「レセプト債」販売会社元社長らを逮捕、ファンド規制について

はじめに

千葉地検は15日、レセプト債を発行していたファンド運営会社「オプティファクター」(東京都)の元社長の児泉一容疑者ら3人を金融商品取引法違反の疑いで逮捕しました。投資家にレセプト債を販売するに際して虚偽の説明をしていた疑いがあるとのことです。今回は金商法が規制するファンドと風説の流布・偽計について見ていきます。

事件の概要

ファンド運営会社である株式会社オプティファクター及びその関連会社は証券会社4社を通じていわゆるレセプト債を販売しておりました。証券取引等監視委員会の調査によりますと、昨年10月末の時点での投資家から集めた発行残高は約227億円に登る一方で実際にレセプトをの買い取りに使用されたのは23億円に過ぎず、このような資金の実態は同社がレセプト債の発行事業を始めた当初から認められたとされております。同社は投資家から集めた資金をレセプト買い取りではなく他に流用し、投資家への元利金償還は新たにレセプト債を発行して補填を繰り返していた疑いが持たれております。証券会社4社には虚偽を運用実績報告書を送付し、投資家には「安全性の高い商品」と嘘の説明をしていたとされております。

レセプト債とは

病院等の医療機関が診療を行った際、一般的に患者は1割~3割の診療報酬を支払います。残りは医療機関が健康保険組合に請求することになります。この請求は手続が複雑で実際に医療機関に支払われるまでに約2ヶ月ほどかかります。この医療機関が健康保険組合に請求する際の明細書をレセプトと言います。資金繰りが厳しく早急に資金調達をしたい医療機関から割安でこの報酬債権を買い取り証券化して販売したものをレセプト債と言います。レセプト債の債務者は公的機関である健康保険組合であることから債務不履行に陥る可能性ほぼ皆無であり、レセプト債はその意味で安全な金融商品と言えます。

金商法によるファンド規制

ファンドとは投資家から資金を集め有価証券等に投資し、それによって得た利益を投資家に配当することを業として行うことを言います。有価証券やデリバティブの販売を自ら募集して行う場合は第二種金融商品取引業に該当し内閣総理大臣の登録を受ける必要があります(金商法29条)。登録を受けたファンドは金商法条様々な規制を受けることになります。具体的には金融商品の広告をする際に利益の見込みについて事実に反する表示が禁止され、リスクについてはわかりやすく表示すること(37条)、契約締結前には契約内容や損失の危険等を記載した書面の交付義務(37条の3)、虚偽の事実や不確実な事項の断定的説明による勧誘の禁止(38条)、損失補填の禁止(39条)等が挙げられます。

風説の流布・偽計の禁止

金商法では上記の規制の他に禁止行為として風説の流布、偽計を規定しております。158条によりますと、「有価証券の募集、売出し若しくは売買その他の取引若しくはデリバティブ取引等のため・・・又は有価証券等の・・・相場の変動を図る目的をもって、風説を流布し、偽計を用い・・・てはならない」としています。風説とは噂や合理的根拠のない風評等を言います。自己の保有する銘柄が高騰するといった虚偽の情報をネット等に流すことが典型例と言えます。そして偽計とは他人に錯誤を生じさせるため詐欺的ないし不公正な策略、手段を用いることを言うとされております。投資家や証券会社に実態とは違う虚偽の報告をし金融商品を高値で売却を行う等が典型例です。違反した場合には10年以下の懲役、1千万円以下の罰金または併科、法人には7億円以下の罰金の罰則が規定されております(197条1項5号)。また風説の流布、偽計により「有価証券等の価格に影響を与えた」場合、当該違反行為によって得た利益(差額)分の額を課徴金として納付命令が出されることがあります(173条)。

コメント

レセプト債は上記のとおり本来は安全性が高く堅実な金融商品と言え、これまでも多くの投資家に販売されてまいりました。しかし本件では実際にはレセプトは購入されておらず他に流用し、次々新しく販売することによって自転車操業式に元利金の償還を行っておりました。このような実情を伏せ、投資家には安全であると虚偽の説明をして錯誤に陥らせ本件「レセプト債」を販売していたことから「偽計を用いて」「募集」したことになります。リスクを適切に説明せずに多額の資金を集めることによって多くの被害を出しやすい投資ファンドには近年規制が強化されてきております。平成16年改正での課徴金制度導入もその一環と言えます。反面レセプト債のように債権の証券化は多様化が進んでおります。証券化した債権等の取引業を行う際には金商法上、登録が必要か、またどのような義務が発生するかを適切に把握することが重要と言えるでしょう。

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本記事は、約1年4ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
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2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー    
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設

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第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員 

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2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士

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1961年神戸市生まれ
中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、日本AT&T㈱(米系)契約課長、松下冷機株式会社法務室主事、
セジデム株式会社(仏系)コーポレートサービス部統括部長・法務部長兼任等、を歴任し、現職。
*企業名は当時のまま。
※日本企業・外資系企業双方で通算30年以上の企業法務・国際法務の経験を有する現役の企業法務責任者です。
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