ヤマハがJASRACに対抗、「音楽使用料」について

はじめに

JASRACが音楽教室での演奏からも著作権の使用料を徴収する方針を固めている問題でヤマハや河合など7団体は「音楽教室を守る会」を結成し対抗する構えを見せています。音楽教室のレッスンでの演奏からも使用料を取れるのか。今回はこの点について見ていきます。

事件の概要

日本音楽著作権協会(JASRAC)はヤマハや河合楽器製作所の音楽教室の演奏でもJASRACが管理する楽曲が使われているとして、年間受講料収入の2.5%の著作権料を徴収する方針を固めました。JASRACによりますとヤマハ、河合楽器製作所を含め国内には約1万1千ヶ所の音楽教室があり、そのうち9千ヶ所を徴収の対象とし個人教室からは当面除外するとしています。これに対しヤマハ音楽振興会、河合楽器製作所、島村楽器、全日本ピアノ指導者協会は3日、「音楽教室を守る会」を結成しました。同会によりますと演奏権が及ぶのは公衆に聞かせるための演奏であり、練習や指導のための演奏は該当しないと反論しています。

著作権とは

著作権、著作隣接権については以前にも取り上げましたがここでも簡単に触れておきます。著作権とは著作物を排他的に支配する権利を言います。著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものっであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を言うとされております(著作権法2条1号)。音楽を例に上げると、曲や歌詞について作曲家や作詞家に著作権が認められます。著作隣接権とはそういった楽曲を演奏したり録音することによって公衆に発信する人に認められる権利を言います。

著作権料について

著作権法22条によりますと、著作者はその著作物を公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として上演し又は演奏する権利を専有するとしています。そして38条では営利を目的とせず、聴衆から料金を受けない場合には公に上演し、演奏することができるとしています。つまり営利を目的とせずに演奏するだけである場合には著作権に抵触せず、著作権料を支払う必要がないということです。つまり本件で問題となっているのは音楽教室でレッスンとして演奏されることが「営利目的」と言えるか、また生徒相手でも「公衆」に該当するかということです。

判例の考え方

この「営利目的」「公衆」該当性については有名な判例が存在します。カラオケスナック店でホステスや客がカラオケ装置を使って歌唱することも「公衆」に聴かせることに該当するとし、また客の歌唱自体には「営利目的」は無いが店が設置したカラオケ装置を使いホステスらの勧めに従って客が歌唱することも、店の雰囲気を醸成するものであるから店の営業政策の一環であるとして、店の従業員が歌唱することと同視し「営利目的」に該当するとしています(最判昭和63年3月15日)。つまり他の客が聴く以上「公衆」に該当し、その雰囲気等を店が利用している以上「営利目的」該当するということです。店が著作物である楽曲によって利益を得ている以上、店自体が演奏していなくても使用料を支払うべきであるという価値判断が働いていると言えます。

コメント

JASRACも上記最高裁判例の考え方を使って音楽教室での楽曲使用に適用しようと考えたものと思われます。この判例の考え方から見ればたしかに講師や生徒が他の生徒の前で演奏する以上「公衆」に対して演奏していると見ることができるかもしれません。また音楽教室もその楽曲を使用することによって指導上の効率や雰囲気を醸成させ、それにより利益を得ていると考えるのであれば「営利目的」があると判断される可能性もあります。しかし一方で1対1のマンツーマン指導を行っている教室の場合はこの判例の考え方からしても「公衆」に演奏しているとは言えず。またカラオケと違ってJASRACが管理していないオリジナル曲や著作権の切れている古いクラシック曲を使うことも多い点を考えれば、JASRACの一律徴収方針には単純に判例の考え方を適用できないと言えます。今後の展開を注視する必要があるでしょう。店舗等で客等が楽曲を使用する場合には、店自体が使用していなくても使用料を徴収される可能性がある点を考慮しておくことが重要と言えるでしょう。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約1年4ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

企業 法務ニュース 知財ライセンス 著作権法
第99回MSサロン(名古屋会場)
2018年06月20日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「秘密保持契約 ~ その作成・交渉の実務及び英文となった場合の留意点」です。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 知財ライセンス 著作権法
第100回MSサロン(東京会場)
2018年07月06日(金)
19:00 ~ 21:00
2,000円
東京都新宿区
講師情報
岡 伸夫
1992年 京都大学法学部卒業
1994年 大阪弁護士会 登録 梅ケ枝中央法律事務所 
2000年 ハーバードロースクール 修士課程(LL.M)卒業
Masuda Funai Eifert & Mitchell 法律事務所(シカゴ)
2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー    
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設

弁護士会活動(2018年2月現在)
日本弁護士連合会 ひまわりキャリアサポート 委員
第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員 

企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士

主な著書
「アメリカのP&A取引と連邦預金保険公社の保護 債権管理 No.96」金融財政事情研究会
「米国インターネット法 最新の判例と法律に見る論点」ジェトロ 共著
「Q&A 災害をめぐる法律と税務」新日本法規 共著
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「GDPR施行後の取引実務」です。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 知財ライセンス 著作権法
【名古屋】人事・労務管理《初めての法務部から不祥事対応まで 基礎セミナー:第4回》
2018年06月20日(水)
14:00 ~ 17:00
10,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
竹内 千賀子 杉谷 聡
■竹内 千賀子
略歴:
愛知県一宮市出身
愛知県立一宮高校卒業
1998年 名古屋大学法学部法律学科卒業
1998年 一宮市役所入職(2001年3月まで)
2006年 弁護士登録(59期 東京弁護士会)
奧野総合法律事務所入所
2009年 日本証券業協会法務部(出向) 
2013年 せいりん総合法律事務所 パートナー(独立)
愛知県弁護士会に登録換え
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー

■杉谷 聡
略歴:
愛知県一宮市出身
愛知県立一宮高等学校卒業
2016年 一橋大学法学部卒業
2017年 弁護士登録(70期 愛知県弁護士会)
オリンピア法律事務所入所
新規配属法務担当者の方・実務対応はしているものの不安がある法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第4回目のテーマは人事・労務管理です。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 知財ライセンス 著作権法
【名古屋】広告関連法の基礎《法務担当者のための各分野の重要法務セミナー:第5回》
2018年06月22日(金)
15:00 ~ 17:00
2,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
田代 洋介
略歴:
愛知県名古屋市出身
2010年 静岡大学人文学部法学科卒業
2013年 南山大学法科大学院法務研究科修了
2014年 弁護士登録(67期 愛知県弁護士会)
川上・原法律事務所入所
2017年 オリンピア法律事務所 アソシエイト
各弁護士が日常の実務経験の中でご質問を受けることの多いトピックについてのセミナーです。今回のセミナー内容は広告関連法の基礎です。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 知財ライセンス 著作権法
【名古屋】サービス契約《法務担当者のための英文契約セミナー:第4回》
2018年06月27日(水)
15:00 ~ 17:00
8,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
英文契約をこれから担当・現在担当している法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第4回目のセミナー内容はサービス契約です。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 知財ライセンス 著作権法
『企業法務イングリッシュ・コミュニケーション』~企業法務パーソンのための実践英語コミュ力アップ講座!~
2018年07月03日(火)
13:30 ~ 16:00
15,000円(税込)
東京都新宿区
講師情報
登島 和弘
サイネオス・ヘルス合同会社
アジア太平洋地域法務責任者
*7月1日付にてインヴェンティヴ・ヘルス・ジャパン合同会社より社名変更予定

1961年神戸市生まれ
中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、日本AT&T㈱(米系)契約課長、松下冷機株式会社法務室主事、
セジデム株式会社(仏系)コーポレートサービス部統括部長・法務部長兼任等、を歴任し、現職。
*企業名は当時のまま。
※日本企業・外資系企業双方で通算30年以上の企業法務・国際法務の経験を有する現役の企業法務責任者です。
当社は、東京にて、企業法務パーソン(企業法務担当者・インハウスローヤー等)のためのビジネススクールを運営しています。
企業法務にまつわる「知識」を学ぶ研修・講座は世の中に数多くありますが、当社が運営するリーガルビジネススクール(LBS)は、
法務担当者としての「思考方法」や「仕事術」を学ぶことに焦点を当てています。

今回は、『企業法務イングリッシュ・コミュニケーション』講座を開催いたします。

日本企業・外資系企業を問わず、英語によるコミュニケーションが不可欠な時代。
しかし、残念ながら、企業法務パーソンのみなさんが実際のビジネスシーンで望まれる
適切な英語によるコミュニケーションの取り方にフォーカスした講座はあまりお目にかかりません。

この講座では、現役の外資系企業法務責任者が、ビジネスと企業法務の両方の目線から、
次の日から現場で使える英語による適切な企業法務コミュニケーション術を余すところなくお伝えします。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

中国レアアース輸出規制。日米欧、WTOに提訴!... 事案の概要 中国は、2010年からレアアースの輸出規制を強化し続けている。これについて中国側は、規制は、環境や資源の保護のために必要な措置であると主張している。 そして平成24年3月13日、アメリカ、欧州連合、日本は、中国のレアアースの輸出制限は世界貿易機構(WTO)の協定に違反するとして、...
1億2000万円の脱税容疑で東京国税局が告発 シリコンクエスト... 東京国税局は、「シリコンクエスト」(東京都港区)を法人税法脱税違反の疑いで、東京地検に告発した。同社はすでに修正申告を済ませた、としている。 「シリコンクエスト」は精密機器メーカーの「オリンパス」と共同で半導体技術を開発し、特許を取得。その際、「オリンパス」から研究開発費として受取ったが、架空の外...
取消訴訟でNIPPOが敗訴、建築確認と行政訴訟... はじめに 避難階段の不備などを理由として完成間近の文京区のマンションの建築確認を取り消した都の裁決を不服としてNIPPOと神鋼不動産が取り消しを求めていた訴訟で24日、東京地裁は請求を棄却していたことがわかりました。今回は建物の建築に必要な建築確認とそれを巡る行政訴訟について見ていきます。 ...