「はれのひ」賃金不払いで不起訴、最低賃金法の規制について

はじめに

 今年の成人式直前に倒産した着物店「はれのひ」(横浜市)が従業員に賃金を支払わなかったとして横浜南労基署に書類送検されていた問題で、横浜地検は5日、不起訴処分としていたことがわかりました。従業員らの労基署への相談で発覚したものとのことです。今回は賃金不払いに対する法規制について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、「はれのひ」は今年1月の成人式直前に閉店し多くの新成人が着物を使用できなかったことで問題化しましたが、同社の元社長篠崎容疑者は粉飾決算を行うなどして銀行から融資をだまし取ったとして現在詐欺罪で起訴されております。同社は当時の従業員27人に対し昨年8月分の賃金計約510万円を支払っていなかった疑いが従業員らからの相談で発覚したとのことです。横浜南労基署は複数回の立入検査、監督指導を経て先月12日に書類送検したとされております。

最低賃金法による規制

 最低賃金法によりますと、使用者は労働者に対して「最低賃金以上の賃金を支払わなければならない」としています(4条1項)。そして労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めてもその部分は無効となり、「最低賃金と同様の定をしたもの」とみなされます(同2項)。この規定が適用されるのはいわゆる所定内賃金で、時間外割増賃金や休日、深夜手当などの残業代、ボーナスなどは含まれません(同3項)。そして最低賃金額は地域ごとに最低賃金審議会の諮問を経て厚生労働大臣または都道府県労働局長が決定します(10条1項)。一人の労働者に複数の最低賃金が適用される場合には一番高いものが適用されることになります(6条1項)。この規定に違反した場合には罰則として50万円以下の罰金が科される場合があります(40条)

労働基準法による規制

 労働基準法では「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」としています(24条2項)。この「賃金」にはボーナスは含まれませんが、上記最低賃金法の規定と違い残業代や割増賃金等は含まれることになります。そしてこの規定に違反した場合にもやはり罰則があり、使用者は30万円以下の罰金が科されることがあります(120条)。

最低賃金法と労基法の規定の関係

 以上のように賃金不払いに対しては最低賃金法と労基法の規定が存在します。では両者はどのような関係でどのように適用されるのでしょうか。まず最低賃金額未満が支払われている場合は最低賃金法違反となります。全く支払われていない場合は刑事罰の重い方が適用されることになります(いわゆる観念的競合、昭和57年2月12日通達)。つまり50万円以下の罰金が規定されている最低賃金法が適用されることになります。

コメント

 本件ではれのひは昨年8月分の給与は全額支払っていなかったとされております。この場合は最低賃金法4条違反として処理されることになります。横浜地検は不起訴処分にしましたが理由については明らかにされていないとのことです。以上のように賃金の支払い義務に関しては最低賃金法と労基法という2つの法律によって規律されております。最低賃金については障害があり労働能力が低い場合と試用期間である場合、その他職業能力開発促進法に基づく職業訓練である場合には適用されないことになっております(7条)。しかしそれ以外では地域ごとの最低賃金以上で支払う必要があり、それを下回っている場合や不払いの場合は労基署による立ち入り調査や指導などが入ることが予想されます。今一度雇用契約や協定を見直すことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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東北大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了

平成27年改正個人情報保護法の全面施行前後に、
個人情報保護委員会事務局において、
法令関係とデータの利活用関係を担当

近時の著書等には『個人情報管理ハンドブック[第4版]』(商事法務、2018)、
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