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②最近の法改正の動きについて

執筆者: ECサイト運営企業法務部員
投稿日時: 2009-09-21 14:19:16

前回のコラムでは、これからECに対する規制法がどんどん出てくる恐れがある旨を記しました。今回は、既に法律として施行されているものについて、具体的に解説していきます。

「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(平成20年5月30日に成立。同年12月1日より施行。)

ECに限らず、インターネット上のサービスにおいて最も用いられているコミュニケーション手段は、Eメール(電子メール)です。即座に相手方に届き、送受信も手間がかからず、コストも低いという便利さから、積極的に導入されてきました。しかし、手間がかからず、コストも低いという点が皮肉にも「迷惑メール(スパムメール)」を生みました。

「迷惑メール」を送信する業者が無くならないのは、非常に儲かるからです。たとえば、「迷惑メールを開封して広告を閲覧してくれる確率」が、0.01%だとしても、1000万通送れば10万人が閲覧することになります。送信コストは非常に低廉なため、言ってしまえばいくらでも送信できます。他の広告と比べると、効率は悪いですが効果を上げやすいのです。

迷惑メール自体を根絶することは、上記の構造からすれば難しいと思いますが、放置するわけにもいきません。これら業者を取り締まるために現在最も広い規制を布いているのがこの「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(以下、特電法)になります。

 他方で、そもそも迷惑メール業者に「メールアドレス」が渡らないように防ごうという試みが「個人情報保護法」です。これについては、次回のコラムで詳述する予定です。

 迷惑メール業者になろうという方は別ですが、真っ当に商売をしようというECサイト運営者は、この法律を守らなければなりません。とはいえ、著しく業務運営が害されるような規制がかかっているわけではありません。消費者からすれば、いわば「当たり前」の規制がかかっているとも言えます。

 その主な規制ですが、以下の通りとなります。

  1. 広告・宣伝メールの”原則”禁止
  2. 誰が送信しているのかを表示する義務

 

1では、”原則”としています。例外として、「受信者が広告・宣伝メールの送信に同意して」いれば送信してもよいということになっています。

これだけみれば単純ですが、実際には「受信者が同意したことの記録を保存すること」「受信者がいつでも同意を取り消すことができること」「送信する前に同意を求める機会を用意すること」「送信する内容をある程度事前に開示していること」などが必要となります。

2は、当たり前かと思われるかもしれません。条文上求められている項目としては、「送信者の氏名または名称」「受信拒否の通知を受け取る為の送信者の電子メールアドレス等」となっています。ここまでは大抵のECサイトが守っていますが、注意していただきたいのは、「その他総務省令で定める事項」としている点です。これらについても注意する必要があります。

総務省令では、「送信責任者の氏名又は名称」「送信拒否ができる旨の表示と連絡先」「送信責任者の住所」「苦情や問い合わせ等を受け付ける電話番号、電子メール、URL等」となります。

ちなみに、Wikipediaで「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」の項目を見てみると、この総務省令の内容までは記載が無く、内容として十分ではありません。このように「法律」ではなく、「政令」や「省令」で規制の具体的な部分を定めるという手法が用いられることもあります。改正薬事法についても同様の問題があります。これらには注意が必要となります。

なお、これら規制はPC向けサイトだけでなく、モバイル向けサイトにも、もちろん適用されます。

【まとめ】

●基本的事項

 ・原則として、許可を得ていないメールは送信しない

●システム事項

 ・メールの配信[許可/不許可]を管理・記録できるようにする

 ・メールの配信[許可/不許可]の状態に応じてメール配信するように構成する

●メールの文面

 ・メールの配信を停止するための方法やリンクを挿入する

 ・送信者の情報を提示する(「送信責任者の氏名又は名称」「送信拒否ができる旨の表示と連絡先」「送信責任者の住所」「苦情や問い合わせ等を受け付ける電話番号、電子メール、URL等」)


「特定商取引に関する法律」(1976年成立した「訪問販売などに関する法律」から、2000年に改称)

特電法と並んで、もうひとつECに直接関係ある法律は、「特定商取引に関する法律」(以下、特商法)です。本法律は、ECだけでなく訪問販売や電話での勧誘販売など、通常の店舗販売とは異なる特定の商取引について規制を定める法律となります。したがって、本法律を読む際には、どの商取引について規定されているのかを注意して読む事になります。

 この法律が良く持ち出されるのは、訪問販売などにおける「クーリングオフ」を定めているからです。しかし、いきなり自宅まで押しかけてきて、動揺している状態に乗じてものを売るという訪問販売とは異なり、ECは基本的に注文者の自主的な操作による注文という形なので、現行法上「クーリングオフ」の適用はありません。

 ただ、ECでは商品の実物を購入前に確かめる事ができず、ある程度消費者の認識と実際の商品の品質・状態との間に齟齬が生じる場合があります。また、操作に不慣れな方やインターネット自体に不慣れな方が利用するという場合もあり、一定の保護の必要性があります。しかし、そのイメージと実際の商品との齟齬部分が有するリスクを店側がすべて負担するのが公平かといえば、そうでもありません。商品に対するイメージは人それぞれだからです。これらの点を考慮し、昨年、特定商取引法が改正されました。

 改正後の特定商取引法においては、「返品」を断るにはきちんとその旨を事前に明示しなければならないというようになっています。きちんと返品を受け付けない旨を明示する事で、消費者に返品できないというリスクを明示し、それによって問題を回避しようという趣旨です。では、「何でも書いておけば良いのか」ということになりますが、ただ単に「返品不可」や「ノークレーム・ノーリターン」などという表記では「不適切」であり認められない場合があります。


どのように表示を行うか

 まずは商品に瑕疵(=欠陥。通常その商品が有する品質から劣る部分を有する場合など)がある場合とそうでない場合を分けて考える事が必要です。なぜなら、商品に瑕疵がある場合には民法上その瑕疵を直すか良品に交換する義務(瑕疵担保責任)があるからです。その瑕疵担保責任を負わないという条件で販売しているという事であれば、その旨を必ず明示しなければなりません。この部分は、民法上、原則として返品が認められるものとなりますので、曖昧な表現では認められない可能性が大きいといえます。

 次に、商品に瑕疵がない場合に返品を認めない場合です。いわゆる「お客様都合の返品」というものになります。これについても、返品を認めない場合には、その旨を明示する必要があります。

 その他の注意点として、商品によって返品を認めるか否かが異なる場合や、返品時の商品状態によって認めるか否か異なる場合など、条件分岐がある場合にはそれについても逐一明示する必要があります。たとえば、食品と家電を取り扱っているお店で食品と家電とで返品条件が異なる場合については、その旨を明示する必要があります。また、家電の中でもある一定程度の大きさ以上か否かによって異なるという場合にも同様です。その場合には、具体的に商品名を記載するか、各商品ページに大きさを明示する事も必要です。各商品ページに返品が可能か否かを表示できればなお良いです。

 いずれにせよ、事前にお伝えできる事はすべてお伝えするという事です。他方で、書いていない事はほとんどすべて消費者側有利に判断されるということを忘れないようにしてください。

 法案の段階では、ECについても無条件で「クーリングオフ」を認めるというような案も出ていました。ECに携わるわれわれの行動如何によっては、今後、それが認められるような改正がなされるおそれもあります。


「薬事法」(昭和35年8月10日に成立。最新の改正は2006年。改正に伴う省令2009年6月施行)

最近特に騒がれていた法律が、薬事法となります。ただ、厳密に言うと騒がれていたのは薬事法自体ではなく、薬事法に基づく省令(厚生労働大臣が制定する命令)についてです。

 当該省令においては、市販の医薬品を3つの種類に分けて、そのうち一番人体に与える影響の少ない部類を除き、通信販売・ネット販売を一律禁止しています。これは、その医薬品の危険性を考慮し、対面売買による安全性を重視していることになります。

 しかし、通信販売・ネット販売が禁止される部類の中にコンビニエンスストアでの販売が許されている部類が多く含まれていたりします。また、ドラッグストアでも、薬剤師=店長という場合が多く、薬剤師としての本分を果たしきれるのか、個人的には疑問に思っています。

 本法律は、EC業者からすれば行き過ぎた、バランスを欠いた規制が含まれているように思います。また、法律論的にも違憲の疑いがある構成となっています。結果的に違憲になるかどうかは別として、我々が法律に対し、意識を有していなければいつの間にかこのような重大な規制が生まれるかもしれません。そのことを明確に意識させられるのがこの法律であるように思います。


民法の債権法部分の改正審議

上記のような特別法だけでなく、根本たる民法改正の動きも始まっています。来年度には改正案が提出されるのではないかと言われています。

大きな変化はあまりないようですので、思わぬ規制が生まれるということはないかもしれません。しかし、消滅時効の期間が統一されるなど重大な変更案も出ているようです。

EC運営者としても、一般市民としても注視していく必要があるように思います。