高裁が増額判決、待遇格差訴訟について

はじめに

 日本郵便の契約社員と正社員での待遇格差を巡る訴訟の控訴審で24日、大阪高裁は一審よりも増額し約430万円の支払いを命じていたことがわかりました。5年を超える契約社員が無期雇用に転換できることを考慮したとされます。今回は以前にも取り上げた待遇格差について見直していきます。

事案の概要

 報道などによりますと、原告側の8人の男性は1998年から2010年に日本郵便に採用され、大阪、神戸、広島などの郵便局で配達業務を行ってきたとのことです。原告側は業務の内容が正社員と同じであるにもかかわらず、手当や休暇に関する待遇に格差があるのは違法として提訴しました。一審大阪地裁では扶養、住居、年末年始手当の不支給を違法として約300万円の支払いを命じておりました。

待遇格差問題とは

 労働契約法20条では有期雇用と正規雇用での労働条件で、業務内容や責任の重さ、配置変更の範囲などを考慮して「不合理と認められる」違いがあってはならないとしています。この点が問題となる例としては、正社員と契約社員、正社員と退職後に再雇用された契約社員があります。前者は同年代での雇用形態の違い、後者は定年前後での雇用形態の違いからくるものです。近年いずれの場合においても多くの訴訟が提起され、いくつか注目すべき裁判例も出されております。

待遇格差問題に関する裁判例

(1)ハマキョウレックス事件
 物流大手ハマキョウレックスの有期雇用社員が正社員との間で、無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当、通勤手当、家族手当、賞与、定期昇給、退職金等に格差があるのは違法であるとして提訴した事例です。最高裁は一つ一つの手当について詳細に検討し、住宅手当については配転が予定されている正社員にだけ与えられるのは不合理ではないとしました。皆勤手当、無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当については職務内容とその手当の必要性に関して正社員との間に差異はないとして不合理としました(最判平成30年6月1日)。

(2)長澤運輸事件
 長澤運輸で正社員として就労していた男性が定年退職後に嘱託社員として同社に雇用され、定年前の正社員と比較して、能率給、精勤手当、住宅手当、家族手当、時間外手当、賞与などで格差があるのは違法として提訴した事例です。最高裁は精勤手当と時間外手当については正社員と嘱託社員とで趣旨と必要性に差異は無いとして不合理としましたが、それ以外については不合理とは言えないとしました。定年までは正社員としての待遇を受けてきた者であること、老齢厚生年金の存在、定年制に関する政策等も「その他の事情」として考慮し、一定の格差は不合理ではないと判断しております(最判平成30年6月1日)。

コメント

 本件で一審大阪地裁は扶養手当の不支給を不合理としていましたが、二審大阪高裁は長期雇用を前提とする基本給の補完という性質があるとして、契約社員に支給しないことも不合理ではないとしました。一方で5年を超える契約社員は無期転換ができる点を考慮して年始手当、夏季冬季病気休暇の不支給を不合理と判断しました。以上のように待遇格差問題では裁判所はそれぞれの手当などの趣旨を考慮し、有期社員と正規社員での差異を詳細に検討しています。また正社員と有期社員、正社員と定年後再雇用社員ではまた考慮要素が異なってきます。間もなく働き方改革関連法が施行されます。非正規雇用を行っている場合は各手当の内容や性質などを考慮して、本当に両社に必要性の違いはあるのかを慎重に検討し、労働契約内容を見直すことが重要と言えるでしょう。

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中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
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ニューヨーク州弁護士/外資系企業 VP, General Counsel

外資系法務本部長、駒澤大学法科大学院、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師
元Apple Japan法務本部長、元伊藤忠商事法務部、元Temple Law School日本校客員教授。上智大学法学部、Georgetown Univ. Law Center卒

編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

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