【改正民法】危険負担に関する変更点

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はじめに

 平成29年5月26日に成立した改正民法が来年令和2年(2020年)4月1日に施行されます。約200項目に及ぶ大改正となっております。今回は改正民法のなかでも特に大きく変更されている債権法のうちの危険負担について見ていきます。

現行民法の危険負担

 危険負担とは、契約上の片方の債務が当事者に責任なく履行不能となった場合に、もう片方の債務が存続するのかそれとも消滅するのかという問題を言います。例えばある中古の建物について売買契約を締結したが、引き渡す前に災害で滅失してしまった場合、買主は代金を払わなくてはならないかということです。債権者側である買主が目的物を得られなくても代金は支払わなくてはならないという考え方を「債権者主義」、逆に買主の債務も消滅し支払わなくてもいいという考え方を「債務者主義」と言います。現行民法では特定物の売買に関しては債権者主義を、それ以外の場合は債務者主義を採っております(民法534条、536条)。つまり中古車や建物など特定物の場合は滅失して引渡を受けることができなくなっても、買主は代金を支払う必要があります。なおこれらの規定は特約によって排除することは可能です。

改正民法での危険負担

 この現行民法の債権者主義は契約締結によって目的物の所有権が買主に移転し、それに伴い滅失による危険も買主に移転するという考え方に基づきます。しかし従来からこの考え方は買主にとって酷であり不合理であるとの批判が強かったと言えます。そこで改正民法ではこの債権者主義の考え方が無くなりました。「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対債務の履行を拒むことができる」とされております(改正民法536条1項)。つまり買主側の代金債務は消滅はしませんが履行拒絶ができるということです。ただし目的物が買主に引き渡された後は両当事者に帰責性なく滅失しても買主は代金支払いを拒むことはできません(改正民法567条1項)。

契約解除との関係

 現行民法では債務者に帰責性があった場合は契約解除、帰責性が無い場合は危険負担の問題として扱っておりました。しかし改正民法では以前も取り上げたとおり契約解除に債務者の帰責性は問われなくなりました(改正民法541条)。当事者双方に帰責性なく滅失し履行不能となっても当然には反対債務は消滅しなくなった代わりに買主は履行拒絶と契約解除ができるようになったということです。

原始的不能の場合

 ここまでは契約締結後に目的物が滅失した場合の話でしたが、契約締結前にすでに滅失していた場合はどうなるのでしょうか。このような場合を一般に原始的不能と言いますがこの点に関しても改正が入っております。現行民法では契約締結前に目的物が滅失していた場合は契約は無効とされておりました。しかし改正民法では無効とはならずこれも債務不履行の範囲で処理されることとなり、買主は解除または損害賠償ができることとなります(改正民法542条1項1号、422条の2)。

コメント

 以上のように改正民法ではこれまで批判の強かった危険負担の債権者主義の考え方は改められております。これまでは契約条項によって目的物が滅失した場合にどの時点から買主が負担するかを定めておりましたが改正民法によって特約がなくとも妥当な結論に到れるよう修正されます。これまでの原始的不能・後発的不能、帰責性の有無などによる分け方から、よりシンプルに履行を拒めるか解除ができるかの問題に変わったとも言えます。なお改正民法は来年2020年4月1日から施行されますが、施行前に締結された契約については従来どおりの現行民法が適用されることとなります(改正民法附則30条1項)。契約締結日に注意しつつ改正民法に合わせた契約書の準備をしておくことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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