民事訴訟手続きIT化への動き

はじめに

民事訴訟手続きのIT化を検討してきた政府有識者会議は先月30日、訴状の提出や書類の送達などをインターネット上で行うことができるよう、手続きのIT化を求める提言を取りまとめました。今後1年以内に法制審への諮問に向けて準備を進めるとのことです。今回は民事手続きのIT化に向けた提言のポイントを見ていきます。

民事手続きIT化への経緯

近年の情報通信技術の発展にともない民事訴訟手続きもIT技術を活かした制度の必要性は高まってきたと言われております。それを受け平成8年から電話会議システムやテレビ会議システムが導入され、平成18年からは支払督促手続きがオンラインで行えるようになりました。しかし欧米などの諸外国の制度から見ると、日本のIT導入はまだまだ追いついていないのが現状です。日本のビジネス環境や国際競争力の観点から利用者目線に立ったIT化を進める必要があるとの声が高まってきており、有識者会議による検討が始まったとされます。以下提言のポイントを見ていきます。

「3つのe」の実現

(1)e提出
有識者会議による提言は「3つのe」の実現を柱としています。その一つ目が「e提出」です。現行法では訴状などは書面は紙媒体で裁判所に直接提出するか郵送するかのどちらかしかありません。そこでそれらの書面をオンラインにより24時間365日提出可能にすることが望ましいとされております。訴え提起時の訴状だけでなく、答弁書や判決、訴訟手数料の納付にいたるまでオンラインで実現すべきと言われております。

(2)e事件管理
二つ目は「e事件管理」です。訴訟当事者は訴状や答弁書、準備書面や証拠等を随時オンラインでアクセスできるようにするということです。また訴状の受理や補正など、訴訟の現状をオンラインで確認したり、また口頭弁論期日の調整や指定も当事者双方と裁判所がオンラインで行うことができるようにすべきとされます。

(3)e法廷
三つ目は「e法廷」と呼ばれ、当事者双方が裁判所に出頭することなく、テレビ電話会議やウェブ会議を活用して訴訟手続きを行うというものです。第一回口頭弁論期日では当事者は裁判所に出頭しなくても訴状や答弁書の内容を陳述したものと擬制されます(民訴158条)。それゆえに最初の期日は当事者が欠席せずに形式的なものとなりがちですが、ウェブ会議等を通じてより充実させることが期待できます。また争点整理や証人尋問も裁判所まで出頭しなくても実施することも考えられると言われております。

IT化の課題

民事訴訟手続きのIT化にはまだまだ多くの課題があります。まず弁護士を頼まない本人訴訟の場合、IT化したシステム利用をどのようにサポートするかという点が挙げられます。またインターネットを使用する以上、セキュリティの問題は避けて通ることはできません。訴状や書証などのオンライン化すれば漏洩や、改ざんといった問題もあります。またIT化には司法だけでなく行政との連携も必須でありコスト面も重要な課題とされます。

コメント

現在民事訴訟手続きに導入されているIT技術は電話会議システムとテレビ会議システムがあります。電話会議システムは裁判所が必要と認める場合に準備手続で使用できるに留まっております(176条3項)。またテレビ会議システムは家事事件での調停や審判に限られており(家事事件手続法258条1項、54条)IT化はほとんど進んでいないのが現状と言えます。民事訴訟以外では登記申請が挙げられます。不動産登記や商業登記をオンラインで行うというものです。しかしこれも完全にはオンライン化しておらず、電子化できない書面などはやはり直接提出や郵送を必要とされており、半ライン申請などと呼ばれております。以上のように訴訟手続のIT化はまだまだ実現への道のりは長いと思われますが、それでも少しずつオンラインによる手続きは拡大していっていると言えます。1分1秒を争う訴状の提出や仮差押などがオンライン化した場合、法務実務に及ぶ影響も大きいと思われます。法改正の動きには常に注視していくことが重要と言えるでしょう。

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

法務コラム 法務ニュース 訴訟対応 民事訴訟法
《東京開催》「働き方改革関連法」の施行に向けて企業が準備すべきこと
2018年12月19日(水)
09:45 ~ 12:15
18,000円(税別)
東京都港区
講師情報
高仲幸雄
中山・男澤法律事務所 パートナー 弁護士

早稲田大学法学部卒業

2003年弁護士登録(第一東京弁護士会)、中山慈夫法律事務所(現中山・男澤法律事務所)入所
2009年以降、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師、現在に至る
主な取り扱い分野は、人事労務関係・会社法務・民事全般

著書(いずれも単著):
「人事労務制度使いこなしマニュアル」 中央経済社/「実務家のための労働判例読みこなし術」労務行政/「労使紛争防止の視点からみた人事・労務文書作成ハンドブック」日本法令/「有期労働契約 締結・更新・雇止めの実務と就業規則」日本法令など

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
本年6月に成立した『働き方改革関連法』によって、これから順次、様々な規制の施行日を迎えることになり、企業はその対応に追われることになります。
その中で重要なのは、「労働基準法等の改正による労働時間・休日・年休制度の見直し」と、「非正規社員の待遇改善(同一労働同一賃金)に関する法改正」です。

本講演では、まずは、施行日が迫る労働基準法の改正分野について、【労働時間・休日・年次有給休暇】の制度設計や運用の見直しを中心に、就業規則の見直し方法やアルバイト等のシフト勤務も視野に入れた実務レベルでの労務管理方法を解説します。

次に、「同一労働同一賃金」では、現状では様々な裁判例が相次いで出されており、情報が錯綜している中で優先して改善すべき待遇や手当、非正規社員から待遇差について説明を求められた場合の対応方法などを最新の情報をもとに解説します。

実務担当者はもちろん経営者・人事・労務・総務の各部門で人事制度や賃金制度を検討するにあたって必須の内容を盛り込みます。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース 訴訟対応 民事訴訟法
《大阪開催》今さら聞けない英文契約書セミナー(英文契約書の基礎、英文契約書交渉)
2018年12月15日(土)
09:30 ~ 15:15
・(午前)か(午後)のいずれか1つに参加の方:各回12,800円+税(書籍代を含む)※書籍を購入済みで持参の方:各回10,000円+税 ・(午前)と(午後)の両方に参加される方:19,800円+税(書籍代を含む)※書籍を購入済みで持参の方:17,000円+税
大阪府大阪市
講師情報
吉川 達夫
ニューヨーク州弁護士/外資系企業 VP, General Counsel

外資系法務本部長、駒澤大学法科大学院、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師
元Apple Japan法務本部長、元伊藤忠商事法務部、元Temple Law School日本校客員教授。上智大学法学部、Georgetown Univ. Law Center卒


編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年),『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年),『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など,著作・論文多数


主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
ニューヨーク州弁護士で、外資系会社VP, General Counselの吉川達夫氏(元Apple Japan 法務本部長、VMware Japan法務本部長、2社合計15年以上)を講師にお招きし、東京において過去数年間にわたり毎年多くの方からご参加を頂いております「今さら聞けない英文契約書セミナー」を、初心者向けの午前の部(基礎編)と午後の部(交渉編)に分けけて初めて大阪にて開催いたします。

基礎編は、英文契約書を読んでみたい方、国際法務にこれから携わる方や弁護士の方、携わっているが改めて基礎を確認されたい方などに、この機会に是非ご参加頂きたい内容になっております(英文契約書の読み方を中心に解説します)。

交渉編は、国際法務の実務を担当されている方、多少の基礎知識はあるが自己流で勉強された方、弁護士の方、発展的な学習をされたい方などにお勧めです。

当日は講師著書の国際ビジネス法務(第2版)(第一法規株式会社/2018年3月発売 /2,800円+税)を教科書として使用します。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務コラム 法務ニュース 訴訟対応 民事訴訟法
《大阪会場》第106回MSサロン
2018年12月13日(木)
19:00 ~ 21:00
2,000円
大阪府大阪市北区
講師情報
吉田 憲
弁護士 京都大学博士(法学)
クラウド法律事務所代表弁護士
国内業務だけでなく、国際的(主に中国圏)な業務も取り扱い、
国内外の企業に法的助言を行っている。

略歴:
早稲田大学法学部卒
京都大学大学院法学研究科法政理論専攻博士後期課程修了
北京大学対外漢語教育学院留学

2006年10月 弁護士登録
2016年1月 クラウド法律事務所設立
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「中国における紛争解決手続について」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務コラム 法務ニュース 訴訟対応 民事訴訟法
《名古屋開催》ものづくり法務勉強会 ~工場における外国人雇用の留意点~
2018年12月18日(火)
19:00 ~ 21:00
3,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
原 武之
2000年 早稲田大学法学部卒業
2003年 弁護士登録(56期 第二東京弁護士会)
森・濱田松本法律事務所入所
2006年 川上・原法律事務所移籍独立(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー
中部の「ものづくり」企業を支援するための、ものづくり分野の法律問題に特化した勉強会です。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

台湾大手銀行、邦銀の買収計画を進める... 事案の概要 同行の買収は、市場規模の大きい日本で取引を拡大し、個人向け金融サービス販売などに注力することによって、同行の収益拡大を狙いとするとみられる。過去、外資ファンドが日本の大手銀や地銀を買収したことはあったが、買収が実現すれば、外国銀行による初めての邦銀買収となる。 これまで、海外の金融機関...
迷惑メールで全国初の摘発  迷惑な勧誘メールを一斉送信したとして、千葉県警は20日、県内の出会い系サイト運営会社の責任者の男(35)ら3人を特定商取引法違反(承諾のない者への電子メール広告の提供)容疑で千葉地検に書類送検した。無承諾の勧誘メールがすべて違法となった平成20年の改正法施行以降、摘発は全国初。  特定商取引法に...
台湾の労働法規改正で、過労は減少するか... 台湾の職業安全衛生法改正の概要 台湾の立法院は、6月18日、職業安全衛生法(Occupational Safety and Health Act)改正案を可決した。本改正案は2012年に行政院によって承認されていた。 これは、労働者を過労や労働災害から保護することを目的として、雇用主にその方...