JPホールディングス創業者が株主提案、役員の任期と解任要件について

はじめに

日経新聞電子版は9日、JPホールディングスが22日に開催予定の臨時株主総会で、元代表取締役で創業者の山口洋氏が株主提案として取締役の任期短縮と解任要件を緩和を議題に上げている旨報じました。これらの案に対し元取締役会は反対の意向をしめしております。今回は役員の任期と選任・解任について見ていきます。

事案の概要

報道などによりますと、JPホールディングスは元代表取締役で創業者の山口氏からの臨時株主総会の招集請求により、今月22日に臨時株主総会を開催する予定となっております。その際に同氏から提案されている議題はまず取締役の任期を「選任後2年以内」から「選任後1年以内」に短縮すること、そして定款28条に定められている取締役の解任についての規定の廃止および現取締役の1名の解任についてです。これに対し取締役会は解任要件と解任については反対しており、任期の短縮についても来年の定時株主総会終結時に効力が生じる旨の経過措置を追加するべきとの議案を出しております。

役員等の任期について

(1)取締役
会社法322条1項によりますと、取締役の任期は「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」とされております。これは2年間という期間を定めているわけではなく、厳密には選任時から2年以内で終わる年度の株主総会までということです。たとえば事業年度が3月31日までとなっていて、4月1日に選任された場合は2年後の4月1日までに終了する最後の年度の総会終了時までとなります。この場合任期は実質的に2年と3ヶ月程度となります。逆に3月30日に選任された場合は2年後の3月30日より前に終わる事業年度を基準としますので1年後の事業年度に関する総会までとなり、実質任期は1年と3ヶ月程度となります。この2年という任期は短縮することができ(同但書)、非公開会社の場合は逆に10年を限度として伸長することができます(同2項)。なお監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社の場合は1年に限定されます(同3項、6項)。

(2)監査役
監査役の場合は「選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」となっております(336条1項)。非公開会社の場合は取締役と同様に10年まで伸長することができますが(同2項)、短縮することはできません。非公開会社は株主の変動が少なく、頻繁に株主の信任を問う必要性が低いため伸長を認めています。一方短縮については監査役の地位と独立性の確保の趣旨から短縮は認められておりません。

(3)会計監査人
会計監査人の場合は「選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」となっております(338条1項)。会計監査人については任期を短縮することも、伸長することも認められておらず例外なく1年となります。しかし会計監査人については再任みなし規定があり、定時株主総会で別段の決議、たとえば会計監査人◯◯を解任するといった決議がなければ自動的に再任されることになります(同2項)。

役員等の選任・解任

取締役や監査役、会計監査人等の役員の選任と解任は株主総会の決議によって行ないます(329条1項)。そして決議の要件として議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、その議決権の過半数の賛成で可決となります(341条)。この定足数については定款で定めることによって3分の1まで下げることができます。また可決要件については定款で加重することはできますが、過半数よりも下げることはできません。なお、この決議要件については例外があり、監査役と累積投票によって選任された取締役の解任については特別決議(3分の2以上の賛成)を要します(343条4項、309条2項7号)。

コメント

本件でJPホールディングスの定款を見ますと、取締役の任期は「選任後2年以内」となっております。また28条では取締役の解任について定足数は3分の1、可決数については出席議決権の3分の2以上と定められております。これに対し山口氏は株主提案で任期を「選任後1年以内」に短縮し、28条の解任要件を廃止することを提案しております。役員の信任を1年毎に株主総会で諮り、解任もしやすくし、より経営に株主の意向を反映しやすくしようとする趣旨であると考えられます。このように役員の任期や選任・解任については会社法はある程度会社ごとに柔軟に定められるよう規定しております。任期を短くすれば、株主の意向を反映しやすくなる反面、手続やコスト面で負担が大きくなります。小規模で非公開な会社の場合は頻繁に株主の意向を確認する必要が乏しいことから任期を長く設定することもできます。なお「正当な理由」なく解任する場合、残りの任期分の報酬を賠償する必要が生じてきます(339条2項)。ここで任期を長く設定していた場合は賠償額の負担が大きくなることに注意が必要です。会社の規模やガバナンス体制、コンプライアンス体制によって適切な任期を設定していくことが重要と言えるでしょう。

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

法務コラム 法務ニュース 総会対応 会社法
第104回MSサロン(名古屋会場)
2018年11月07日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「国際取引契約の実務入門~英文契約を取り扱う際に最低限知っておくべきこと~」です。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース 総会対応 会社法
《東京開催》少人数法務の為の企業法務研究会
2018年10月19日(金)
19:30 ~ 20:30
無料
東京都渋谷区
講師情報
舩山 達
株式会社フルスピード(東証二部上場)
法務・総務部 部長
慶応義塾大学法学部法律学科卒
大阪市立大学大学院法学研究科法曹養成専攻修了
従業員5人のベンチャー企業に就職。2回の転職を経て現職。
少人数やノウハウの蓄積のないために業務の進め方に不安を持っている法務担当者のための意見交換会です。
今回のテーマは「契約書管理」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務コラム 法務ニュース 総会対応 会社法
【名古屋開催】自動運転技術に関する法律問題《ITビジネス法務勉強会:第6回》
2018年11月22日(木)
15:00 ~ 17:00
3,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田 圭介 杉谷 聡
■和田 圭介
略歴:
愛知県春日井市出身
愛知県立旭丘高校卒業
2004年 京都大学法学部卒業
2005年 弁護士登録(58期 第二東京弁護士会)
クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業入所
2008年 フランス系ラグジュアリーブランド日本支社(出向)
2010年 アメリカ、Duke University School of Law(法学部)LLM卒業
2010年 クリフォードチャンス香港オフィス(出向)
2011年 日系の大手財閥系総合商社のイギリス子会社の法務部(出向)
2013年 ニューヨーク州弁護士登録
2015年 IBS法律事務所開設(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー

■杉谷 聡
略歴:
愛知県一宮市出身
愛知県立一宮高等学校卒業
2016年 一橋大学法学部卒業
2017年 弁護士登録(70期 愛知県弁護士会)
オリンピア法律事務所入所
ITに関する法律を学び、ビジネスに活かしていただくためのITビジネス法務セミナーです。第6回目のテーマは自動運転技術に関する法律問題です。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース 総会対応 会社法
《東京開催》GDPR対応の実務 日本企業にとってのFAQと優先順位
2018年11月16日(金)
09:45 ~ 11:45
17,000円(税別)
東京都港区
講師情報
石川 智也
西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

2005年東京大学法学部第一類卒業
2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
2017年米国ニューヨーク州弁護士登録

日本における知的財産法、営業秘密保護、個人情報保護法のほか、
EUにおける知的財産制度・競争法、EUデータ保護規則をはじめとする
グローバルベースでのデータ規制についても詳しい。

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
本講演では、多くの日本企業のGDPR対応をサポートしてきた講師が、その過程でよく質問を受ける事項を解説するとともに、
作業の優先順位を明確にして、日本企業がどのようにGDPR対応を行い、今後どのようにGDPRコンプライアンスを維持していくべきかについて解説いたします。

解説に際しては、欧州データ保護評議会(EDPB)が公表・承認しているガイドラインの内容を踏まえることはもちろんのこと、各国の監督当局が公表している情報・オピニオンや、
GDPR施行後の当局の執行状況を含め、現地の最新動向について、お話ししいたします。

また近時、M&Aのデューディリジェンスの過程で買収する会社のGDPRコンプライアンスが問題になることがしばしばありますので、その際のチェックポイントについても触れたいと思います。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース 総会対応 会社法
《東京開催》企業におけるAI活用と個人情報保護・プライバシーの留意点
2018年11月07日(水)
14:00 ~ 16:30
18,000円(税別)
東京都港区
講師情報
野呂悠登
TMI総合法律事務所 弁護士

東北大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了

平成27年改正個人情報保護法の全面施行前後に、
個人情報保護委員会事務局において、
法令関係とデータの利活用関係を担当

近時の著書等には『個人情報管理ハンドブック[第4版]』(商事法務、2018)、
「AIによる個人情報の取扱いの留意点」(Business Law Journal、2018年6月号)、
「ビッグデータ・個人情報の利活用と先端ビジネス」(Business Law Journal、2018年8月号付録〔LAWYERS GUIDE〕)等がある。

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
最近、AI関連技術の発展等により、AIの活用に対する期待が高まっており、ビジネスにおいて実際にAIの活用を始める企業が増えてきています。

AIを活用する場合、従来人間の脳が行っていた知的な作業をコンピュータに行ってもらうことになるため、従来想定されなかった様々な法的問題点が生じることが想定されます。
特に、機械学習を用いたAIを用いる際には、従来とは異なる方法で大量の情報を集積し又は処理を行うため、個人情報保護法やプライバシー権との関係が問題となりやすいと考えられています。

本セミナーでは、平成27年の個人情報保護法の全面施行前後において、同法を所管する個人情報保護委員会にて法令の担当者を務めた講師により、
AIを活用することを検討している企業の担当者向けに、企業におけるAI活用と個人情報保護・プライバシーの留意点を具体的な事例を基に解説します。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース 総会対応 会社法
《東京開催》海外企業との販売店契約/ディストリビューション契約 -豊富な実例に基づく、各条項の検証-
2018年11月06日(火)
09:30 ~ 11:45
17,000円(税別)
東京都港区
講師情報
豊島 真
小島国際法律事務所
パートナー 日本及びカリフォルニア州弁護士

東京大学法学部卒
1999年弁護士登録(第二東京弁護士会)
カリフォルニア大学デービス校ロースクール修士課程卒(LL.M.)
国内外の販売店契約に関する取扱い案件多数
著作に「販売店契約の実務」(中央経済社・共著・編集担当)

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
販売店契約(ディストリビューション契約)は、サプライヤーの商品を、販売店(ディストリビューター)の販売チャネルを通じて販売するための契約です。
本セミナーではかかる販売店契約を取り扱いますが、その意義・目的は以下のとおりです。

①実際の事例の紹介を多く行います。よく見かける契約書の条項の一言一句の大切さは、実際に問題が起こってから初めて思い知らされることが多いものです。
実際に起こった問題に触れながら、これまで見過ごしていたかもしれない各条項の重要性について見ていきます。

②販売店契約は、企業間取引で最も頻繁に使われる契約の1つであり、英文契約の入門科目として最適と言えます。

これから英文契約について本格的に学びたいという方にも役立ちます。
(参考資料として、英文販売店契約のひな型をお配りします。)
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

wii海賊版で逮捕 概要 愛知県警生活経済課と千種署は、平成23年10月19日、権利者に無断で複製したゲームソフトを販売する目的で所持していた愛媛県八幡浜市の農業男性(33歳)を著作権法違反(海賊版頒布目的所持)の疑いで再逮捕し、10月21日、名古屋地検に送致した。 男性は、平成23年9月27日、任天堂(株)が著...
安愚楽牧場経営破綻 破産の経緯  テレビCMなどでも有名な栃木県那須にある安愚楽牧場が今月、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し破たんした。狂牛病BSE問題や口蹄疫、生肉レバーの問題などがあり牛肉に関連するビジネスには厳しい状況が続いていたが、最終的には、福島原発の事故の影響が追いうちになったと見られている。 ...
エホバの証人信者、輸血拒否で死亡-病院側代理人のあり方... 事案の概要 青森県立中央病院(青森市)で2011年4月、宗教団体「エホバの証人」の女性信者(当時65歳)の家族が、女性の信仰上の理由で手術中の輸血を拒否し、女性が死亡していたことが分かった。  女性は同月28日昼頃体調が悪化。急性硬膜下血腫と診断され、手術が必要となった。女性は意識不明だったため自...