デート商法などが取消対象へ、消費者契約法改正への動き

はじめに

内閣府消費者委員会は4日、消費者の恋愛感情や不安感などにつけ込んで高額商品を購入させるといった契約も取消の対象とする消費者契約法の改正をするべきとの報告書をまとめました。合理的な判断ができない状況下での契約から消費者を保護する必要があるとのことです。今回は現行の消費者契約法とデート商法の問題点について見ていきます。

消費者契約法とは

消費者契約法は、消費者と事業者との間の情報量や交渉力の格差にかんがみて、事業者の一定の不当な行為から消費者を保護することを目的とした法律です(1条)。訪問販売や電話勧誘などの特定の類型の取引を対象とした特定商取引法と違い、事業者と消費者間の取引全般に適用されます。消費者契約法では契約の際に不当行為があった場合に消費者はその契約を取り消すことができます。また契約に消費者が一方的に不利になるような条項が設けられた場合も、当該条項を無効とすることができます。現行法の規制内容を以下概観します。

取り消しうる不当行為

(1)不実告知
事業者が消費者に契約を勧誘するに際して、商品の内容、品質、効能、価格や支払い方法などの「重要事項」について事実と異なる告知を行い、消費者が誤認した場合に契約を取り消すことができます(4条1項1号)。

(2)断定的判断の提供
将来においてその価額、消費者が受け取るべき金額その他の将来の変動が不確実な事項について、「断定的判断を提供」し、消費者がその判断内容が確実であると誤認した場合に取り消すことができます(同項2号)。たとえば将来の相場が不確実であるにもかかわらず、確実に儲かりますなどと説明して投資を勧誘する場合が該当します。

(3)不利益事実の不告知
契約勧誘に際して事業者が、重要事項につき、消費者の利益になる旨を告げ、不利益となる事実を「故意に」告げなかったことにより消費者が不利益事実の不存在を誤認した場合に取り消すことができます(同条2項)。販売員の不注意で説明がなされなかった場合や、説明しようとしても消費者が聞かなかった場合は取り消すことができません。

(4)不退去
契約勧誘に際して、消費者が事業者に対し「住居」または「業務を行っている場所」から退去してほしい旨示したにもかかわらず退去しない場合、または消費者が退去したい旨示したにもかかわらず退去させない場合に、消費者が「困惑」して契約した場合に取り消すことができます(同条3項)。この退去する旨とは、契約するつもりはないなどの契約締結の拒絶や、身振り態度といったものも含まれます。

無効な条項

消費者契約法8条から10条には、無効な契約条項が規定されております。まず事業者の損害賠償責任免除条項が挙げられます(8条)。「いかなる場合においても当社は一切の賠償責任を負わない」といった内容のものです。次に過大な違約金条項(9条1号)や過大な遅延損害金条項があります。「契約撤回の場合には、違約金として契約代金の30%をいただきます」といった賠償額の予定が該当します。また過大な遅延損害金とは年14.6%を超える損害金を言います。その他消費者の利益を一方的に害する条項なども無効となります(10条)。

デート商法などにおける問題点

消費者の恋愛感情や、不安感などにつけこんだ契約の場合、上記のような消費者契約法上の取り消し原因に該当せず、従来はもっぱら民法の一般条項や不法行為法などによって救済が図られていました。デート商法に関する裁判例として、事業者の女性販売員が、高額なアクセサリーなどを信販会社のクレジット契約により購入させた例で裁判所は、「女性販売員と交際が実現するような錯覚を抱かせ契約する不公正な方法による取引で契約は無効」とし、信販会社についてもこのような販売方法を知っていて漫然とクレジット契約を締結したとして不法行為の助長をしているとし、不法行為責任を認めました(名古屋高裁平成21年2月19日)。このように消費者は裁判所で契約の公序良俗違反や事業者、信販会社の不法行為を主張立証しなければなりません。

コメント

以上のようにデート商法などの場合には消費者契約法による取り消しができず、また販売員は期間が過ぎるまで消費者に接触しクーリングオフをさせないといった事例が散見されました。上記裁判例のように違法で無効であると認められる場合もありますが、多くの場合は主張、立証が困難で認められない例のほうが多いと言えます。消費者委員会の発表でも、どのような場合に救済されるかが必ずしも明確でなく、客観的な要件のもとで取り消し得る場合を明文化すべきとし、「合理的な判断ができない状況」で締結した契約を取り消すことができる規定を新設する必要があるとしました。また現行の不利益事実の不告知についても「故意に」の要件が厳しく、消費者が立証困難との意見が多いことから「重大な過失」による場合を追加すべきとしています。これまで販売員の未熟や過失による不告知は対象となりませんでしたが、改正が実現した場合にはこれらも取り消される対象となります。改正の流れも踏まえ、どのような場合が違法な勧誘となるのか、また取り消されるのかを正確に把握しておくことが重要と言えるでしょう。

関連法律タグ:,
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

法務コラム 法務ニュース 法改正 消費者契約法
第99回MSサロン(名古屋会場)
2018年06月20日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「秘密保持契約 ~ その作成・交渉の実務及び英文となった場合の留意点」です。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース 法改正 消費者契約法
第98回MSサロン(大阪会場)
2018年06月13日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
大阪府大阪市北区
講師情報
河端 直 根本 俊太郎
■河端 直
経歴
2013年(平成25年)11月
司法研修所入所(67期)
2014年(平成26年)12月
大阪弁護士会に弁護士登録 なにわ共同法律事務所入所

著書
野村剛司編「法人破産申立て実践マニュアル」(青林書院)(共著)
スポーツ問題研究会編「Q&Aスポーツの法律問題」(民事法研究会)(共著)

■根本 俊太郎
経歴
2004年(平成16年)4月
株式会社朝日新聞社入社(記者職)
2016年(平成28年)11月
司法研修所入所(70期)
2017年(平成29年)12月
大阪弁護士会に弁護士登録 なにわ共同法律事務所入所
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「民法改正への対応」です。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース 法改正 消費者契約法
【名古屋】システム開発におけるトラブル発生時の対応《ITビジネス法務勉強会:第2回》
2018年07月12日(木)
15:00 ~ 17:00
3,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
田代 洋介
略歴:
愛知県名古屋市出身
2010年 静岡大学人文学部法学科卒業
2013年 南山大学法科大学院法務研究科修了
2014年 弁護士登録(67期 愛知県弁護士会)
川上・原法律事務所入所
2017年 オリンピア法律事務所 アソシエイト
ITに関する法律を学び、ビジネスに活かしていただくためのITビジネス法務セミナーです。第2回目のテーマはシステム開発におけるトラブル発生時の対応です。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース 法改正 消費者契約法
【名古屋】準拠法条項/裁判・仲裁条項《法務担当者のための英文契約セミナー:第2回》
2018年05月30日(水)
15:00 ~ 17:00
8,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田 圭介
略歴:
愛知県春日井市出身
愛知県立旭丘高校卒業
2004年 京都大学法学部卒業
2005年 弁護士登録(58期 第二東京弁護士会)
クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業入所
2008年 フランス系ラグジュアリーブランド日本支社(出向)
2010年 アメリカ、Duke University School of Law(法学部)LLM卒業
2010年 クリフォードチャンス香港オフィス(出向)
2011年 日系の大手財閥系総合商社のイギリス子会社の法務部(出向)
2013年 ニューヨーク州弁護士登録
2015年 IBS法律事務所開設(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー
英文契約をこれから担当・現在担当している法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第2回目のセミナー内容は準拠法条項/裁判・仲裁条項です。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース 法改正 消費者契約法
【名古屋】国際取引契約(英文契約)審査の基礎《法務担当者のための各分野の重要法務セミナー:第2回》
2018年05月29日(火)
15:00 ~ 17:00
8,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
各弁護士が日常の実務経験の中でご質問を受けることの多いトピックについてのセミナーです。今回のセミナー内容は国際取引契約(英文契約)審査の基礎です。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース 法改正 消費者契約法
【名古屋】債権保全・回収《初めての法務部から不祥事対応まで 基礎セミナー:第3回》
2018年06月06日(水)
14:00 ~ 17:00
10,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
川上 敦子 石井 大輔
■川上 敦子
略歴:
大阪教育大学附属高等学校卒業
1980年 京都大学法学部卒業
1982年 弁護士登録(34期 愛知県弁護士会)
青山法律事務所入所
1988年 川上法律事務所パートナー
2010年 川上・原法律事務所に名称変更
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー

■石井 大輔
略歴:
静岡県三島市出身
静岡県立沼津東高校普通科卒業
2011年 同志社大学法学部法律学科早期卒業
2014年 名古屋大学法科大学院未修コース修了
2015年 弁護士登録(68期愛知県弁護士会)
川上・原法律事務所入所
2017年 オリンピア法律事務所 アソシエイト
新規配属法務担当者の方・実務対応はしているものの不安がある法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第3回目のテーマは債権保全・回収です。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

欠陥住宅の設計・施工主の責任はどのようなときに問えるか?-最高裁平成23年7月21日判決-... 事案概要 設計・施工に欠陥がある建物についての問題は一時期世間を賑わせていたが、それが訴訟上問題となった事案において重要な判示が最高裁で出されている。事案は建築主から上記建物を購入した原告が、建物に欠陥があるとしてその設計・施行業者に不法行為に基づく損害賠償を請求したというものである。そして、...
【発達障害と雇用】会社の対応 発達障害とは そもそも発達障害とは、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」(発達障害者支援法2条1項)とされる。ここにあげられているのは①自閉症②アス...
最高裁が「有効」判決、残業代差し引く歩合制賃金規則について... はじめに タクシー運転手ら14人がタクシー会社に対し、歩合給から残業代を差し引く賃金規則は労基法に反し無効であるとして未払い賃金の支払を求めていた訴訟の上告審で28日、最高裁は無効ではない旨の判決を言い渡しました。今回はタクシー業界等で採用されている歩合制賃金での割増賃金について見ていきます。...