公取委がふくおかFGと十八銀の統合を審査、企業結合手続について

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はじめに

来年4月に予定している長崎県のふくおかファイナンシャルグループと十八銀行の経営統合について公取委の審査が難航していることがわかりました。同県内で1位と2位の融資シェアを誇る両社の統合は自由競争を阻害するおそれが強いと見ているとのこと。今回は企業結合の規制と手続について見ていきます。

事案の概要

ふくおかファイナンシャルグループ(FG)と十八銀行は来年4月に経営統合し、その1年後にはふくおかFG傘下の親和銀行(佐世保市)と十八銀行の合併を予定しております。それに先立ち公取委の審査が現在行われておりますが、長崎県内での融資シェア1位と2位の統合であることから公取委は慎重な姿勢を取っており当初予定されていた合併契約と臨時株主総会も延期されております。今回の統合が実現した場合、長崎県内における地銀としての融資シェアは7割を超える見通しであり、金融機関同士の競争が低下し、貸出金利が高止まりして利用者に不利益を及ぼす可能性が高いということです。公取委は店舗の一部を他行に譲渡するなどの競争を阻害しない手段を講じることを求めていますが金融庁は銀行にとって店舗は顧客基盤そのものであり非現実的と批判しております。現在両社は統合を半年延期する予定としております。

企業結合規制について

独占禁止法の4章では株式保有や合併、会社分割等のいわゆる企業結合について規制を設けております。企業結合は会社同士の経営の合理化や効率化を図り企業を再編するための重要な手段ですが、同時に市場においては寡占をもたらし自由な競争を阻害する恐れも内包しております。そこで独禁法では一定の規模の会社が結合を予定している場合には「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる」かどうかを事前に審査することとしております。また銀行や保険会社が一般事業会社の株式を保有する場合、議決権の5%(保険会社は10%)を超えての保有は公取委の認可を必要としております。

事前届出を要する場合

合併や株式保有、新設分割を予定している場合、当事会社の1社の国内売上高が200億円を超え、他の会社の1社の国内売上高が50億円を超える場合には公取委に事前届出を行う必要があります(10条2項、15条2項、15条の2第2項等)。事前届出書には当事会社の定款、合併契約書の写し、直近1事業年度の貸借対照表と損益計算書、有力株主の名簿、企業結合集団の最終親会社の有価証券報告書等を添付することになります。届出が受理された日から原則30日間が結合禁止期間となり、その期間で公取委が審査を行います。報告や資料の追加提出が求められた場合は届出受理日から120日または追加提出の日から90日以内に排除措置を行うか行わないかを決定することとなります。問題解消を求められたが履行していない場合は問題解消期限の日から1年間は排除措置を行うことができます。

審査内容

届出が提出されますと、公取委は「一定の取引分野」を画定し、そこでの「競争を実質的に制限することとな」らないかを審査することになります。公取委のガイドラインによりますと、一定の取引分野とはいわゆる市場のことで、需要者からみた代替性の観点から商品範囲と地理的範囲が画定されます。簡単に説明しますと、一方の商品を値上げしたら需要者は他方の商品を買うという関係が成り立つ範囲が一定の取引分野となります。例えばコンビニとスーパーマーケットは消費者から見れば用途目的が異なり、基本的には代替性がなく市場は異なると言えます。そして競争を実質的に制限するとは基本的に私的独占や不当な取引制限(3条)と同様で市場支配力を形成、維持、強化することとなる場合が該当します。つまり価格、品質、流通量等をある程度自由にできる常態を言います。判断にあたっては結合によるシェアの推移、競合他者の供給余力、競争圧力、他業種からの参入圧力等を総合的に検討します。他社の勢いも強く、他業種業者も参入する可能性が高いといった場合には支配力は形成できないということになります。

コメント

本件でふくおかFGは人口減のペースが速い長崎県でも強固な基盤を持つ銀行ができれば逆風に向かっていけるとし、統合に意欲を見せております。しかし公取委は県内で7割を超えるシェアに達することに強い懸念を持っており融資市場における寡占化が進み金利の上昇により利用者の不利益となるとしています。たしかに他県における地銀のシェアを見ても最大の常陽銀行で5割程度であることからすれば、県内で7割を超える今回の統合は簡単には承認することはできないのも頷けるかもしれません。公取委は通常、問題解消措置として店舗を競争他社に譲渡することを条件にする場合があります。しかし店舗の割譲は経営基盤を直接減少させるもので、経営の合理化と効率化を目指す合併の効果を相当阻害することから簡単には承服できないと言えるでしょう。ふくおかFGと十八銀の統合は今後も難航することが予想されます。経営統合の際は市場シェアや競争他社の動き、需要者に与える影響等を検討して、市場支配力の形成とはならないことを説得的に説明する準備が重要と言えるでしょう。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約3年2ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
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[著者情報] mhayashi

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2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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