから宣伝色を一掃させるとした世界初の反喫煙法をめぐり、知的所有権の侵害などを主張して法律の無効確認を求めていた日本たばこ産業(JT)の海外子会社など世界の大手たばこメーカー4社の訴えを退け、違憲性はないとする判決を言い渡した...
迷惑メール、企業に是正命令 事案の概要 消費者庁及び総務省は今月2日、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(以下、特定電子メール法)に違反したとして、株式会社福田(神戸市中央区)に対して、同法に基づく措置命令を行った。 特定電子メール法は原則として、送信者が営利を目的として、広告や宣伝を行う電子メールを送信する場合に...