日本振興銀行の問題点(1) ~所有と経営の分離が不十分~

 日本振興銀行の木村剛前会長の指示によるメール削除指示が、銀行法違反(検査忌避)にあたるとして、同会長が逮捕された事件。木村前会長らは昨年6月~今年3月に行われた金融庁の立ち入り検査の際、破綻した商工ローン大手のSFCGとの債権取引や、融資先が加盟する中小企業振興ネットワークの会員企業との取引に関するメールなど約700通を保管先のサーバーから意図的に削除し、検査を妨害した疑いが持たれている。

 そのSFCGとの債権取引は、信託銀行との二重譲渡の疑いがもたれていた。そのため、債権取引にかかる執行役会において、コンプライアンスの観点から、実行に反対する執行役もいた。

 その際、木村前会長は、株主代表訴訟を提起して解任をチラつかせながら(※)、執行役1人1人に意思を確認し、反対派執行役の声を封じていったという。結果として、反対派執行役4人が会社を去ることになった。
  
 執行役会が開催された時期、木村前会長は日本振興銀行の株式20%を保有していた。委員会設置会社の制度趣旨として、執行役に業務執行を委ねることで、経営の合理化・適正化を図る点がある。
 株式会社・委員会設置会社においては、会社の実質的所有者である株主と、経営陣である役員とを分離することで、より合理的・適正な経営を実践することを目的としている。
 
 今回の日本振興銀行の事件では、代表執行役が大株主であったことで、所有と経営の分離が不十分であり、経営者としての立場で行動すべき木村前会長が、大株主としての立場を濫用し、意見を通したことにより、結果としてかえって経営の適正化が阻害されてしまったいえよう。

※ 株主代表訴訟(解任の訴え、会社法854条)
 役員の職務の執行に関し不正の行為、当該役員を解任する旨の議決が株主総会において否決されたとき、総株主の議決権の3%以上の議決権を6ヶ月以上保有する株主は、当該役員の解任を請求する事ができる。なお、株主総会において、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数(定款の定めがある場合にはそれによる)によって、役員を解任する事ができる。(会社法329条1項、339条1項)

企業法務ナビよりお知らせ
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2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
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編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年),『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年),『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など,著作・論文多数


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