入札談合で有罪判決、「官製談合と業者」について

はじめに

千葉市が発注した工事を巡る入札妨害事件で千葉地裁は30日までに市土木事務所の前所長と千葉市内の建設会社「伊藤工務店」の前社長と従業員に有罪判決を言い渡していたことがわかりました。今回は入札談合等について独禁法以外での規制について見ていきます。

事案の概要

報道などによりますと、千葉市が発注した橋補修工事の一般競争入札で工事価格を不正に業者に漏らしていたとして千葉県警は今年2月に市緑土木事務所長の内山恵市被告と、その情報によって工事を落札した伊藤工務店の前社長伊藤大介被告、従業員の池田厚美被告を逮捕しておりました。昨年5月30日に実施された一般競争入札に先立ち、同月24日頃工事価格を漏らしたとされます。入札には10社が参加し、基準価格は2億591万円で落札価格は2億700万円、落札率は90.27%であったとのことです。

官製談合防止法による規制

官製談合防止法8条では「職員が、その所属する国等が入札等により行う売買、賃借、請負その他の契約の締結に関し、その職務に反し、事業者その他に談合を唆すこと、事業者その他の者に予定価格その他の入札等に関する秘密を教唆すること又はその他の方法により、当該入札等の公正を害すべき行為を行ったときは、5年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する」としています。国や自治体の職員が発注する際に業者に談合をさせたり、予め契約の相手を指定したり、発注に関する価格等の秘密情報を漏洩させたり、また事業者等から依頼を受けて入札談合を幇助したりすることを禁止しております。違反の際には罰則以外にも公取委による改善措置要求がなされます(3条、4条、5条)。

官製談合防止法と民間業者

この官製談合防止法は行為主体が工事等を発注する国や自治体等の職員、つまり公務員と規定しております。それ故に相手方である民間業者は関係のない法律のように見えます。しかし刑法65条1項では「犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする」としています。公務員や業務者、男性や女性といった一定の身分に基づいて成立する犯罪を身分犯といいます。本条では身分がなくても身分者との共犯関係は成立するということを定めております。実際この規定により官製談合防止法違反で民間業者の従業員が共犯とされた例が存在します(名古屋地裁平成29年2月21日)。

公契約関係競売等妨害罪

上記の他にも刑法には公契約関係競売等妨害罪が規定されております。刑法96条の6第1項によりますと、「偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」としています。偽計とは予定価格の漏洩や、他の入札参加者の価格を偽造したりするなどの行為です。威力とは談合に応じるよう脅迫したり、入札を取り消すよう多人数で取り囲み執拗に求める行為などが該当します(京都地裁昭和58年8月1日)。

コメント

本件で市の土木事務所前所長である内山被告に対しては官製談合防止法違反で懲役1年10ヶ月、執行猶予3年が言い渡され、相手業者である伊藤工務店の前社長と元従業員には公契約関係競売等妨害罪で懲役1年6ヶ月、執行猶予3年が言い渡されました。今回は業者に対しては官製談合防止法違反の共犯ではなく、別途刑法上の罪が適用されております。競争入札で他の業者と入札価格等を明示または黙示的に協調し合った場合は独禁法の不当な取引制限に該当することになりますが、国や自治体側の人間と共謀した場合には今回のような法律違反となり重い罰則が課されることとなります。競争入札関係の違反事例では独禁法違反が圧倒的多数を締めており、本法による規制例は比較的少数に留まっておりますが、業者間の横の関係だけでなく国等との縦の関係でも注意を払い違反防止体制の構築を心がけることが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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