総務省 携帯「SIM」ロック解除へ
2014/10/16 消費者取引関連法務, 民法・商法, その他
事案の概要
政府が「日本再興戦略」内で掲げる「世界最高水準のIT社会の実現」を受けて、総務省の有識者会議は、2020年代に向けて世界最高レベルのICT(情報通信技術)の普及・発展を目指し、通信サービス向上を議論してきた。
今月8日、同有識者会議は、最終報告書を提示。同報告書において、携帯通信事業者が行っている「SIM」ロックが、利用者の自由な選択・利便性を妨げ、事業者間のサービス・料金の競争を阻害し、他社サービスへ乗り換える際のスイッチング・コスト増加の一因となっているとする。したがって、最近の移動通信の技術、サービス、市場環境、海外との交流の増加等を考えると、端末に最初から「 SIM」 ロックをかけないか、仮に 「SIM」 ロックをかけるとしても、一定期間経過後は、利用者の求めに応じ迅速、容易かつ利用者の負担なく解除に応じることが適当とし、「SIM」ロック解除の方向性を示した。
※スイッチング・コスト:ブランドを乗り換えることに伴い発生する金銭的ないし心理的コスト。
コメント
現状日本では、過去 10 年間、家計の消費支出総額が減少する一方で、携帯電話等の通信料は、8,217 円から11,710 円へと増加しており、負担感が増している。また、総務省の調査によれば、日本のスマートフォン料金は国際的に見ても割高で、特にデータ通信使用量少ない利用者の負担が高くなっている。
「SIM」ロックが解除されると、まず携帯会社の乗り換えがしやすくなり、端末を買い替えずに、料金のより安い他社に移れるなど、海外で自分の端末を使って現地の割安通信を利用することもできるようになる可能性が見えてきた。
しかし、「SIM」ロックを解除しても、既存の携帯通信事業者が利用者を囲い込む手段は残る。いわゆる「2年縛り」の契約期間・自動更新付契約である。現状、各社の利用者との契約期間は2年が基本で、2年契約を結ばない場合は利用料を割高にしている。2年契約の途中で解約すると高額の違約金が発生することも多い。同報告書では「2年縛り」の契約についての制度見直しは盛り込まれておらず、利用者の乗り換えが進まない可能性があり、「SIM」ロック解除だけでは実効性に欠ける。ただし、期間拘束・自動更新付契約を禁止するなどの全面的規制には、既存事業者の反発は大きく、制度見直しのハードルも高くなるだろう。まずは期間拘束・自動更新付契約の問題点、例えば解除料の発生しない解約期間の延長(現状1カ月程度)、更新月の利用者への通知義務化等といった点で見直し、利用者がサービス乗り換えを検討できる機会を確実に提供することが必要である。
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