エム・テックが破産、契約の行方について

はじめに

 総合建設業「エム・テック」が20日、東京地裁により破産手続き開始決定を受けていたことがわかりました。これにより全国88カ所で契約が解除されたとのことです。今回は破産法による契約の処理について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、エム・テックは独自のPC工法やPCF工法を有し、国交省や道路公団などから多くの工事を受注して実績を残していたとされます。近年も震災復興需要により高い売上を計上していたものの、支払いトラブルや不透明な取引が多く、2017年に民事再生法適用を申請、2018年2月から破産手続きに移行したとのことです。負債総額や約253億円にのぼり、契約していた工事は全国88カ所で総額約550億円とされております。

破産手続きとは

 裁判所により破産手続開始決定がなされると、破産管財人が選任され、債権債務が精算され会社は消滅することになります。破産者の財産は換価処分され、破産財団となり債権者に配当されていきます。以後も会社が継続することを前提とした民事再生や会社更生などの再生型倒産手続きとは違い、破産は精算型倒産手続きと言われる所以と言えます。破産手続きで重要な点はすでに締結されている契約の処理です。以下具体的に見ていきます。

双方未履行双務契約

 破産者が破産前に締結していた契約はどのように処理されるのでしょうか。破産法53条1項によりますと、「双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは」破産管財人は契約解除、または履行請求を行うことができるとされております。双方未履行双務契約と呼ばれるもので、当事者のいずれもがまだ履行していない売買契約や請負契約などが該当します。破産管財人はより破産財団の増加が見込める方を選択することになります。たとえば相手方よりも他に売却したほうが高く売れるという場合は解除し、そうでない場合は履行請求するといった判断がなされます。なお相手方は破産管財人に相当期間を定めて解除か履行請求のどちらを選択するかを確答するよう求めることができ、期間内に返事がない場合は解除したものとみなされます(同2項)。

それ以外の契約

 上記は契約当事者が互いに債務を負う双務契約で、しかも互いに債務を未だ履行していない場合の話でしたが、それ以外の場合はどうでしょうか。双務契約で既に破産者側は履行している場合は破産財団に属する債権ということになり相手に履行を求めることになります。逆に相手方が既に履行している場合は、相手方の債権は破産債権となり配当から満足することになります。片務契約の場合も同様です。破産者の債権は破産財団となり、相手方の債権は破産債権となります。これらとは別に否認権により解除されることがあります(160条等)。詐害的な取引や不公平な弁済などが対象です。

コメント

 本件でエム・テック社は倒産以前に全国88カ所で約550億円分の工事案件を抱えておりました。これらはいわゆる請負契約で双務契約に該当します。そして双務契約は仕事を完成させ、それに対して報酬を支払うことで完了することから、いずれも双方未履行双務契約ということになります。破産管財人の判断により工事を完成させた上で報酬を請求することも、解除することも可能と言えます。本件では解除がなされたとのことです。以上のように会社が倒産した場合は既に締結している契約の行方は管財人等の判断で解除されたり、履行を求められることがあります。取引相手会社の経営状態が不透明になり倒産のおそれが生じた場合は債権の回収だけでなく、自社の債務の行方も予め予測して対応することが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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01年東京大学法学部卒業
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12年米国Vanderbilt University卒業(LL.M.)
13年ニューヨーク州弁護士登録、英国University College London卒業(LL.M.)
労働法、社会保険・労働保険・年金に関連する法律、会社法、個人情報保護法等の法分野に関する業務を中心に、労働案件、一般企業法務の案件、紛争案件等を取り扱っている。
著作に『仕事でよく使う・すぐに応用できるビジネス契約書作成ガイド』(共著)(清文社、2017)、『実務Q&Aシリーズ 懲戒処分・解雇』(共著)(労務行政、2017)等がある。

■荻野聡之
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/アソシエイト弁護士

03年東京大学法学部卒業
06年東京大学法科大学院卒業(法務博士(専門職))
08年弁護士登録
労働法、危機管理、事業再生等の法分野に関する業務を中心に取り扱っている。
著作に『企業のための労働実務ガイド1 Q&Aと書式 解雇・退職』(共著)(商事法務、2013)、『労使双方の視点で考える 27のケースから学ぶ労働事件解決の実務』(共著)(日本法令、2015)、『M&Aにおける労働法務DDのポイント』(共著)(商事法務、2017年)等がある。

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1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。

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