特許庁が特許判定制度を「標準必須特許」に拡大へ

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はじめに

日経新聞電子版は22日、特許庁は特許判定制度を標準規格に準じる製品を作る際に必要となる標準必須特許に関しても拡大する意向である旨報じました。制度導入は今年4月にも開始される見通しとされております。今回は標準必須特許について見ていきます。

標準規格について

標準規格とは機器や電子装置、コンピューターネットワーク等における互換性や相互接続などのための統一規格のことを言います。身近なものとしてはJIS(日本工業規格)やISO(国際標準化機構)、Bloe-ray、Bluetoothなどが挙げられます。この標準規格は国際団体や業界団体が策定したものから、企業がなどの私的な組織が立ち上げたものまで様々な種類があります。世界的なPCのOSとしてしられるWindowsもその一つと言えます。このような統一規格があることにより、我々の身の回りにある機器や電子装置などが統一的に使用でき、また相互に接続することが可能となります。昨今ではIoT分野においても急速に標準化が進んでおります。

標準必須特許とは

標準規格に適合した製品などを製造販売する際に問題となるのが標準必須特許です。標準規格は多くの企業や業界団体が多額の投資をし開発してきた特許群によって成り立っているとも言えるからです。このような標準規格に参入する際に必須となる特許を標準必須特許(standard essential patents)と言います。この標準必須特許に関しては従来から特許権者が新規参入者に対して巨額のライセンス料を請求したり、特許侵害訴訟を乱発するいわゆるパテント・トロールが問題となっております。

FRANDとは

このような標準必須特許は標準規格分野で特許権者による独占を許してしまいがちであると言えます。高額のライセンス料により新規参入が抑制されることによって市場における競争が抑圧されることにもつながります。そこで国際的な標準化機関などでは特許権者に対し、特許権の開示とライセンスを行う際にFRAND条件に基づくことを宣言することが求められます。FRANDとはFair,Reasonable and Non-Discriminatory termsの略で、公正で、合理的かつ非差別的という意味です。標準必須特許の特許権者は不公正、非合理的、差別的なライセンスや権利主張を行ってはならないということです。

特許庁の判定制度とは

特許庁では、特許発明や実用新案、意匠や商標の効力の範囲について公正・中立な立場から権利侵害の可能性が無いかを判定する制度を実施しております。通常の訴訟では多額の費用や長い年月を要しますが、この制度では1件4万円、期間も最短3ヶ月程度と低コストで簡易迅速な解決が期待できます。訴訟による判決とは違い、その判断に法的拘束力はありませんが公的機関の判断として紛争解決の指針となり得るものです。

コメント

標準必須特許の独占性から、近年この分野での特許訴訟が増加しております。有名な事例としてはサムスン電子がAppleに対して行った特許権侵害に基づく販売差止と損害賠償請求訴訟があります。この事件で東京地裁および知財高裁は一定の特許権侵害を認めつつも誠実交渉義務違反や権利濫用、すなわちFRAND条件に違反していることを理由として損害賠償の一部を棄却しました。このようにFRAND条件は訴えられる側にとっては一種の防御として機能することになります。また上記特許判定制度も4月から標準必須特許の分野にまで拡大される予定です。標準必須特許はITやIoT分野においては新規参入のベンチャー企業が避けては通れない関門と言えます。参入分野にはどのような必須特許が存在しているのかを把握し、特許庁の制度やFRAND条件などを利用しつつ特許紛争に備えることが重要と言えるでしょう。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約1年12ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
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内田・鮫島法律事務所 弁護士

2006年03月 北海道大学獣医学部卒業/獣医師国家試験合格
2006年04月 農林水産省 入省(2008年3月まで)~動物・畜産物の輸出入に係る許認可業務に従事
2008年04月 京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻 入学(未修者枠)
2011年03月 京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻 修了
2011年09月 司法試験合格/11月 司法研修所 入所
2012年12月 第一東京弁護士会登録(新65期)
2013年01月 大塚製薬株式会社 入社(2017年1月まで)~医薬品に係る国内外の契約業務、会社設立等の資本・事業提携業務等に従事
2017年02月 弁護士法人内田・鮫島法律事務所入所 この著者の記事一覧へ
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