大企業に相次ぐ不祥事とカビ型行為

イントロダクション

 昨今、大企業による、検査の偽装やデータの改ざんといった不祥事が相次いでおり、これらの問題に共通するのは、組織内で、不正行為が、長期間にわたって恒常化し、広範囲に蔓延している点です。弁護士の郷原信郎氏は、こうした時間的・場所的な拡がりを持った不正行為を、カビ型行為と呼び、日本の企業不祥事の特質として指摘しています。今回は、この日本の企業不祥事の特質としてのカビ型行為について、ご紹介したいと思います。

カビ型行為について

 カビ型行為は、組織内で、不正行為が長期間にわたって恒常化し、広範囲に蔓延している、時間的・場所的な拡がりを持った行為で、個人の利益のためにやっているのではなく、組織の利益のためにやっていることに特徴があり、通常のコンプライアンス対応では発見が困難で、自浄作用を働かせるのが難しいといわれています。

一般的なコンプライアンス対応について

 社員が行う犯罪の予防手段としては、一般的に、
①内部統制システム構築・強化
②内部通報制度の導入・活用
③内部監査における不正リスク対応
④研修等による役職員のコンプライアンス意識の向上等
といったことが行われています。

カビ型行為に対する一般的なコンプライアンス対応の問題

 これらの予防手段に対して、カビ型行為の場合、①内部統制システムの構築・強化については、内部統制システムを厳格化し、形式的に法令を守らせることで、実態と乖離した法令を遵守させた結果として、適切な検査を行っていないにもかかわらず、適切な検査を行ったものとして報告したり、基準に適合していないデータを基準に適合したデータへと改ざんしたりするといった不祥事が相次いでいるという見方もできます。
 また、②内部通報は、社員個人の積極的なアクションが必要とされるため、セクハラ、パワハラ、服務規程違反といった個人動機の申告が多く、カビ型行為の様な個人を超えた組織的な問題は通報になじみにくいという問題があります。
 そして、③内部監査は、意図的に隠蔽された行為を発見するようなものにはなっておらず、また、長期間にわたって、多くの役職員が関与しているカビ型行為の問題行為の場合、企業内の一組織に過ぎない内部監査部門が問題を指摘することは容易ではないという問題があります。
 さらに、④役職員のコンプライアンスの意識を向上させることで一定の犯罪抑止効果を見込むことはできるものと考えられます。しかしながら、役職員一人一人がコンプライアンス意識を高めたとしても、一部の役職員が犯罪行為を行っているのを他の役職員が薄々認識していても、それを指摘することによる人事上の不利益等を恐れて、黙認するような消極的な企業風土では、コンプライアンス研修等の効果を上げることは難しいという問題もあります。

まとめ

 以上見てきましたように、カビ型行為については、内部統制の強化による対応が難しく、また、問題行為に関わっている社員から情報を得る以外に、「カビ型行為」の手掛かりを得ることが非常に難しいという問題があります。
 これに対応するためには、㋐役職員に対し、何のために法令を守るのかを含めたコンプライアンス意識の向上を図ること、㋑役職員が自分の担当業務に対するやりがいや組織自体に誇りを持つことができるような職場環境を形成し、誠実に行動することのインセンティブを高め、良好な人間関係を構築し、組織としての連帯感を醸成すること、㋒コンプライアンス上問題がある行為について、会社に情報を提供し、その改善機会を作ることが会社にとって有益であるという認識を広げ、そうした情報を提供する機会と仕組みを社員に対して提供していくことが大切と考えられます。

参考記事

日産、神戸製鋼、相次ぐ不祥事が示す「カビ型」行為の恐ろしさ
「カビ型行為」こそが企業不祥事の「問題の核心」
「カビ型行為」対策の切り札、”問題発掘型アンケート調査”
「カビ型違法行為」の恐ろしさ

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略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
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元ITエンジニア・ライター。

東証一部上場企業からシードステージのベンチャーまで、約60社の顧問弁護士等、イースター株式会社の代表取締役、株式会社KPIソリューションズの監査役、株式会社BearTailの最高法務責任者などを務める。JAPAN MENSA会員
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01年東京大学法学部卒業
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13年ニューヨーク州弁護士登録、英国University College London卒業(LL.M.)
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著作に『仕事でよく使う・すぐに応用できるビジネス契約書作成ガイド』(共著)(清文社、2017)、『実務Q&Aシリーズ 懲戒処分・解雇』(共著)(労務行政、2017)等がある。

■荻野聡之
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/アソシエイト弁護士

03年東京大学法学部卒業
06年東京大学法科大学院卒業(法務博士(専門職))
08年弁護士登録
労働法、危機管理、事業再生等の法分野に関する業務を中心に取り扱っている。
著作に『企業のための労働実務ガイド1 Q&Aと書式 解雇・退職』(共著)(商事法務、2013)、『労使双方の視点で考える 27のケースから学ぶ労働事件解決の実務』(共著)(日本法令、2015)、『M&Aにおける労働法務DDのポイント』(共著)(商事法務、2017年)等がある。

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1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。

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