「65歳定年延長」問題、高齢者雇用で企業に重荷
2012/08/30 労務法務, 労働法全般, その他
概要
60歳の定年後も希望者全員を雇用することを企業に義務付ける改正高年齢者雇用安定法が29日、参議院本会議で可決・成立した。来年4月から厚生年金の受給開始年齢が引き上げられるのに対応し、定年を迎えた後に年金も給料も受け取れない「空白期間」が発生するのを防ぐ狙いがある。現行法と改正法の主な違いは以下。
【現行法】
1.対象者は能力、勤務態度等の労使協定で定めた条件を充足する者
2.雇入れ企業は定年を迎えた会社とその子会社
3.違反した場合は勧告措置
⇔
【改正法】
1.対象者は原則全員。今後除外事由(心身の健康状態が悪い場合等)を決定
2.雇入れ企業は定年を迎えた会社とその子会社に加え、グループ企業
3.指導や助言に従わない場合には企業名を公表
この中で、企業にとっても最も懸念されるのが「希望者は原則全員」という点である。現在も多くの企業(約10万9000社)は継続雇用制度を定めているが、その半分以上の企業は対象者を労使協定で定めた基準により選別している。厚労省としても、企業の負担を勘案して除外事由を定める方針ではあるが、その適用次第では「抜け穴」として利用されかねず、本改正法が骨抜きになる可能性も否定できない。
雇用のあり方
そこで、企業としてはどのような形で高齢者を円滑に雇用していくかが検討される必要がある。現行法の下では、年単位の期間雇用契約制度を導入している企業が数多く存在する。また、昔と同じ仕事をかつての後輩を上司にして続ける…というのは感情的にも難しいところがあることから、継続雇用者に若手の指導役を任せるという制度を導入し、効果を挙げている企業もある。
一方で、そもそも体力が物を言う業界(例えば運送業界等)では、高齢者の労働継続が現実問題として難しい為、業界内での雇用確保は困難ではないかと懸念されている。
賃金体系
また、年金の受給年齢の引き上げに伴い、継続雇用を希望する人はこれまでに比べ激増することが予想され、それに伴い企業の人件費も押し上げられることになり、賃金体系の見直しも必要になってくる。
現在は一旦定年退職した上で低めの賃金で再雇用するというやり方が多く採られているが、今後更に高齢(将来的には70歳?)までの雇用を見据えた社会づくりが行われるのであれば、若年層の雇用抑制だけでは本質的な解決とはならず、相対的に賃金の高い4、50代についても見直しのメスが入ることとなるであろう。年齢ではなく仕事の中身によって賃金が決まるのが理想である。
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