「ジャパンライフ」を提訴へ、預託商法規制について

はじめに

磁気グッズの預託商法を展開し、倒産した「ジャパンライフ」(千代田区)に対し、愛知県の複数の契約者が損害賠償を求めて来月にも提訴する方針であることがわかりました。負債総額は2400億円以上とされます。今回は預託商法に対する特定商品預託法(預託法)の規制について見ていきます。

事件の概要

 
報道などによりますと、ジャパンライフは「レンタルオーナー契約」と称して磁気グッズを数百万円で販売し、顧客がその商品を同社に預けて別の客に貸与し、顧客に対しては賃借料を支払う預託商法を展開していたとされます。契約時に元本や差額の返金を確約していたとされ、昨年7月末時点で約1700人と計約1700億円の契約を締結していたとのことです。しかし消費者庁の調べによりますと、実際には現物商品がほとんど無く、レンタルの実体も存在せず、また巨額の債務超過に陥っていたとされ、備え置き書類の不備等、預託法や特定商取引法違反事実も発覚しており、4回に渡って業務停止命令が出されております。同社は昨年12月26日に2度目の不渡りを出し事実上倒産しております。原告側弁護団は詐欺罪や特商法違反に当たるとして愛知県警に告発状を提出しているとのことです。

預託商法に対する規制

預託商法とは動物の飼育や土地開発などの事業を専門家に委託し、それによる利益を分配することを名目として出資を募る商法を言います。しかし実際には専門家への委託や運用などが適切に行われず、出資者への配当や返金が、新たな出資者からの出資によって賄われる、いわゆる自転車操業的な経営が行われていることが多く、最終的には倒産にいたって多くの出資者に損害を被らせることとなります。特定商品預託法(預託法)はこういった被害から出資者を保護する目的で1986年に制定されました。預託法では書面の交付義務、不当行為の禁止などの規定が置かれております。また預託商法は特定商取引法の規定も適用されることになります。

預託法による規制

(1)書面交付義務
預託取引業者は、預託契約を締結するまでに顧客に対して契約内容やその履行に関する事項、預託業者の業務、財産状況に関する事項を記載した書面を交付しなければなりません(3条1項)。具体的には業者の氏名・名称・住所、商品の種類・価額、預託期間、配当の額・算定方法、手数料、解約方法、賠償額の予定等、また業務財産状況については業務の開始時期、貸借対照表、損益計算書等の計算書類、月次保有状況などが挙げられます(施行規則3条1項、2項各号)。

(2)事実告知
預託取引業者は契約勧誘の際に「顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」について故意に事実を告げなかったり、不実のことを告げる行為が禁止されます(4条1項)。また顧客が契約を解除することを妨げるために行う場合も同様です(同2項)。具体的には目的商品の価額およびその変動、配当額とその変動、目的商品の保有状況、目的商品の名称、所在、規模などに関して実際とは異なる事実を告げたり、故意に伏せておくことが禁止されます(施行令3条各号)。

(3)不当行為の禁止
預託業者は契約締結、更新の際に、または契約解除を妨げる目的で「威迫する言動」を行ってなりません(5条1号)。また預託契約による債務や解除によって生じる債務の履行を拒否したり、不当に遅延することも禁止されます(同2号)。

(4)書面の備え置き
預託取引業者は業務状況、財産状況を記載した書面を事業所に備え置き、顧客等の求めに応じて閲覧させる必要があります(6条)。具体的には事業年度ごとに施行規則の様式第8に則って作成した財産書類を事業年度経過後3ヶ月以内に、また1月ごとに月次保有状況を様式第9により作成し翌月の10日までに備え置く必要があります(施行規則5条1項1号イ、ロ)。

(5)クーリングオフ
顧客は契約締結時に交付される書面(3条2項)を受け取った日から14日以内に契約を解除することができます(8条1項)。契約解除は書面で行ない、顧客が書面を発送した時点で効力が生じます(同2項)。契約解除にともなって顧客に返還等を行う必要がある場合に、その費用は預託取引業者が負担することになります(同3項)。またこれらの規定を排除する特約は無効となります(同4項)。14日のクーリングオフ期間が過ぎても、顧客は中途解除することができます(9条1項)。この場合に損害賠償額の予定等があったとしても、契約目的物の価額の10%に相当する額を超えて顧客に請求することはできません(同2項)。またこれも同様に排除特約は無効となります(同3項)。

特定商取引法による規制

特定商取引法では「連載販売取引」関する規定が置かれております。連鎖販売取引とは特定の物品等の販売につき、他の者をあっせんすると利益が得られるなどと言って誘引する取引を言います。いわゆるマルチ商法のことです。この連鎖販売取引についても不実告知による勧誘の禁止や誇大広告の禁止、書面交付義務、クーリングオフなどが規定されております(34条、35条、36条等)。預託商法も場合によってはこの連鎖販売取引の性質を伴う場合があり、別途特商法に抵触することがあります。

コメント

消費者庁の発表によりますと、本件でジャパンライフが行政処分を受けた理由は、預託法に関しては書類の備え置き義務違反等であるとのことですが、別途特商法違反として勧誘目的不明示、事実不告知、契約書面交付義務違反、解除妨害が挙げられております。知人を紹介すれば利益の一部を受け取れる等の勧誘を行っていたとされており、その点が特商法適用事由に該当したと考えられます。また会社法に基づいて公正妥当な会計監査を受けた書面が備え置かれていなかった点が預託法違反とされております。以上のように一定の事業を委託することを目的として出資を募る預託商法は、多くの出資者から多額の資金が集められることから、各種法律によって厳格に規制されており、罰則も存在します。また当初から想定されている配当や返金が不可能であることがわかっていながら勧誘した場合には詐欺罪に該当する場合もあり、実刑例も存在します。どのような場合に法が適用される預託商法や連鎖販売に該当するかを正確に把握し、必要な備え置き書類の具備などを行うことが重要と言えるでしょう。

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

企業 法務ニュース コンプライアンス 特定商取引法
第99回MSサロン(名古屋会場)
2018年06月20日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「秘密保持契約 ~ その作成・交渉の実務及び英文となった場合の留意点」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
企業 法務ニュース コンプライアンス 特定商取引法
第100回MSサロン(東京会場)
2018年07月06日(金)
19:00 ~ 21:00
2,000円
東京都新宿区
講師情報
岡 伸夫
1992年 京都大学法学部卒業
1994年 大阪弁護士会 登録 梅ケ枝中央法律事務所 
2000年 ハーバードロースクール 修士課程(LL.M)卒業
Masuda Funai Eifert & Mitchell 法律事務所(シカゴ)
2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー    
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設

弁護士会活動(2018年2月現在)
日本弁護士連合会 ひまわりキャリアサポート 委員
第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員 

企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士

主な著書
「アメリカのP&A取引と連邦預金保険公社の保護 債権管理 No.96」金融財政事情研究会
「米国インターネット法 最新の判例と法律に見る論点」ジェトロ 共著
「Q&A 災害をめぐる法律と税務」新日本法規 共著
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「GDPR施行後の取引実務」です。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース コンプライアンス 特定商取引法
【名古屋】人事・労務管理《初めての法務部から不祥事対応まで 基礎セミナー:第4回》
2018年06月20日(水)
14:00 ~ 17:00
10,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
竹内 千賀子 杉谷 聡
■竹内 千賀子
略歴:
愛知県一宮市出身
愛知県立一宮高校卒業
1998年 名古屋大学法学部法律学科卒業
1998年 一宮市役所入職(2001年3月まで)
2006年 弁護士登録(59期 東京弁護士会)
奧野総合法律事務所入所
2009年 日本証券業協会法務部(出向) 
2013年 せいりん総合法律事務所 パートナー(独立)
愛知県弁護士会に登録換え
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー

■杉谷 聡
略歴:
愛知県一宮市出身
愛知県立一宮高等学校卒業
2016年 一橋大学法学部卒業
2017年 弁護士登録(70期 愛知県弁護士会)
オリンピア法律事務所入所
新規配属法務担当者の方・実務対応はしているものの不安がある法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第4回目のテーマは人事・労務管理です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
企業 法務ニュース コンプライアンス 特定商取引法
【名古屋】広告関連法の基礎《法務担当者のための各分野の重要法務セミナー:第5回》
2018年06月22日(金)
15:00 ~ 17:00
2,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
田代 洋介
略歴:
愛知県名古屋市出身
2010年 静岡大学人文学部法学科卒業
2013年 南山大学法科大学院法務研究科修了
2014年 弁護士登録(67期 愛知県弁護士会)
川上・原法律事務所入所
2017年 オリンピア法律事務所 アソシエイト
各弁護士が日常の実務経験の中でご質問を受けることの多いトピックについてのセミナーです。今回のセミナー内容は広告関連法の基礎です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
企業 法務ニュース コンプライアンス 特定商取引法
【名古屋】サービス契約《法務担当者のための英文契約セミナー:第4回》
2018年06月27日(水)
15:00 ~ 17:00
8,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
英文契約をこれから担当・現在担当している法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第4回目のセミナー内容はサービス契約です。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース コンプライアンス 特定商取引法
『企業法務イングリッシュ・コミュニケーション』~企業法務パーソンのための実践英語コミュ力アップ講座!~
2018年07月03日(火)
13:30 ~ 16:00
15,000円(税込)
東京都新宿区
講師情報
登島 和弘
サイネオス・ヘルス合同会社
アジア太平洋地域法務責任者
*7月1日付にてインヴェンティヴ・ヘルス・ジャパン合同会社より社名変更予定

1961年神戸市生まれ
中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、日本AT&T㈱(米系)契約課長、松下冷機株式会社法務室主事、
セジデム株式会社(仏系)コーポレートサービス部統括部長・法務部長兼任等、を歴任し、現職。
*企業名は当時のまま。
※日本企業・外資系企業双方で通算30年以上の企業法務・国際法務の経験を有する現役の企業法務責任者です。
当社は、東京にて、企業法務パーソン(企業法務担当者・インハウスローヤー等)のためのビジネススクールを運営しています。
企業法務にまつわる「知識」を学ぶ研修・講座は世の中に数多くありますが、当社が運営するリーガルビジネススクール(LBS)は、
法務担当者としての「思考方法」や「仕事術」を学ぶことに焦点を当てています。

今回は、『企業法務イングリッシュ・コミュニケーション』講座を開催いたします。

日本企業・外資系企業を問わず、英語によるコミュニケーションが不可欠な時代。
しかし、残念ながら、企業法務パーソンのみなさんが実際のビジネスシーンで望まれる
適切な英語によるコミュニケーションの取り方にフォーカスした講座はあまりお目にかかりません。

この講座では、現役の外資系企業法務責任者が、ビジネスと企業法務の両方の目線から、
次の日から現場で使える英語による適切な企業法務コミュニケーション術を余すところなくお伝えします。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

三菱重工ウイルスに感染!50種超!APT (Advanced Persistent Threat)攻... 内容 1.内容 国防分野や、エネルギー、宇宙関連など様々な分野で,高い技術力を誇る、重工業メーカーの「三菱重工、」(本社東京)がAPT(advanced persistent threat)というサイバー攻撃を受けた。サイバー攻撃によって、11カ所のサーバーの,83台のパソコンがウイルスに感染し...
羽田の航空管制官、エアフォースワンの飛行計画情報を漏えい。... 羽田の航空管制官、エアフォースワンの飛行計画情報を漏えい。 羽田空港の50代の男性航空管制官が、アメリカ・オバマ大統領の専用機、通称「エアフォースワン」の飛行計画情報をインターネット上に流出させていたことが判明した。 男性管制官は、オバマ大統領が来日した際のフライトプラン等をコンピューター端末から...
明治安田生命 一般職を廃止、地域限定総合職として登用... 事案の概要 明治安田生命は2017年4月までに一般職を廃止しすることを決めた。これに代わって転勤のない地域限定の総合職として登用する。一般職は女性が中心で約3100人おり、事務全般に従事していたところ、総合職として職務の幅を広げ、賃金や昇格といった処遇体型も地域型の総合職に一本化するという。同社...