積立解約手数料「有効」判決、消費者契約法の規制について

はじめに

冠婚葬祭費積み立ての中途解約に際し、多額の手数料を取る契約条項は無効であるとして福岡市の消費者団体が日本セレモニーに対し差止を求めていた訴訟の上告審で18日、団体側敗訴の決定が言い渡されました。今回は解約手数料に関する消費者契約法上の規制について見ていきます。

事件の概要

日本セレモニー(山口県)は冠婚葬祭のための費用を積み立てる、いわゆる互助会契約を多くの消費者と締結しておりました。契約にはいくつかのコースがあり、総額約9万円~24万円を90回~120回に分けて、月々千円から2千円払い込む方式となっており、加入から180日以上経過し、かつ6回以上払込を行った以降は加入者の冠婚葬祭に合わせて日本セレモニーの役務サービスを受けられるという内容でした。日本セレモニーの約款によりますと、契約を中途解約する場合には解約手数料が生じることになっており、支払回数に応じて額が変動することになります。コースによりますが支払回数が8回~10回までの場合は払込金全額が手数料として差し引かれ、それ以上の場合でも約15000円前後が差し引かれることになっております。これを受け適格消費者団体の一つであるNPO法人、消費者支援機構福岡(CSOふくおか)は途中解約で会社に損害は生じておらず解約金を取る契約条項は違法であるとして契約条項の差止めを求める訴えを2012年12月に福岡地裁におこしておりました。

消費者契約法上の規制

消費者契約法9条1号によりますと、「消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える」「消費者契約の条項」は「超える部分」について「無効」とするとしています。つまり同種の契約で途中解約につき通常生じる平均的な損害額を超える部分については、その条項は無効というわけです。これは事業者に比して情報量や交渉力等で不利な立場にある消費者を保護するという消費者契約法の目的に則り、事業者から法外な違約金等を請求されないよう契約条項について規制したものです。そして適格消費者団体はこの規定に違反する契約条項のある契約が締結され、又は締結されるおそれがある場合には停止や予防、その他必要な措置を取ることを請求することができます(差止請求権 12条3項)。なお民法・商法以外の法律、例えば特定商取引法や割賦販売法等に別段の定めがある場合には適用除外となります(11条)。

「事業者に生ずべき平均的な損害の額」とは

では消費者契約法上認められる「事業者に生ずべき平均的な損害の額」とはどのようなものでしょうか。一般的には同一事業者が締結する多数の同種契約について類型的に算定される平均的な損害額とされており、裁判例によりますと解除事由、時期その他契約の特殊性、逸失利益、準備費用、利益率等損害の内容、契約の代替可能性等の諸事情に照らして判断すべきとされております。つまりは事業者に生じる実損であって、一般的に同種契約の締結・履行のために必要な費用(必要経費)を想定されております。ちなみにこの平均的な損害の額についての立証責任は、下級審裁判例では消費者保護という法の目的や情報力の偏在から事業者側に有るとするもの存在しますが、最高裁は条項の無効を主張する消費者側に有るとしています。

コメント

本件で日本セレモニーは互助会契約の会員の募集や管理等に多額の費用がかかっており、これらの費用が「平均的な損害」含まれると主張しております。これに対して一審福岡地裁は、募集や管理費といった人件費は個々の会員との契約ではなく、他の会員や顧客との関係でも生じる一般的な費用に過ぎず本件での平均的な損害には含まれないとしました。二審名古屋高裁は一転、会員の募集に要する人件費は当該会員を獲得するための費用というべきであるから平均的な損害に含まれるべきとしました。それ以外にも営業用建物の使用料やパンフレット作成費等も広く必要経費に該当し平均的な損害に含まれるとしました。最高裁も高裁判決を支持し上告棄却としました。9条1号が問題となった他の事例としては、授業が開始される前に前納された大学の授業料、契約翌日に解約したウェディングドレスレンタル料の全額、まだ確保していなかった中古車販売契約の解約料等に関して平均的な損害を超えるものとして無効とする判決が出ております。本件での最高裁判決で必要経費についてはある程度広く認定され平均的な損害に含まれると判断できると言えます。しかし他方で事業者側の実損とは言えない違約金的な意味合いを有する金銭については裁判所は基本的には認めない傾向にあると考えられます。以上の判例裁判例を参考に契約約款等で定めた解約手数料は有効であるかを見直すことが重要ではないでしょうか。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約3年1ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

法務ニュース 訴訟行政 契約法務 消費者契約法
《東京会場》少人数でも課題克服!総合的法務機能 アップ講座 第6回(全8回)不祥事・紛争対応
2019年11月20日(水)
15:00 ~ 18:00
22,000円(税込)※消費税10%
東京都港区
講師情報
田代 啓史郎
TMI総合法律事務所 パートナー弁護士

2003年 一橋大学法学部法律学科卒業
2004年 最高裁判所司法研修所入所
2005年 第一東京弁護士会登録 TMI総合法律事務所勤務
2013年 デューク大学ロースクール卒業(LL.M.)
2013年 ロサンゼルスのクイン・エマニュエル・アークハート・サリバン法律事務所勤務
2014年 ニューヨーク州弁護士資格取得
2014年 TMI総合法律事務所復帰
2017年 パートナー就任

主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
技術革新やグローバル化が進み、ビジネスを取り巻く環境や法規制が大きく変わってきています。
部員が1人ないし数人というような中小規模の法務部では、この流れを常にフォローアップするには人的に限界があるため、各法分野の専門家とのネットワークを作り、タイムリーに外部に依頼できる体制を構築することが不可欠です。
本講座は、そのような法務部の方を対象に、最新の法律実務を解説するとともに、どのように法務機能を充実していったらよいかを一緒に議論していく講座です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
契約法務
《東京会場》少人数でも課題克服!総合的法務機能 アップ講座 第8回(全8回)民法改正対応
2020年01月29日(水)
15:00 ~ 18:00
22,000円(税込)※消費税10%
東京都港区
講師情報
滝 琢磨
TMI総合法律事務所 パートナー弁護士

2002年 中央大学法学部法律学科卒業
2006年 最高裁判所司法研修所入所
2007年 第二東京弁護士会登録 TMI総合法律事務所勤務
2010年 金融庁総務企画局市場課勤務 (インサイダー取引・金商業規制・課徴金事案等を担当)
2013年 TMI総合法律事務所復帰
2016年 パートナー就任

主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
技術革新やグローバル化が進み、ビジネスを取り巻く環境や法規制が大きく変わってきています。
部員が1人ないし数人というような中小規模の法務部では、この流れを常にフォローアップするには人的に限界があるため、各法分野の専門家とのネットワークを作り、タイムリーに外部に依頼できる体制を構築することが不可欠です。
本講座は、そのような法務部の方を対象に、最新の法律実務を解説するとともに、どのように法務機能を充実していったらよいかを一緒に議論していく講座です。
申込・詳細はコチラ
契約法務
《大阪会場》<午前>基礎から学ぶ英文契約書の読み方(初心者向け) <午後>今さら聞けない英文契約書作成・交渉(中級向け)※書籍付
2019年12月17日(火)
10:00 ~ 16:00
・午前の部(読み方):税込13,200円 ・午後の部(作成・交渉):税込15,400円※書籍代込み ・午後の部(作成・交渉):税込13,200円※書籍持参 ・午前/午後の部(読み方/作成・交渉): 税込25,300円※書籍代込み ・午前/午後の部(読み方/作成・交渉):税込23,100円※書籍持参
大阪府大阪市北区
講師情報
吉川 達夫
ニューヨーク州弁護士/米国IT会社法務部Contract Attorney

外資系法務本部長、駒澤大学法科大学院、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師
元Apple Japan法務本部長、元伊藤忠商事法務部、元Temple Law School日本校客員教授。上智大学法学部、Georgetown Univ. Law Center卒

編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
ニューヨーク州弁護士、法科大学院非常勤講師、数々の著書を執筆し、Apple, VMware, WeWork3社の外資系法務部長を経て、現在は米国IT会社法務部のContract Attorneyである吉川達夫氏を講師にお招きし、過去数年間にわたり毎年多くの方から東京ならびに大阪でご参加を頂いております「今さら聞けない英文契約書セミナー」を、 今回新たに午前に初心者向け「基礎から学ぶ英文契約書の読み方」と、午後に中級者向け「今さら聞けない英文契約書作成・交渉」として開催いたします。

午前の「基礎から学ぶ英文契約書の読み方」は、英文契約書を読んでみたい方、国際法務にこれから携わる方や弁護士の方、携わっているが改めて基礎を確認されたい方などご参加ください。
講義は英文契約書の読み方中心とします。
契約書プリントで代理店契約(Distributor Agreement)を使用します。

午後の「今さら聞けない英文契約書作成・交渉」は、国際法務の実務を担当されている方、多少の基礎知識はあるが自己流で勉強された方、弁護士の方、発展的な学習をされたい方などご参加ください。

このセミナーでは過去の「今更聞けない」シリーズの発展版となります。
なお、午後の部は講師著書の国際ビジネス法務(第2版)(第一法規株式会社/2018年3月発売/2,800円+税)を教科書として使用します。

午前、午後通しで参加ももちろん可能です。
申込・詳細はコチラ
契約法務
《東京会場》英国法弁護士と日本法弁護士から学ぶ ここだけは押さえたい 英文契約書の交渉・作成のポイント
2019年12月10日(火)
13:30 ~ 16:00
19,800円(税込)
東京都港区
講師情報
淵邊 善彦 アーロン・ペイシェンス
■淵邊 善彦
ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士

1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。

■アーロン・ペイシェンス
シモンズ&シモンズ外国法事務弁護士事務所代表 パートナー 外国法事務弁護士(英国法・ニュージーランド法)

10年以上日本に滞在、日本語が堪能で、TMT、ヘルスケア・ライフサイエンスを含む幅広い分野の、売却、買収、提携など、クロスボーダーM&Aを数多く手がけ、株式譲渡、事業譲渡、株主間契約、業務提携など、販売契約及びIPライセンスに関する契約書作成においても多数の案件実績を有する。
日本国内外の企業に対して、広範囲な法分野にわたる法的サービスを提供するチームのパートナーであり、TMT(テクノロジー、メディア及びテレコミュニ―ケーション)およびライフ・サイエンス分野のグループメンバー。

主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
英国法弁護士と日本法弁護士のそれぞれの立場から、英文契約書の基本的な考え方と実際の検討ポイントについて解説します。

英文契約書をレビューするためには、英米法の基本的な考え方とキーになる条項の理解が不可欠です。

本セミナーでは、日本法準拠の契約書と比較することによって、日本企業が陥りがちな問題点を解説するとともに、日本企業が苦手とする契約交渉において留意すべき点についても検討します。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

大田区、「Airbnb」を条例化 「民泊」とは  「民泊」とは、個人の家の空き部屋等を宿泊施設として貸し出すものである。海外では、インターネット上で宿泊希望者と部屋の提供者を繋ぐサービスである「Airbnb(エアビーアンドビー)」の使用が広がっており、宿泊先の選択肢の一つとなっている。「民泊」は、提供者としては余った部屋の有効活用...
制度発足から2年、法定相続情報証明制度について... 1.はじめに 各種金融機関や有価証券を取扱っている企業にとって、顧客の情報管理はとても慎重かつ丁寧な対応が求められます。 ましてや、顧客の複数名の相続となると相続に関する書類は、膨大となります。 企業の抱える相続案件といえば、具体的には、株式や投資信託における名義変更が挙げられます。 そのよ...
派遣法改正は派遣労働者の地位にどう影響するのか。... 派遣元企業が負う義務による影響  現行法において、派遣労働者の受入れ期限については、政令で定められたソフトウェア開発等の専門技術的な知識を要する「26業務」とそれ以外の業務とで期間が分かれている(26業務につき期限なし、それ以外は原則1年)。  改正案では業務内容を問わず、上限を3年とする共通のル...