ホシザキ定時総会で株主から批判、決算報告書とは

はじめに

 ホシザキは3月27日の定時株主総会で子会社の不適切取引により決算報告ができなかったことがわかりました。株主からはコンプライアンスを問う声が相次いだとのことです。今回は定時総会で提出する必要がある決算報告書等について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、業務用厨房機器大手のホシザキ(愛知県豊明市)は昨年関連子会社であるホシザキ東海で発覚した不適切取引の影響により有価証券報告書の作成が遅延し、定時総会で決算報告ができない異例の事態となったとされます。ホシザキ東海では昨年内部通報によって工事の架空発注等の不適切取引が行われていたことが発覚し社内調査委員会が設置されております。今後第三者委員会の調査を経て決算を確定し7月までに臨時総会を開催して決算報告を行う予定となっております。

決算報告書とは

 決算報告書とは1事業年度ごとの決算結果をまとめた書類のことを言い、会社法や金商法、法人税法などによって作成・提出が義務付けられております。会社法で定められている、いわゆる計算書類の種類としては①貸借対照表、②損益計算書、③株主資本等変動計算書、④個別注記表が挙げられ、それらに加えて事業報告書と附属明細書の作成が必要です(会社法435条)。法人税法でもほぼ同様のものが必要とされ、金商法では上場企業など一定の企業はより詳細な有価証券報告書の提出が義務付けられております(金商法24条1項)。

決算報告書等の承認手続き

 取締役会設置会社では上記決算報告書等は取締役会の承認を、監査役、会計監査人設置会社ではそれらの監査を受けた上で定時株主総会に提出され株主総会による承認決議を受けることとなります(436条、438条)。なお会計監査人設置会社の場合、会計監査人による監査報告にいわゆる無限定適正意見が付されている場合は株主総会での承認決議は不要となり報告だけで足りることとなります(439条)。これら計算書類等は定時総会の2週間(取締役会非設置会社では1週間)前から5年間本店に備え置き、株主や債権者の閲覧に供することとなります(442条)。また備え置きとは関係なく書類自体は10年間保存する必要があります(435条4項)。そして定時総会終結後貸借対照表は公告することとなります(440条1項、4項)。

違反した場合

 これらの決算報告書等に虚偽の記載をした場合は100万円以下の過料が課される場合があります(976条7号)。また上場企業等の金商法が適用される場合、有価証券報告書等に虚偽記載を行った場合、10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはこれらの併科となり、会社自体にも7億円以下の罰金が科されることがあります(金商法197条、207条)。いわゆる粉飾決算もこの一種と言えます。

コメント

 本件でホシザキは東証一部および明証一部に上場する、金商法上の有価証券報告書提出会社となります。通常の決算報告書に加え有価証券報告書の作成と届け出が必要となります。今回は子会社の不祥事により決算書の確定が遅れており定時総会で承認決議ができず、以後臨時総会の招集が必要となっております。このように決算報告書は公開会社、上場会社では扱いがかなり厳格なものとなっており企業には相当な負担となります。一方で零細な中小企業などでは必要な決算公告等が適法に行われていないことが多いと言われております。なお以前取り上げた特例有限会社や持分会社は計算書類等の作成は必要ですが公告は不要です。公開会社や上場会社でない場合でもこれら決算報告書が正しく作成され承認、公告がなされているか今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。

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1987年東京大学法学部卒業。
89年弁護士登録。
95年ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業。
00年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画。
08年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)。
16年より18年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授。
19年ベンチャーラボ法律事務所開設。
主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『AI・IoT時代の企業法務 』(共著)、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。


■柴野 相雄(TMI総合法律事務所 パートナー弁護士)

02年弁護士登録。
10年ワシントン大学ロースクール(知的財産法コース)卒業(LL.M.)、同年サンフランシスコのモルガン・ルイス&バッキアス法律事務所勤務。
16年慶應義塾大学法科大学院非常勤教員就任(知的財産法務WP)、19年ISO/PC 317(Consumer protection: privacy by design for consumer goods and services)国内審議委員就任。
主にIT、インターネット、広告、メディア、エンタテインメントビジネスに関する法分野の裁判、仲裁および法律相談を多く扱う。

『IoT・AIビジネスに関するデータ保護と独禁法上の留意点』(Business Law Journal、18年4~6月号)、『[座談会]AIの活用と今後の労務管理上の課題』(労務事情、18年1月合併号)など著書多数。


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14~15年外務省経済局政策課専門員。
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97年より創英国際特許法律事務所勤務、04年ワシントンDC地区のオリフ法律事務所に駐在。
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2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
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吉川 達夫
ニューヨーク州弁護士/外資系企業 VP, General Counsel

外資系法務本部長、駒澤大学法科大学院、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師
元Apple Japan法務本部長、元伊藤忠商事法務部、元Temple Law School日本校客員教授。上智大学法学部、Georgetown Univ. Law Center卒

編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

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弁護士(東京弁護士会所属)
ニューヨーク州弁護士
税理士、弁理士

1991年 東京大学法学部在学中、国家公務員試験I種・司法試験に各合格
1992年 東京大学法学部卒業後、新日本製鐵株式会社入社
1996年 弁護士登録
1996年~1998年 国内中堅法律事務所において、企業法務・商事紛争のほか、一般民事・家事・刑事事件、特殊事件(企業再建・著作権・芸能エンターテインメント関連事案・労働事件・民事介入暴力事件等)等の国内法務案件を幅広く取り扱う
1998年 渡米し、ペンシルヴァニア大学ロースクール(米国フィラデルフィア市)にて、企業法、投資規制法、企業コンプライアンスプログラム、財務会計論等を学ぶ
1999年 同大学法学修士課程(LL.M.)卒業 同年米国ニューヨーク州司法試験 合格
1999年~2000年 Kirkland & Ellis 法律事務所(米国シカゴ市)に勤務し、企業法務、M&A、国際合弁、ライセンス契約、コンプライアンス法務等を担当
2001年 中島・宮本・畑中法律事務所(現名称:中島・宮本・溝口法律事務所)にパートナー弁護士(共同経営者)として参画
2006年 弁護士法人畑中鐵丸法律事務所を設立

「こんな法務じゃ会社がつぶれる」(第一法規、2010)、「こんな法務じゃ会社があぶない」(第一法規、2016)「企業法務バイブル[第2版]」(弘文堂、2013)等著書多数
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東京大学法学部卒業後、NTTコミュニケーションズ入社。
同社在職中に、法科大学院の夜間コースに通学、2007年に弁護士登録。
2010~2012年の2年間、任期付公務員として総務省総合通信基盤局にて勤務。
電波法に基づく新制度について、法改正の他、税務面の調査等も担当し、国税庁との協議等に携わる。
任期満了後、光和総合法律事務所にパートナーとして復職、ビジネス・行政の視点も踏まえた幅広いリーガル・サポートを提供している。

近著に『ベーシック企業法務事典』(編著)、『税務コンプライアンスのための企業法務戦略』(共著)、『データ戦力と法律』(編著)他多数。

主催
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