JAに公取委が立入検査、事業者団体規制について

はじめに

公正取引委員会は10月27日、生産したネギを他業者にも出荷していることを理由に共同の出荷施設等を使用させないようにした疑いで大分県農業協同組合(JAおおいた)を立入検査していたことがわかりました。今回は事業者団体への独禁法上の規制等について見ていきます。

事件の概要

JAおおいたは2008年、大分県北部の3市で生産される小ネギの銘柄を統一し「味一ねぎ」として商標登録しました。そして生産部会を設立し翌年2009年に集出荷施設を設置、皮むきや袋詰作業を一本化して全国に出荷しておりました。JAおおいたは組合員である生産者が農協を通さずに他業者に出荷した場合、味一ねぎの商標を使用させなかったり、集出荷施設の利用を拒否することによって生産したネギの全量をJAおおいたに出荷するよう強制していた疑いがもたれております。強制をうけていた生産者の通報を受け公取委は先月27日、JAおおいたに立入検査を実施しておりました。公取委は調査の結果次第でJAおおいたに対し排除措置命令を出す方針です。

事業者団体とは

独禁法2条2項によりますと、「事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする2以上の事業者の結合体又はその連合体」を事業者団体と定義しております。事業者としての共通の利益の増進に資する事業者の結合体であれば、その法的形式は問わず、法人格の有無や定款等の有無も問いません。そして構成員たる「事業者」についても、「商業、工業、金融業、その他の事業を行う者」と定義されており(2条1項)営利性の有無や法人格の有無は問いません。つまり共通の利益の増進という目的のもと、継続的に結合している団体が該当するということです。そして公取委のガイドラインによりますと、農家も「事業者」に該当し、その結合体である農協は「事業者団体」に該当します。そして農協は同時に自ら事業を行う「事業者」でもあるということです。事業者団体は共通の目的を持って結合した団体であることからカルテル等の温床となりやすく、競争秩序への危険も大きいという理由で厳格に規制されております。

事業者団体規制

独禁法8条には1号から5号まで事業者団体が主体となって行うことを禁止する規定が列挙されております。また一般指定5項でも事業者団体が構成事業者に対して行う不公正な取引方法を禁止しております。違反した場合には排除措置命令(8条の2)が出されるだけでなく、課徴金納付命令が出されることもあります(8条の3)。以下具体的に挙げていきます。
(1)8条1号
事業者団体の意思決定として一定の取引分野における競争を実質的に制限することを禁止しております。これは3条が禁止する私的独占や不当な取引制限と同様のものですが、どのような行為によるかの限定はありません。審決例から見ますと商品の価格や流通量に関する制限が大半を占めているようです。

(2)8条2号
不当な取引制限又は不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際協定、国際的契約を禁止しております。この規定に関しては適用事例が存在せず、ほとんど問題となることは無いと思われます。

(3)8条3号
一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限することを禁止しております。これは新規事業者の参入を妨害したり、既存の事業者を排除することが該当します。これは直接的に事業者団体への加入を拒む他、加入者でなければ実質的に当該地域での営業が困難になるような措置を講じることも該当します。

(4)8条4号
構成事業者の機能又は活動を不当に制限することを禁止します。これは事業者団体内において、自由な競争を阻害するような活動制限を行うことが該当します。市場における競争の実質的制限にまで達すると1号や3条の問題となります。

(5)8条5号
事業者団体が構成事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせることを禁止しております。これは団体が行うのではなく、構成事業者に取引拒絶等を行わせることによって、新規事業者の参入を妨害したりといった行為が該当します。

(6)一般指定5項
事業者団体が構成事業者を不当に排除したり、団体内部で不当に差別的な取扱を行うことによって、その事業者の事業活動を困難にさせる行為を禁止しております。ある構成事業者にだけ団体の施設の使用を許可しないといった行為が該当します。

コメント

JAおおいたはネギの生産者がJAおおいた以外の事業者に出荷した場合には「味一ねぎ」のブランドの使用を禁止したり、JAおおいたの集出荷施設の使用を不許可とする措置をとることによって生産者にネギを全量JAおおいたに出荷するよう強制しておりました。「味一ねぎ」ブランドは大分県の特産品として扱われており、「味一ねぎ」のブランド名が使用出来ない場合は事業者としての活動が困難になると考えられます。JAおおいたのこのような措置は8条5号や一般指定5項に該当する可能性が高いと言えるでしょう。またその他にも排他条件付取引(一般指定11項)や拘束条件付取引(同12項)にも該当し得ると言えます。事業者団体は上記のとおり共通の利益増進という目的で集まった団体であれば該当することになり、各事業分野で多くの団体が形成されております。協会や連盟、連合、組合といった名称の団体は基本的に該当すると言えます。事業者団体は個々の事業者としての規制だけでなく団体としての行為が独自に規制に抵触することもあり、またその罰則等も厳しいものとなっております。事業者団体に加入している場合には団体としての行為にも注意を払う必要があると言えるでしょう。

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2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー    
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設

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第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員 

企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士

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略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
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2010年1月~2018年4月
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1961年神戸市生まれ
中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、日本AT&T㈱(米系)契約課長、松下冷機株式会社法務室主事、
セジデム株式会社(仏系)コーポレートサービス部統括部長・法務部長兼任等、を歴任し、現職。
*企業名は当時のまま。
※日本企業・外資系企業双方で通算30年以上の企業法務・国際法務の経験を有する現役の企業法務責任者です。
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