TPP合意による国内法改正の方向性について

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1、国内法の改正する分野

 環太平洋経済連携協定(TPP)の政府対策本部が10月22日TPPに伴う国内法の改正について関税の分野と知的財産分野にとどまるとの見通しを示したと10月23日付朝日新聞デジタル版が報じた。
 関税分野と知的財産分野における改正はどのような内容であろうか。

2、TPP合意の内容について

 日本がTPPで最終的に関税を撤廃するのは、輸入する農林水産品と工業製品を合わせた全9018のうち8575品目である。
 その内訳は、農林水産物の輸入に関して全2328品目のうち1885品目(約81%)の関税を撤廃する見通しだ。もっとも、工業製品の輸入については関税の大半が撤廃済みであり、関税の残っている化学製品や繊維の分野でも関税の撤廃を順次行っていく方針である。

3、関税分野について

 関税分野では、関税の撤廃に加え関税の優遇条件を定めた原産地規則(関税暫定措置施行令26条、同法8条の2第1項、3項等)を日米を含めた12カ国で統一する可能性がある。さらに、輸出者、生産者又は輸入者自らが原産地証明書を作成する制度を導入することも検討されている。

4、知的財産分野について

 知的財産分野では、特許につき発明の公表から特許出願するまでに認められる猶予期間を12ヶ月に変更される可能性があり(特許法30条参照)、商標につき視覚で認識できない標章を商標登録できるように制度を整える方向にある(商標法18条以下)。
 さらに、著作権につき非親告罪として職権で刑事手続をとることを可能とすることが予定されている(著作権法123条参照)。また、商標制度を用いた出願・登録型による地理的表示を保護する制度を導入することも検討されている。

5、まとめ

 関税分野では、関税の撤廃による日本国内の影響は大きいといえる。もっとも、原産地規則の改正により与える影響は国家間の優遇処置の統一により締結国12カ国での不公平を防止することにあり、直接的な日本国内への影響は大きくなさそうである。さらに、原産地証明書の作成という新制度の導入は、原産地証明書の取得が不要となり貿易当事者にとって手続が簡易となる効果が発生すると思われる。
 他方、知的財産分野では、特許につき猶予期間が6ヶ月から12ヶ月となると特許における発明の新規性を延長し特許確保の機会を保障しやすくなると思われる。また、視覚で認識できない音などの標章として登録することができ、クリエイティブな分野での権利が保障されるようになる可能性がある。もっとも、TPPで合意された著作権侵害が非親告罪となるのは、故意による場合に限られ、その対象は「商業的規模の複製等」であることが必要とされる。さらに、「市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合」には親告罪とされてしまうこととなる。そうすると、商業的規模、収益性に大きな影響を与えないという要件の線引きが難しい課題となると思われる。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約3年9ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
 
[著者情報] hatcho

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弁護士(東京弁護士会)/株式会社レトリバ非常勤監査役

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労働法/景品表示法を中心とした企業法務を広く取り扱う他、人事労務担当者との勉強会を8年以上主宰。
著書に「景品表示法の理論と実務」(中央経済社)、執筆記事に「基本用語と講習例でわかる!LGBT基礎知識」(月刊ビジネス法務・2017年3月号)等がある。
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■登島 和弘
サイネオス・ヘルス合同会社
アジア太平洋地域法務責任者

中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、日本AT&T㈱(米系)契約課長、松下冷機株式会社法務室主事、
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外資系法務本部長、駒澤大学法科大学院、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師
元Apple Japan法務本部長、元伊藤忠商事法務部、元Temple Law School日本校客員教授。上智大学法学部、Georgetown Univ. Law Center卒

編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

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