契約期間の定めについての問題点

1.はじめに

 契約期間の定めは、事業の担当者で決めるべきとの認識があるため、企業の法務部員の目が行きにくいものです。しかしながら、契約期間の定めは、継続的契約においてはとりわけ重要な法的要素にもなるし、紛争の原因ともなりかねない重要なファクターでもあります。そこで、契約期間の定めについて、特に継続的契約につけられることが多い自動更新特約との関係で問題になりやすい「継続的契約の終了の制限の法理」と契約期間の定めがあるだけでは解決できない「委任契約における任意解除権」の2つが大きな紛争の要因となりやすいと思われるので、以下、これらの問題に焦点を当ててみていきたいと思います。

2.継続的契約終了の制限の法理

(1) 継続的契約終了の法理とは
 当該法理は、一方当事者が契約を終了しようとした場合において、契約終了の要件を満たしたとしても、正当な事由等が認められない限り、契約の終了は認められないとする法理です。正当な事由等とは、自動更新特約により契約継続の期待があるとき、相手方が契約の長期継続を前提として事業計画を立てたとき、契約打ち切りで不測の損害を相手方に生じさせたときなどが考えられています。
(2) 問題点
 契約期間満了で契約が終了するはずが、契約の終了、更新の拒絶が認められず、契約を更新しなければならないことがあります。
(3) 対応
 まず、契約期間を、事業計画や投資などの取引の実態にあわせて適切な期間を定めることが挙げられます。このようにすると、取引の実態に合わせた継続的契約になるので、更新について期待を持ちにくいし、契約期間満了で関係を修了したとしても、相手方が不測の損害を被る可能性は低くなると考えられます。また、自動更新特約はその存在自体で契約更新の期待をもたせる可能性もあるので、この特約自体をつけず、更新の際には、当事者同士で取引実態を改めて見直し、新たに契約を締結することも対応の一つとして挙げられます。しかしながら、いちいち契約を見直して更新するとなると柔軟性が失われ、手間な場合もあるので、そのような場合には、自動更新特約を認めつつも、更新終了についての相当の予告期間、損失補償の定めを設けることで対応することも考えられます。

3.委任契約における任意解除権

(1) 任意解除権
 任意解除権を放棄したという事情がない限り、民法651条により、各当事者はいつでも委任契約を解除することができてしまいます。
(2) 問題点
 本来、契約期間の定めがあると、相手方の債務不履行や特約がない限り、契約途中で解除をすることはできないのに、民法561条によって簡単に契約解除がされてしまうおそれがあります。このとき、契約の期間の定めがあるだけでは任意解除権を放棄したとは評価されないおそれがあるので、別に対応を考える必要があると思われます。
(2) 対応
 まず、民法651条は任意規定であるから、当事者の合意で排除することができるので、契約段階で、中途解約できないことを明記しておくことが挙げられます。また、中途解除を認める場合には、後の紛争を予防するために解約金の定めをしっかりと決めておくという対応が考えられます。具体的には、受任者は解約までに完成した成果物を引き渡し、その結果に応じた報酬を受け取れるようにするなど、改正民法の「過分な部分の給付」「委任者の受けた利益」(改正民法648条の2第2項、634条)を具体化する規定を設けることが挙げられます。

4. 法務部員としての対応

 以上のように、契約期間の定めについては、事業担当者の都合だけで安易に決められるものではなく、後に紛争を起こす原因を多分に含んでいる要素であると言えます。したがって法務部員は契約書審査の際には、契約期間の定めについて、後にどんな紛争が起こる可能性があるかを予測しながら注意を払う必要があると思われます。

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[著者情報] maekawa

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2005年東京大学法学部第一類卒業
2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
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編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年),『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年),『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など,著作・論文多数


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