管理職の労働時間把握義務化、労働安全衛生法関連省令改正へ

はじめに

厚労省は2019年4月から労働安全衛生法関連省令を改正し、一般の従業員にだけ求められている労働時間の把握を管理職にも拡大する方針であることがわかりました。一般の従業員と労働内容が実質的に変わらない管理職の過重労働を抑制する狙いです。今回は労働者の労働時間管理について見ていきます。

改正への経緯

安倍政権の重要政策の一つである働き方改革関連法案が可決され2019年4月から施行されます。これまでも懸案とされていた残業時間について原則月45時間、年360時間、労使間合意による拡大でも年6回の回数制限に加え月100時間、年720時間を上限とし違反の場合には罰則が適用されることになります。これにより一般従業員の労働が減少した分管理職に回ることが懸念されます。管理職といっても実質、一般従業員と変わらない労働を行っている者も少なくなく、こういった管理職の過重労働を抑制するために管理職についても労働時間の把握が義務付けられることとなります。

労基法上の勤怠管理

労働基準法では「使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調整し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入」することが義務付けられ(108条)、3年間保存しなくてはならないとしています(109条)。しかし労働者の労働時間把握を直接義務付けているわけではなく、またそのような明文規定も存在しません。この点に関しては厚労省が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を出しております。以下見ていきます。

厚労省のガイドライン

(1)適用範囲
ガイドラインの適用対象は労基法の労働時間規制が適用されるすべての事業場で、労基法41条が適用される労働者、みなし労働時間制の労働者を除く全ての労働者となります。適用されない労働者についても適切な労働時間管理を行う責務があるとされています。

(2)労働時間
本ガイドラインでは労働時間についての考え方が明示されており、労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間で、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間も該当するとしています。業務に必要な準備や後始末、使用者の指示があれば即時に業務に従事しなくてはならない待機時間、業務上義務付けられた研修や教育訓練、使用者の指示による学習も労働時間に該当するとしています。

(3)労働時間把握のための措置
従業員の労働時間把握のために原則として使用者が自ら現認して記録するか、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間記録など客観的な記録によって記録することが求められます。これらの方法によらず自己申告とする場合は本ガイドラインを踏まえて適切な時間把握を行うよう十分な説明と、客観的記録から実態と申告が乖離する場合は実態調査が義務付けられます。また労働時間を超えて事業場に残留している場合は理由等を確認し、使用者の指揮下にあると認められる場合には労働時間として扱う必要があります。

コメント

現段階での従業員の労働時間管理は以上のようになっておりますが、来年4月からは管理職についても同様に記録することが義務付けられます。これにより時間管理の対象となる管理職は全国で約144万人に上り、全労働者の約2%となると言われております。管理職に関しては2008年頃のいわゆる「名ばかり管理職」の問題もあり、その扱いには厚労省も注意を払っていると言えます。管理職に過労死等が生じた場合は適切な勤怠管理が行われていたかだけでなく、そもそも労基法上の「管理職」に該当する実質を備えていたかも問われることになります。来年4月に備え、現時点から管理職に関する勤怠管理等を見直しておくことが重要と言えるでしょう。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約1年4ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
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[著者情報] mhayashi

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13年ニューヨーク州弁護士登録、英国University College London卒業(LL.M.)
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