消費者団体がUSJの提訴検討、消費者契約法10条について

はじめに

 大阪の消費者団体がユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を相手取り提訴を検討していることがわかりました。チケットの転売等を禁止する規約が消費者契約法に違反しているとしています。今回は消費者契約法10条について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、USJの利用規約ではチケットについて第三者に転売したり、転売のために提供することは営利目的の有無にかかわらず全面的に禁止となっており、また理由の如何にかかわらず購入後は一切キャンセルができないとされ、客側に解除・無効事由が存在する場合に限りキャンセルできるとされます。つまりUSJ側からはキャンセルは可能であるが、客側からはできない旨が規定されております。これに対し「消費者支援機構関西」は改善を申し入れたところ拒否され、差止を求める訴えの提起を検討しているとされます。

消費者契約法の規制

 消費者契約法10条によりますと、消費者の不作為をもって契約成立とみなす条項など、法令中の「公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して」、信義則(民法1条2項)に反して「消費者の利益を一方的にがいするもの」は無効としています。一見するとわかりにくい条文ですが、民法や商法の任意規定を排除した条項が信義則に反して一方的に消費者の利益を害している場合ということです。冒頭にその例が置かれており、一方的に商品を送りつけ、不要である旨を通知しない限り自動的に継続的契約が成立するといった条項は無効と示しております。

10条に関する裁判例

 消費者契約法10条がよく問題となる例としては賃貸物件の敷金が挙げられます。判例では敷金の一部は賃借人に返還されない、いわゆる「敷引」特約について、一般的に無効とは言えないが「その額が高額に過ぎる」場合には賃料等が相場よりも大幅に低額などといった事情が無い限り無効としています(最判平成23年3月24日)。また介護サービス付賃貸マンションの入居金として600万円を支払っていた例では、入居金の法的性質は入居後の医師や看護師等によるサービスの対価であるとして、その対価を提供していなかったことから無効であるとしました(大阪高裁平成22年8月31日)。

チケット転売に関して

 本件では消費者がチケットの転売をすることを規約で禁止しておりますが、昨年12月に成立し今年6月に施行予定のチケット不正転売禁止法についても触れておきます。本法で規制されるチケット転売は、チケット発行者または販売者が同意の無い有償譲渡を禁止し、興行の日時、場所、座席等が指定されているチケットに関し、業として高値で販売することまたはその目的で譲り受けることとされます。つまり転売業者による営利目的の転売が禁止されるというわけです。一般消費者が自ら使用できなくなった等の理由による転売は該当しません。

コメント

 本件では消費者団体側の主張によりますと、USJの入場チケットは消費者に対し施設、アトラクションなどのサービスを提供し、それに対して消費者が対価を支払うという民法上の準委任契約であり原則としていつでも解除ができるとしています。またチケット自体は無記名債券であり原則として消費者は事由に転売できるものとし、それらを一方的に全面禁止とするのは違法としています。消費者契約法10条に反するかどうかについては裁判所は個別の事案についてその法的意味や趣旨、実質的な利害などから総合的に判断してるように思われます。本件チケットについても10条に違反するかどうかの判断は明確ではないと言えます。以上のように10条は条文の規定も抽象的で違反するかの判断は難しいと言えますが、合理的な理由なく一方的に消費者側の権利を制限する場合は違法の疑いが強くなります。今一度約款や規約の内容を見直しておくことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

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■淵邊 善彦
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1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

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