仮差押による取引中止で最高裁が損害賠償否定

はじめに

 売掛金債権に仮差押えされたことにより百貨店との取引が中止されたとして債権者に損害賠償を求めていた訴訟で7日、最高裁は請求を棄却しました。仮差押えと損害との因果関係を否定したものとされます。今回は民事保全法の仮差押えについて見ていきます。

事案の概要

 日経新聞電子版によりますと、大阪府内の印刷会社が卸売業者に商品を納入したところ、発注通りに仕上がっていないとして代金の支払いを拒まれ、代金の支払いを求め大阪地裁に提訴していました。原告の印刷会社は卸売業者が取引先百貨店に対して有していた売掛金債権を仮差押えし卸売業者側の異議により取り消されたものの、百貨店は卸売業者との取引を中止したとされます。卸売業者側はこの仮差押えによって信用が傷つけられ取引が中止されたとして逆に印刷会社を相手取り逸失利益の賠償を求めて提訴しました。

民事保全手続きについて

 金銭の支払いや不動産の明渡しなどを求め提訴しても判決が出るまでには相当の時間を要します。場合によっては年単位の時間がかかり、その間に相手方は債権や不動産などを処分してしまい判決が出た頃には目的を達成できないといった事態も考えられます。そこで判決が出るまでに「仮」に行っておくのが民事保全手続きです。民事保全には金銭債権を保全するための仮差押え、不動産などの係争物に関する権利を保全するための仮処分、社員や取締役といった地位に関する仮の地位を定める仮処分の3種類があります。今回は仮差押えについて見ていきます。

仮差押えについて

 金銭の支払いを求める場合、訴訟と同時に、または訴訟に先立って相手方の動産や不動産、債権といった財産に対して仮差押えを行います。不動産の場合は仮差押えの登記が入り、その登記以降に売却などがされても訴訟で勝訴すればそれらは無視して競売手続きを行えます。動産の場合は執行官が占有することになります。債権の場合は第三債務者つまり債務者が預金している銀行などに送達され払い戻しが禁止されます。これにより財産の処分ができなくなり債権者は安心して訴訟を行えるということです。

仮差押えの手続き

 仮差押えはまず訴訟を行っている、またはこれから提訴する裁判所か差し押さえるべき財産の所在地の裁判所に書面で申立てます(民事保全法12条1項)。書面には申立ての趣旨、債権の内容、保全の必要性を記載して、即時に取り調べられる証拠、例えば契約書などを付けます(13条2項)。緊急を要することから証明までは不要となっております。保全命令が発令されますと、当事者双方に保全命令正本が送達され、その正本によって保全の執行を申し立てます(21条)。不動産の場合は裁判所書記官から登記所に仮差押え登記を嘱託してもらえます(47条3項)。

仮差押えされた場合の対応

 それでは逆にこちら側の財産などが仮差押えされた場合はどのように対応できるのでしょうか。まず債務者側の不服申立て手段として保全異議と保全取消があります。保全異議は保全すべき権利・債権は存在しない、あるいは弁済する資力は十分にあるので保全の必要性はないといった理由で行う不服申立てです(26条~36条)。これに対して保全取消は、一旦は保全の必要性等はあったが、その後弁済した、財産状況が改善したといった事情の変更を理由とする不服申立てです(37条~40条)。債権者側が一向に訴訟を提起しない場合や今保全されると重大な損害が生じるといった場合でも行えます。また差し押さえられたその財産の代わりに金銭を供託することによって開放してもらう制度も存在します(開放金制度 22条)。

コメント

 本件で大阪高裁は仮差押えによって取引が中止されたとして因果関係を認めていました。それに対し最高裁は仮差押えによって信用が傷つけられたとしても、それによって損害が生じたとは言えないとして因果関係を否定しました。仮差押えは商取引上の紛争で広く利用されている制度で、これを行ったことによって賠償が認められた場合は債権保全手続きに大きな影響が出かねないと言われており今回の判決は重要な意味があると言えます。以上のように保全手続きは紛争が生じた場合にはまず第一に検討すべき手続きと言えます。しかし一方で本件のように仮差押えによって紛争を抱えていることが第三者にも知られることとなります。仮差押えがされた場合には不服申立てや開放金の供託なども迅速に検討していくことが重要と言えるでしょう。

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