死刑未執行、過去最多の120人。法相に執行を拒む権限はあるのか。

国会議事堂

死刑未執行、過去最多の120人。法相に執行を拒む権限はあるのか。

死刑が1年以上執行されず、未執行のまま拘置中の死刑囚が過去最多の120人に達している。前法相の千葉景子氏が死刑制度の存否について一石を投じる形で、死刑執行の「刑場」をマスコミに初公開してから、はや1年。
民主党政権下で法相がころころと変わる中で、死刑制度に対する国の指針はいまだに確定していない。その一方で、裁判員裁判では、一般国民が悩み苦しみながら、死刑という重い判断を下し続けている。

江田五月法相の言い分

江田五月法相は、死刑の執行について「悩ましい状況に悩みながら勉強している最中。悩んでいるときに執行とはならない」と発言。死刑の是非に対する自身の考えが固まっていないことを理由に死刑執行命令書へのサインを保留している。

死刑制度をめぐる現状

【1】死刑制度に疑問を投げかける法相
最後に死刑が執行されたのは、2010年7月28日。当時の法相である千葉景子氏は、同年8月6日に死刑の廃止も視野に死刑制度の在り方を研究する勉強会を省内に設置した。また、同年8月27日には東京拘置所内の刑場を報道陣に公開し、死刑制度に対する国民的な議論の契機となるよう働きかけた。

【2】裁判員裁判制度の開始と死刑判決
上述した最後の死刑執行以降、死刑が確定したのは16人。執行を待つ死刑囚は合わせて120人にのぼる。その間、裁判員裁判で8件の死刑判決が言い渡され、そのうち2件で死刑が確定している。

死刑執行において法相に与えられた権限

死刑の執行は法務大臣の命令がなければ出来ない。一方で、刑事訴訟法上、法務大臣は、(ⅰ)冤罪の疑いから再審請求等がなされている場合や(ⅱ)心神喪失の状態にある場合、(ⅲ)妊娠している場合等の特殊な場合を除き、
死刑判決から6ヶ月以内に死刑執行命令を下さなければならない。

雑感

1.死刑執行の猶予期間の持つ意味
刑事訴訟法の規定(判決から6ヶ月以内に死刑執行しろという規定)にも関わらず、死刑判決の確定から刑の執行までの平均期間は、7年11か月だという。死刑が人の命を奪う極刑であり、一旦執行されると回復が不可能な損害を与えることから執行命令に慎重になっていることの表れだろう。
一方で、死刑囚からすると、6ヶ月経過後は、いつ死刑執行命令が出されるかわからない極限の精神状況下で日々生活することを強いられるのであり、およそ、人をそのような精神状況に何年も置くこと自体が残酷な刑であるとも言える。

なお、この6ヶ月の期間につき、下級審では、「単なる訓示規定であって、法務大臣の死刑執行命令がこの期間を超えて行われても、不当な判断ではない」という内容の判断が下されている。

2.死刑制度に対する疑問から執行命令を下さないことの是非
現行の刑事訴訟法上、法務大臣が死刑執行命令を下すことを猶予出来るのは、冤罪払拭のための諸手続きの申立てがされている場合や心神喪失の場合、妊娠している場合等、一定の客観的(!)事実がある場合のみである。法務大臣の主観が介在する余地はないといっていい。

国家の法で死刑制度があり、それに基づき、裁判官、裁判員、検察官、弁護士その他多数の関係者がそれぞれ法に従い、死刑が妥当であるかを長い年月と膨大なエネルギーを投じて下す判断、それが「死刑判決」である。

法務大臣の主観として死刑制度に疑問があるからといった程度の理由で、法に基づく手続きを重ねて成立した「死刑判決」をないがしろにしていいはずはないのである。
法務大臣には、判決から6ヶ月以上が経過している死刑囚につき、主観で死刑執行命令を拒絶する権利など、はなから与えられていない。

3.総括
冤罪が恐くて死刑執行命令を下したくないという気持ちは十二分にわかる。しかし、裁判官、裁判員は冤罪を恐れつつも、自己の責任の下、苦しい決断を下している。検察官も冤罪を恐れながら、慎重な判断を重ねて死刑を求刑している。そんな彼らの決断の積み重ねを法務大臣の主観で、なかったことに出来ると考えるのは、司法軽視、思い上がりと言わざるをえない。

死刑を廃止したいなら、そのような内容の法案を提出すればいいし、判決から死刑執行命令までの期間を延ばしたいならそのような法案を提出し通せばいい。死刑判決後に冤罪について再度調査する制度を作りたいなら、やはりそのような法を作ればいいし、冤罪が起きないように、より慎重な司法制度を作りたいなら、そのような法を作ればいい。

法務大臣が法に則った手続きを踏もうともせずに、自己の気持ちをおさめるために法に反する振る舞いを平気で行っていることが私には甚だ疑問だ。
厳しい言い方だが、法によらず自己の意思を実現する姿勢は、ある意味、独裁者と変わらない。個人的な主観を理由に法を破ることを容認する者には法務大臣を続ける資格がないと私は考える。

上間法務行政書士事務所
行政書士 齊藤 源久(さいとう もとひさ)

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約7年7ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
 
[著者情報] mo.saito

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五三・町田法律事務所 弁護士

2008年慶應義塾大学大学院法務研究科修了
2009年弁護士登録
2012年五三(いつみ)・町田法律事務所開設

第二東京弁護士会労働問題検討委員会副委員長、経営法曹会議会員、日本労働法学会会員、経営者側労働法専門弁護士で、日々顧問先等からの様々な人事労務相談対応、労働審判・仮処分・労働訴訟の係争案件対応を行うとともに、複数社のヘルプライン窓口(内部通報窓口)となり相談(通報)があった際の対応・サポート業務を行っている。
このほか、社内研修、行政や経営者団体主催セミナー等の講演にも登壇。

主な著書として、『労務専門弁護士が教える SNS・ITをめぐる雇用管理-Q&Aとポイント・書式例-』(編著,新日本法規出版)、『女性雇用実務の手引(加除式)』(執筆担当,新日本法規出版)、『企業法務のための労働組合法25講』(共著 商事法務)、『就業規則の変更をめぐる判例考察』(編著 三協法規出版)、『労働契約の終了をめぐる判例考察』(編著 三協法規出版)、『裁判例や通達から読み解くマタニティ・ハラスメント』(編著 労働開発研究会)、『労働事件ハンドブック 』(共著,労働開発研究会)など。

主な論考として、「近時の裁判例にみるパワーハラスメントの法的意義」(季刊労働法2017年冬掲載)、「コンパクトに理解する労働法対応アップデート 労務コンプライアンス研修のポイント」(ビジネスロー・ジャーナル2017年4月号掲載)、「判例研究 パートタイム労働法8条違反が不法行為を構成するとされた例-N社(ニヤクコーポレーション)事件(大分地裁平25.12.10)-」(経営法曹183号掲載 2014年)など。
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川上 敦子 杉谷 聡
■川上 敦子
略歴:
大阪教育大学附属高等学校卒業
1980年 京都大学法学部卒業
1982年 弁護士登録(34期 愛知県弁護士会)
青山法律事務所入所
1988年 川上法律事務所パートナー
2010年 川上・原法律事務所に名称変更
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー

■杉谷 聡
略歴:
愛知県一宮市出身
愛知県立一宮高等学校卒業
2016年 一橋大学法学部卒業
2017年 弁護士登録(70期 愛知県弁護士会)
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夏目 久樹 大久保 裕史
■夏目 久樹
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2004年11月 旧司法試験合格
2005年4月 最高裁判所第59期司法修習(実務修習地:名古屋、~2006年9月)
2006年10月 弁護士登録 名古屋市内の法律事務所にて勤務(~2013年12月)
2014年1月 夏目総合法律事務所開設
2017年2月 オリンピア法律事務所開設
2017年3月 グロービス経営大学院経営研究科修了(MBA)

■大久保 裕史
略歴:
弁護士・NY州弁護士
2008年 早稲田大学法科大学院卒業
2009年 弁護士登録
2010年~2018年 クリフォードチャンス法律事務所勤務
2012年~2014年 国内大手商社法務部勤務(出向)
2015年~2016年 クリフォードチャンスワシントンDCオフィス勤務
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田代 洋介
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大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
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《東京会場》ポイントサービスの法的留意点
2019年04月19日(金)
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岡 伸夫
1992年 京都大学法学部卒業
1994年 大阪弁護士会 登録 梅ケ枝中央法律事務所 
2000年 ハーバードロースクール 修士課程(LL.M)卒業
Masuda Funai Eifert & Mitchell 法律事務所(シカゴ)
2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー    
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設

弁護士会活動(2018年2月現在)
日本弁護士連合会 ひまわりキャリアサポート 委員
第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員 

企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士

主な著書
「アメリカのP&A取引と連邦預金保険公社の保護 債権管理 No.96」金融財政事情研究会
「米国インターネット法 最新の判例と法律に見る論点」ジェトロ 共著
「Q&A 災害をめぐる法律と税務」新日本法規 共著
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訴訟・行政
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2019年05月30日(木)
09:30 ~ 11:30
16,000円(税別)
東京都港区
講師情報
淵邊 善彦
ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士

1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。

主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
近年ベンチャー企業を対象にしたM&Aや、中小企業の事業承継の一手段としてのM&Aが増えています。
いずれも大企業同士のM&Aと違って、人的、予算的、時間的な制約が強かったり、大企業とは違った法的問題が見つかることがよくあります。

本セミナーでは、これらのM&Aを進めるうえでの具体的な注意点や紛争事例をご紹介します。
また、本格的なデューディリジェンスを行う予算がない場合に、必要最低限押さえておくべきポイントとその調査手法をご提案します。
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訴訟・行政
《東京会場》施行間近の「限定提供データ」(平成30年改正不正競争防止法)の実務対応と営業秘密・限定提供データの漏えい防止の実務対応
2019年05月30日(木)
13:30 ~ 16:30
18,000円(税別)
東京都港区
講師情報
石川 智也、濱野 敏彦
■石川 智也(西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士)
2005年東京大学法学部第一類卒業
2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにあるミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)
同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
2017年米国ニューヨーク州弁護士登録

日本における知的財産法、営業秘密保護、個人情報保護法のほか、EUにおける知的財産制度・競争法、EUデータ保護規則をはじめとするグローバルベースでのデータ規制について詳しい。

■濱野 敏彦(西村あさひ法律事務所 弁護士)
2002年東京大学工学部卒業 同年弁理士試験合格
2004年東京大学大学院新領域創成科学研究科修了
2007年早稲田大学法科大学院法務研究科修了
2008年弁護士登録(第二東京弁護士会)
2009年弁理士登録
2011-2013年新日鐵住金株式会社知的財産部知的財産法務室出向

知的財産法、営業秘密保護、ITのほか、大学・大学院の3年間、AIの基礎技術であるニューラルネットワークの研究室に所属していたため、AIについても詳しい。

主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
平成30年改正不正競争防止法により限定提供データが創設され、2019年7月1日から施行されます。
本セミナーでは、営業秘密・限定提供データの漏えい防止策について説明した上で、いくつかのよく問題となるシナリオ別の留意点・対応について解説いたします。
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《東京会場:土曜日開催》今さら聞けない英文契約書(講師著書付き)
2019年06月15日(土)
09:30 ~ 15:15
(午前)か(午後)のいずれか1つに参加の方:各回13,000円+税(書籍代を含む)※書籍ご持参の方:各回11,000円+税 (午前)と(午後)の両方に参加される方:22,000円+税(書籍代を含む)※書籍ご持参の方:20,000円+税
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講師情報
吉川 達夫
ニューヨーク州弁護士/外資系企業 VP, General Counsel

外資系法務本部長、駒澤大学法科大学院、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師
元Apple Japan法務本部長、元伊藤忠商事法務部、元Temple Law School日本校客員教授。上智大学法学部、Georgetown Univ. Law Center卒

編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

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(基礎編)は、英文契約書を読んでみたい方、国際法務にこれから携わる方や弁護士の方、携わっているが改めて基礎を確認されたい方など、この機会に是非ご参加ください(英文契約書の読み方を中心に解説)。

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