プライバシーはどうなる?タイで警察がLINEの監視を検討

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事案の概要

 タイの警察当局が、無料通話、メールアプリのLINEの管理者に、アクセス記録の閲覧を求めていることが、波紋を広げている。
 当局は、犯罪の容疑者のみを対象としているとはいうものの、プライバシーの問題を含んでいるだけに、今後更なる議論を呼びそうだ。

 タイでは、警察内部の情報伝達にLINEが導入されている。各警察署間で、業務連絡や、情報の伝達をスムーズに行うためだ。また、犯罪捜査や交通の取り締まりに対する効果も期待されていて、実際にそれなりの成果も出ているようである。
 しかし、今回の記録閲覧が認めらることになれば、警察業務の効率化という次元を超えたものとなる危険性がある。

 インラック首相は、ターゲットは一般公衆ではなく、(犯罪容疑のある)個人であるとして、一般国民の自由を制限するものではないとしている。
 しかし、犯罪の容疑のある者が対象といっても、その運用いかんによっては、対象者が、無制限に拡大される恐れがある。
 また、政府は、タイ王室に対する不敬な発言をネット上から、一掃することも目的としているとの指摘もある。(タイには、重い不敬罪がある)

 多くの専門家も政府に慎重な対応を求めている。タイは、個人情報保護の制度が整っていないので、当局が、個人の情報を扱う際には、より慎重な取扱いが求められるといった意見や、個人のプライベートデータにアクセスする際には、裁判所の令状をとるべきであるといった意見が存在する。

 LINE側は、利用者のプライバシーは、保護するとして、タイ当局からの正式な要求は、受け取っていないとしている。
 一方、警察当局者は、今週末にも、日本でLINEの代表者と会い、協力を求める意向である。

コメント

 政府による個人情報の監視といえば、NSA(アメリカ国家安全保障局)による個人情報収集を、元CIA職員が告発した事件が記憶に新しい。その記憶も生々しい中で、しかも今飛ぶ鳥を落とす勢いで、利用者を増やしている、LINE絡みの事案となれば、今回のタイ警察による監視案は、今後更なる波紋を呼びそうだ。
 LINEは今や、全世界で、利用者が、2億人に達し、タイにおいても1000万以上のユーザーがいるといわれている。
 そもそも警察における業務ツールとしてのLINEの導入は、上記のように、警察業務の向上という観点からなされた。
 そして、多くの企業においてもLINEのみならず、FacebookやTwitterなどのSNSが情報発信ツールとして利用されている。一方で、SNSに従業員が投稿した情報により、会社の信用が著しく傷つけられる事例も多発している。
ステーキ店ブロンコビリーでアルバイト店員が悪ふざけした写真をTwitterにアップして問題になったのは、記憶に新しいところである。法務ニュース(8月13日)参照

上記タイの事案は、専ら公権力とプライバシーの問題であるが、企業とSNSの関係を考える上でも、企業の担当者として注目すべき事案である。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約5年7ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
 
[著者情報] ryo

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