【法務NAVIまとめ】リコールと製造物責任(PL)法
2016/07/27   コンプライアンス, 製造物責任法, メーカー

はじめに

今月21日、ダイハツ工業は、同社の軽乗用車「タント」の部品に腐食の恐れがあるとして、リコールを国土交通省に届け出ました。
自社製品について、販売後に欠陥が見つかった場合、企業はどのような責任を負うのでしょうか。
今回は、製造物責任(PL)法について検討します。

 

PL法の概要

PL法とは、消費者保護を目的としており、製品の欠陥によって生命、身体、財産に損害が生じた場合、製造会社に対する損害賠償責任を定めた法律です。

「製造物」とは
PL法の対象は、大量生産・大量消費される工業製品を中心とした,人為的な操作や処理がなされ,引き渡された動産です。
不動産やソフトウェア、加工前の農産物は含まれません。

「欠陥」とは
条文上は「通常有すべき安全性を欠いている」状態を指します。
基準自体、問題になった製品の性質に依拠するため個別具体的な判断となりますが、概ね下記のような分類となります。
①設計の欠陥
 設計段階で既に安全性に問題がある場合。 
②製造の欠陥
 設計通りに製造されなかったため、安全性に問題が生じた場合。
③指示・警告上の欠陥
 製品を使用する上で生じる危険について、消費者側で事故防止するのに適切な情報を与えなかった場合。

責任を負うのは誰か?
条文によると……
「当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者」(2条3項1号)

注目すべきは、「輸入した者」が含まれている点です。
具体的には、海外から輸入した部品に欠陥が生じた場合にも、自社で製造加工した場合と同様、賠償責任を負います。
これは、一般消費者が海外の製造加工業者に責任追及するのは困難であるため、一端国内の輸入業者に賠償責任を負わせ、海外企業に対する責任追及は輸入業者が求償の形で行わせるというものです。
その他、同条文2号及び3号で、責任主体がOEM製品やプライベート・ブランドの供給者にまで拡大されていることにも同じく注意が必要です。

出典:消費者の窓・製造物責任(PL)法について
出典:大阪市消費者センター・製造物責任(PL)法って、なに?

 

裁判例

①7歳の男児がこんにゃくゼリーを気道に詰まらせ死亡したとして、遺族が和菓子製造業者に対して損害賠償を求めた事案。
損害賠償額は7482万円。和解で終了。

②美白化粧品を使用したところ肌に白斑被害が生じたとして、一般消費者が化粧品製造販売業者に対して損害賠償を求めた事案。
現在、複数の裁判所にて訴訟継続中。

③低温ブライン循環装置製造業者が、当該機械装置の備品に欠陥があるとして、部品製造業者に対して損害賠償を請求した事案。請求額は約4900万。請求棄却、原告控訴。

④家庭用シュレッダーが破裂し右耳難聴の後遺症を負ったとして、一般消費者が当該シュレッダー輸入販売業者に対し損害賠償を求めた事案。請求額は約8900万。3900万認容
出典:消費者庁・製造物責任(PL)法による訴訟情報の収集

 

対策

企業はどのような対策をすればよいでしょうか?
まず第一に、当然ですが、欠陥を生じさせないことです。
自社で製造加工する場合はもちろん、外部に委託する場合や輸入品を使用する場合には、製造工程や製品保存・運搬の情報を十分に収集し、不備を発見し次第、改善指示を出せる環境を構築することが重要でしょう。
また、消費者が間違った方法で製品を使用しないよう、製品に付属する説明書等の記載を見直すことも重要でしょう。その際、従来のような記載ではなく、大きく簡易な文字を使用したり、フォントや色を変えるといった工夫を凝らすのも良いかもしれません。
第二に、欠陥が生じてしまった場合には、被害拡大防止に努めることです。
リコールを怠れば、被害をこうむる一般消費者は爆発的に増加します。国内のいたるところで訴訟となっては費用と時間を含め膨大な労力を割くことになるでしょうし、また、企業イメージという観点からも、早期の謝罪及び対応が望ましいでしょう。
第三に、PL法の損害賠償に関する保険制度もあります。
PL法の損害賠償用の保険を用意している民間企業が多くあり、なかには賠償額の保障だけでなく、リコール費用もカバーしたサービスもあります。

出典:日本商工会議所・中小企業PL保険制度
出典:PL保険ドットコム

 

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