JPHDが株主からの役員選任提案を受領、社外取締役について

はじめに

保育サービス大手のJPホールディングスは9日、来月開催予定の定時株主総会に向けて株主から取締役選任に関する株主提案を受領していた旨発表しました。提案されている取締役のうち4人は社外取締役とのことです。今回は定時株主総会の季節に備え、社外取締役について見直していきたいと思います。

社外取締役とは

日本の企業の役員は従来から長年勤めあげた功績のある者から選ばれており、それゆえに馴れ合いが生じ本来の業務執行の監査・監督が機能していないと言われてまいりました。この点は欧米からも指摘されてきており、バブル崩壊後に取締役のガバナンス強化を目的として導入されたのが社外取締役の制度です。社外からの目を入れることによって法令や定款違反などの不祥事を事前に防止することが期待できます。

社外取締役が必要な場合

会社法上、社外取締役が要求されるのは①特別取締役による議決の定めを置いている場合、②監査等委員会設置会社である場合、③指名委員会等設置会社である場合となります。そして社外取締役である旨の登記が必要な場合もこの3つに限定されます(911条3項21号、22号、25号)。特別取締役とは本来取締役会で决定すべき重要な財産の処分、譲受けと多額の借財に関して、その决定の委任を受けることができる取締役を言います(373条)。また公開会社であり大会社であって監査役を置いており、金商法上有価証券報告書の提出義務を負っている会社は、社外取締役を置かない場合はその理由を定時株主総会で説明しなくてはなりません(327条の2)。そして会社法とは別にコーポレートガバナンス・コードでも上場会社は社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきとしています。

社外取締役の要件

①社外取締役の要件としてまず、今現在その会社と子会社の業務執行取締役、執行役、支配人、使用人でないことが必要です。会計参与は含まれません。これらは業務執行取締役等と呼ばれます(2条15号イ)。そして過去10年間、その会社と子会社の業務執行取締役等でなかったことも必要です。

②そして次に、過去10年間、上記業務執行取締役等ではない取締役、会計参与、監査役であったことがある者である場合には、その者が就任する前の10年間で業務執行取締役等に就任していなかったことが必要です。

③上記の者に該当しなくても、親会社の取締役、執行役、支配人、使用人である場合は社外取締役にはなれません。またその会社の株式を50%を超えて取得している、いわゆる親会社の要件を満たす場合も不可とされます。

④そしてその会社の親会社を同じくする会社、いわゆる兄弟会社で業務執行取締役等に就任している場合にも社外取締役にはなれません。逆に業務執行取締役等でなければ兼任することが可能です。つまり兄弟会社両方の社外取締役に就任することはできます。

⑤最後にその会社の取締役、執行役、支配人、その他重要な使用人、または株式を50%を超えて取得している者の配偶者、2親等内の親族でないことが必要です。この親族には姻族も含まれますので、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹も不可となります。

コメント

近年コンプライアンスとガバナンスの強化のため、社外取締役の採用が推奨されております。コーポレートガバナンス・コードでも2名以上選任すべきとしており、また東京証券取引所の上場規定でも1名以上確保するよう務めなければならないとしています。それを受け、現在上場している大会社の99%は社外取締役を置いていると言われております。上記のように社外取締役の要件は26年改正以後かなり厳格なものとなっており、社外取締役を確保することは容易ではありません。しかし社外取締役を置くことによって外部の人間の目を入れ、風通しのよう経営陣であると評価され、投資家からも好意的に判断されるものと言えます。しかし一方で社外取締役はあくまでコンプライアンス、ガバナンス体制の一環に過ぎず、それを置いているからと安心はできません。社外取締役も含めた有機的なガバナンス体制の構築を心がけていくことが重要と言えるでしょう。

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

法務ニュース 総会対応 会社法
第99回MSサロン(名古屋会場)
2018年06月20日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「秘密保持契約 ~ その作成・交渉の実務及び英文となった場合の留意点」です。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース 総会対応 会社法
第98回MSサロン(大阪会場)
2018年06月13日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
大阪府大阪市北区
講師情報
河端 直 根本 俊太郎
■河端 直
経歴
2013年(平成25年)11月
司法研修所入所(67期)
2014年(平成26年)12月
大阪弁護士会に弁護士登録 なにわ共同法律事務所入所

著書
野村剛司編「法人破産申立て実践マニュアル」(青林書院)(共著)
スポーツ問題研究会編「Q&Aスポーツの法律問題」(民事法研究会)(共著)

■根本 俊太郎
経歴
2004年(平成16年)4月
株式会社朝日新聞社入社(記者職)
2016年(平成28年)11月
司法研修所入所(70期)
2017年(平成29年)12月
大阪弁護士会に弁護士登録 なにわ共同法律事務所入所
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「民法改正への対応」です。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース 総会対応 会社法
【名古屋】システム開発におけるトラブル発生時の対応《ITビジネス法務勉強会:第2回》
2018年07月12日(木)
15:00 ~ 17:00
3,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
田代 洋介
略歴:
愛知県名古屋市出身
2010年 静岡大学人文学部法学科卒業
2013年 南山大学法科大学院法務研究科修了
2014年 弁護士登録(67期 愛知県弁護士会)
川上・原法律事務所入所
2017年 オリンピア法律事務所 アソシエイト
ITに関する法律を学び、ビジネスに活かしていただくためのITビジネス法務セミナーです。第2回目のテーマはシステム開発におけるトラブル発生時の対応です。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース 総会対応 会社法
【名古屋】準拠法条項/裁判・仲裁条項《法務担当者のための英文契約セミナー:第2回》
2018年05月30日(水)
15:00 ~ 17:00
8,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田 圭介
略歴:
愛知県春日井市出身
愛知県立旭丘高校卒業
2004年 京都大学法学部卒業
2005年 弁護士登録(58期 第二東京弁護士会)
クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業入所
2008年 フランス系ラグジュアリーブランド日本支社(出向)
2010年 アメリカ、Duke University School of Law(法学部)LLM卒業
2010年 クリフォードチャンス香港オフィス(出向)
2011年 日系の大手財閥系総合商社のイギリス子会社の法務部(出向)
2013年 ニューヨーク州弁護士登録
2015年 IBS法律事務所開設(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー
英文契約をこれから担当・現在担当している法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第2回目のセミナー内容は準拠法条項/裁判・仲裁条項です。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース 総会対応 会社法
【名古屋】国際取引契約(英文契約)審査の基礎《法務担当者のための各分野の重要法務セミナー:第2回》
2018年05月29日(火)
15:00 ~ 17:00
8,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
各弁護士が日常の実務経験の中でご質問を受けることの多いトピックについてのセミナーです。今回のセミナー内容は国際取引契約(英文契約)審査の基礎です。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース 総会対応 会社法
【名古屋】債権保全・回収《初めての法務部から不祥事対応まで 基礎セミナー:第3回》
2018年06月06日(水)
14:00 ~ 17:00
10,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
川上 敦子 石井 大輔
■川上 敦子
略歴:
大阪教育大学附属高等学校卒業
1980年 京都大学法学部卒業
1982年 弁護士登録(34期 愛知県弁護士会)
青山法律事務所入所
1988年 川上法律事務所パートナー
2010年 川上・原法律事務所に名称変更
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー

■石井 大輔
略歴:
静岡県三島市出身
静岡県立沼津東高校普通科卒業
2011年 同志社大学法学部法律学科早期卒業
2014年 名古屋大学法科大学院未修コース修了
2015年 弁護士登録(68期愛知県弁護士会)
川上・原法律事務所入所
2017年 オリンピア法律事務所 アソシエイト
新規配属法務担当者の方・実務対応はしているものの不安がある法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第3回目のテーマは債権保全・回収です。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

飲料業界、消費税価格転嫁カルテル申請へ... 事案の概要  清涼飲料工業会は、来春の消費増税に対する措置として、公正取引委員会に対し、商品の本体価格に増税分を上乗せすることを業界内で申し合わせる「価格転嫁カルテル」の申請をする方針である。  平成26年4月に消費税が5%から8%に引き上げられるのに伴い、スーパーなど流通各社に対し納品する価格...
株主総会レポート GMOインターネット株式会社 その5... GMOインターネット株式会社 「すべての人にインターネット」 はじめに 引き続き、GMOインターネット株式会社 第21期定時株主総会のレポートを書いていきます。GMOインターネット株式会社第21期定時株主総会のレポートは今回で最後となります。 議案の採決 次に議案についての決議を行い...
公取委委員長空白期間最長に 事案の概要 衆議院の16日解散を控え、政府が今国会でも人事案の提示を見送るため、衆参両議院の同意が必要な公正取引委員会の委員長が年明けまで不在となる見通しとなった。年内に新委員長が決まらなければ、空白期間は最長になる。 公正取引委員会は竹島一彦前委員長が9月26日に退任してから、委員長の不在期...