著作権法改正、「電子出版権」創設。海賊版電子書籍対策で
2013/12/24   知財・ライセンス, 著作権法, その他

事案の概要

(1) 現状
  著作物を権利者の許可を得ずに複製した「海賊版」は、権利者に著作権収入が入らない。従って、著作権者にとっては抑制する必要がある。

 海賊版が「文書又は図画」であれば、出版権を持つ出版社が、出版権侵害を理由として、差し止め訴訟を提起することが出来る。
 しかし、海賊版が「電子書籍」である場合には、出版社は差し止め訴訟を提起することが出来ない。複製権を持つ著作権者が差し止め訴訟を提起しなければならない。しかし、著作権者は個人であり、海賊版の差し止め訴訟を提起することは、金銭的、時間的に難しい。従って、現状では、電子書籍の海賊版に対して、差し止め訴訟があまり提起されておらず、抑止があまり出来ていない。

※ 複製権 「著作物を複製する権利」(著作権法、以下同じ 21条)。複製する方法は、録画・録音、印刷や写真、模写(書き写し)、スキャナーなどにより電子的に読み取ること等全てを含む。
※ 出版権 複製権利者の設定により発生する(79条)、「設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもつて、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利」(80条)

(2) 法改正の内容
 著作権法を改正し、出版権の一部に位置付け、著作物を電子書籍へダウンロードさせる権利を、「電子出版権」とする。2013年12月20日に文化庁が決定。来年の通常国会に法改正案を提出する。 

「電子出版権」の内容
 電子出版権の発生には、出版権と同様に著作権者と出版社の間の設定行為が必要である。従って、著作権者は、①電子出版権を他人へ設定するかどうかを選択することが出来(電子出版権は出版権の設定と同時に必ず付与する必要はない)、②電子出版権を他人に設定すると決めた場合にも、出版権を設定した出版社と同じ会社に設定するかどうを選択することが出来る。
 電子出版権が出版社等に付与されれば、出版社等が電子書籍の海賊版に対し、差し止め訴訟を提起することが出来、電子書籍の海賊版を抑止する効果が期待される。
 
 なお、出版社側は、出版権を設定すると、設定行為を要せず当然に、電子出版権が出版権者に発生する案を提案していた。しかし、著作権者の権利を制限しすぎるとして採用されなかった。

関連サイト

著作権の簡単な解説(公益社団法人著作権情報センター)

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