東芝が7000億円分自社株買い、自己株式取得について

はじめに

東芝は13日、7000億円程度の自社株買いを行う予定であることを発表しました。昨年末の第三者割当増資や東芝メモリの売却によって財務体質が改善したことを受け、株主に還元することが目的とされております。今回は自己株式取得規制について見ていきます。

事案の概要

東芝の発表等によりますと、東芝はかねてより計画されていた連結子会社である東芝メモリの全株式を買収目的会社である株式会社Pangeaへの譲渡を今月1日に完了したとされます。譲渡価格は約2兆3億円で、さらに東芝メモリから特別配当として約1180億円を受けたとのことです。今年3月末時点での貸借対照表では分配可能額はマイナスとなっており、東芝メモリ売却益などを計上するために臨時決算を行い、財源を確保した上で7000億円程度の自己株式取得による株主還元を行う方針です。時期については可能な限り早く行うとしています。

自己株式取得とは

株式会社が自らの株式を取得することを自己株式取得といいます。旧商法下では資本の空洞化を招き、株主平等に反する、会社支配の公正を害するなどの理由により厳しく制限されておりました。しかし現行会社法下では一定の規制のもとで原則自由に行えることとなっております。会社法上自己株式の取得は株主との合意による取得、取得請求権付株式の取得、取得条項付株式の取得、譲渡制限付株式の譲渡承認を行わない場合の取得、単元未満株式の取得といった場合に認められております。

自己株式取得と財源規制

自己株式の取得は実質株主への出資の払い戻しであり、会社の財産的基盤を減少させ得ることから債権者保護のために一定の財源規制が課されております。自己株式取得の対価として株主に交付する金銭等の帳簿価格の総額が効力発生日の分配可能額を超えてはならないとされます(会社法461条1項)。自己株式を取得する場合は原則として財源規制に服しますが、単元未満株式の買い取りや合併や事業譲渡により自己株式を譲り受ける場合等では例外的に財源規制は課されないことになります。

自己株式取得手続き

株主との合意により取得には、全株主を対象とする場合と特定の株主を対象とする場合に分かれます。取得に際しては取得数、対価、期間などを決定しますが、全株主を対象とする場合は株主総会の普通決議で、特定の株主を対象とする場合は特別決議で決定する必要があります(156条1項)。特定の株主からの取得の場合、他の株主は特定の株主に自己も含める内容の議案とするよう請求できます(売主追加請求160条)。この場合、会社は株主総会の2週間前までにその旨通知する必要があります。この売主追加請求は市場価格以下で取得する場合、非公開会社が株主の相続人から取得する場合、子会社から取得する場合、定款で定めている場合にはできません(161条~164条)。そして株主総会の決議に基づき取締役または取締役会決議によって実行することになります(157条2項)。

コメント

本件で東芝が予定している自己株式取得は株主還元を目的とするものであることから全株主を対象としたものであると考えられます。それ故に株主総会の普通決議で足ることとなります。また売主追加請求の手続きも不要です。しかし当然財源規制はかかることから株式取得の効力発生日に分配可能額がなくてはなりません。今後臨時決算により確保していくこととなります。自己株式取得は市場に増えすぎて株価が下がった場合の価格調整や敵対的買収防衛、また新株発行によらずにM&Aの対価を確保するという目的でも利用できます。どのような場合にどのような手続きが必要か、また財源規制はかかるのかを把握し、柔軟に利用していくことが重要と言えるでしょう。

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2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
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主な取り扱い分野は、人事労務関係・会社法務・民事全般

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編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年),『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年),『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など,著作・論文多数


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